【北極ノート】海洋汚染…体内で“生物濃縮”温暖化は幻のクジラにも イッカク猟密着(2023年8月29日)

【北極ノート】海洋汚染…体内で“生物濃縮”温暖化は幻のクジラにも イッカク猟密着(2023年8月29日)

【北極ノート】海洋汚染…体内で“生物濃縮”温暖化は幻のクジラにも イッカク猟密着(2023年8月29日)

温暖化の影響により、北極で、いま、何が起きているのかを現地取材するテレビ朝日。

この日、地元の猟師の船に乗り、ある狩猟に同行しました。彼らが狙う獲物は、北極の珍獣と評される“イッカク”。現地の人たちにとっては、貴重なビタミン源です。しかし、物音に敏感な幻のクジラで、狩猟が難しいといわれています。

出港から2時間。
松本拓也ディレクター:「ボートのエンジンが止まりました。ここからは、目と耳を頼りにイッカクを探します」

静かに現れるのを待つこと10時間。
松本拓也ディレクター:「いたいたいた、水飛沫をあげました」

いま、国連は、地球温暖化がイッカクに深刻な影響を与えていると警鐘を鳴らしています。

北極は、温暖化で最も気温が上がっているといわれる地域です。海氷が解け出し、氷の下などに生息するイッカクは、隠れる場所を失い、天敵のホッキョクグマやシャチなどに狙われやすくなるといいます。

気温0度のなか、イッカクを追い求めて過ぎゆく時間。出港から48時間。なかなか、見つからないイッカク。
松本拓也ディレクター:「ほとんど寝てないから、さすがに眠い」

出港から60時間。
屋比久就平カメラマン:「食料がつきそう」
松本拓也ディレクター:「海氷を解かして飲み水を作ります」

出港から120時間。
松本拓也ディレクター:「めちゃくちゃいます。我々のタイムリミットまで半日くらいですが、最後の最後に大きなチャンスがめぐってきました」

イッカクの象徴、長い牙が海面から現れます。すぐさま追いかける猟師。そして、モリを突き刺しました。しかし、あと一歩のところで逃げられてしまいました。

同じころ、ほかの猟師に同行調査していた北海道大学のチームは、イッカクを捕獲していました。

現地の人たちにとって、イッカクの干し肉は保存食としても貴重な食材です。しかし、今後、食べることができなくなるかもしれません。

温暖化の影響で、北極域に住む魚の種類が変わりつつあります。北極域に生息する魚は、海を汚染する水銀などを体内に取り込んでいて、こうした魚をイッカクが食べ、さらに、イッカクを人が食べることで、人体にも影響が出る恐れがあるといいます。

現地で調査をする北海道大学の小川さんは、こう話します。
北海道大学大学院博士後期課程・小川萌日香さん:「グリーンランドの人たちの(体内の)水銀濃度が上がることもわかっていて、村の人たちは心配しています。ワークショップでも『アザラシやイッカクを食べて大丈夫なのか』と質問を受けます」

汚染物質が微量であっても、食物連鎖の上にいくほど、汚染物質の濃度が高まっていく“生物濃縮”も起きやすくなります。水銀の影響は、今後、注視する必要があります。

幻の珍獣といわれるイッカクから見えてきた温暖化が及ぼす生態系の変化。もはや、北極だけの問題ではありません。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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