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ポツンと迷子の女の子…74万人殺到「足立の花火」緊迫の舞台裏 女性花火師デビュー戦【Jの追跡】(2023年8月5日)
1時間に1万5000発が打ち上げられる「足立の花火」は4年ぶりの開催とあって、74万人の観客が殺到しました。
大会を仕切るのは、運営ほぼ未経験の足立区職員ら15人です。観客の整理や迷子など、ありとあらゆるトラブルに四苦八苦していました。
また、大規模な花火大会に初めて参加するという女性花火師に密着しました。花火玉の製作を任された難度の高い「ローリング」は無事打ち上がるのでしょうか?
ところが、打ち上げの直前にまさかのアクシデントが発生しました。中止の危機を一体、どうやって乗り越えたのでしょうか?
■ほぼ未経験者のメンバー 不安も
大会の2週間ほど前に開かれた運営会議。司令塔を担うのは、足立区の職員ら15人です。
運営リーダー 浅野喜之さん(48):「あれだったかな…ちょっと待ってくださいね」「ん…ごめんなさい。警備計画、どうなっていましたっけ?」
4年ぶりということもあり、15人のうち、なんと13人が「足立の花火」の運営は未経験です。このメンバーで、誘導や警備、トラブルまで対応します。
そんなチームのまとめ役で10年前の運営経験者・浅野さんは、ある不安を抱えていました。
浅野さん:「今、イベントが再開して、人出が多くなっているところで(コロナ禍が明けて)都内初の大規模花火大会。今まで以上にしっかりとやらなきゃいけない」
4年ぶりの開催で、想像を超える客が殺到する可能性もあります。階段やスロープなど人が集中する場所を一つ一つ現場で確認、警察・消防と連携し、安全確認を徹底していました。
浅野さん:「お客様に楽しんでもらうためには、安全がないと楽しめない。安全第一。そのうえで、花火を楽しんでもらうことを肝に銘じてやっています」
■大抜擢…女性花火師のデビュー戦
1万5000発がノンストップで打ち上げられる「足立の花火」。花火玉を製作するのは、石川県にある製造会社です。急ピッチで作業が進むなか、この大会に特別な思いを抱く花火師がいました。
花火師・林桃々子さん(22):「やっぱり悔しかったですし、不安な気持ちが本当に多くて、大丈夫なのかな」
3年前に入社した林さん。ところが、花火大会の相次ぐ中止で、入社後わずか20日で工場が休業になりました。その間コツコツと花火の技術を磨き、ようやく今年、「足立の花火」が復活したのです。
林さん:「それだけ多くの人に見てもらえるのは、なかなかない。本当にありがたい。それだけで頑張れます」
今回、林さんが担当するのは「ローリング」と呼ばれる花火です。花が開いた後、回転するように青から赤に変化する花火です。
林さん:「きれいに詰めないと、形もガタガタに。難易度は高い」
4種類の火薬が混ざらないように均等に詰めなければならず、難易度が格段に上がります。大規模な花火大会は初めてにもかかわらず、林さんが大抜擢(ばってき)されたのです。
林さん:「本当にプレッシャーはありますけど、先輩からも『私に任せていいよ』という思いに応えたいという気持ちが一番大きくて。回ってほしいですね。きれいに。祈るだけです」
花火大会が行われた22日未明、すでに場所取り争奪戦が始まっていました。
男性:「(Q.この後、どうする?)ずっといるよ」「(Q.打ち上げまで?)うん」「(Q.あと何時間?)あと何時間だろう?知らない。えへへへ」
待ちに待った4年ぶりの開催。うれしさを隠しきれません。
夜が明けた午前7時、打ち上げ会場には花火師の林さんの姿がありました。
林さん:「緊張も少しはありますけど、やっぱり楽しみ」
■迷子になった女の子がポツンと…
午後3時、打ち上げ4時間前にもかかわらず、慌ただしさが伝わってきました。
運営リーダーの浅野さんは5台の無線を使いこなし、客の誘導や迷子など様々なトラブルの指示出しを担当します。
トラブル対応のテントを会場の7カ所に設置し、万全の態勢で本番を待ちます。
そして午後4時すぎ、テント内の緊張が一気に高まりました。
過去最多74万人の観客が打ち上げ会場に殺到し、想定を超える事態で大混乱になりました。
午後7時20分、いよいよ本番。1時間で1万5000発の花火が東京の夜空を彩ります。
一方、本部テントでは、各所からトラブル報告の数々が入ってきました。浅野さんは的確な指示を出し、対応します。
こうしたなか、会場に7つあるトラブル対応テントでは、ポツンと1人の女の子が座っていました。父親と妹の3人で花火を見に来たものの、人混みに紛れ、はぐれてしまったという小学5年生です。
迷子になった小学5年:「自転車で通ってたんですけど、私は前にいて、後ろにお父さん。探しに行って、結構待ってても来なかったから、迷子テントに来た」「(Q.さみしい?)いや、そんな」
職員と花火を観ながら、静かに待つこと30分。
父親:「すみません」「ありがとうございました」
打ち上げ中、ずっと探し回っていたという父親は、ほとんど花火は観られなかったそうです。
父親:「ねーねは見られたの?ここから見られた?」
女の子:「うん」
父親:「いやぁ、もう疲れた」
■打ち上げ中止? まさかの緊急事態
そして、花火はいよいよクライマックスへ…。
林さんの出番です。「ローリング」の準備も万端で、あとは打ち上げを待つばかりですが、この時、本部テントでまさかの緊急事態が発生しました。
花火の打ち上げをコントロールする点火装置の充電式バッテリーが落ちかけていることが判明しました。いつ打ち上げがストップしてもおかしくない状況です。
急きょ配線を変更し、コンセントから電源を供給することにしました。しかし、まだ電源がつながりません。もう時間がありません。
最悪の事態がよぎったその時…。
機転を利かせた運営側のリーダー・浅野さんが急きょコンセントを空け、間一髪で電源の確保に成功しました。なんとか危機を脱することができました。
しかし、この間に、林さんが初めて手掛けた色が回転するように変化する「ローリング」が打ち上がった瞬間を本人は見届けることができませんでした。
約1時間にわたって1万5000発を打ち終わり、4年ぶりの足立の花火は無事終了しました。
林さん:「見られなかったですね、自分の。まあ色々ありましたけど、自分の中で一歩また成長できた」
浅野さん:「花火を見ながら、お客様の安全のことしか考えられてなかった。まず一つほっとしている」
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
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