ビッグモーター不正常態化か 厳しいノルマ「1台14万円」…元工場長が“手口”告白【もっと知りたい!】(2023年7月19日)

ビッグモーター不正常態化か 厳しいノルマ「1台14万円」…元工場長が“手口”告白【もっと知りたい!】(2023年7月19日)

ビッグモーター不正常態化か 厳しいノルマ「1台14万円」…元工場長が“手口”告白【もっと知りたい!】(2023年7月19日)

 中古車販売大手のビッグモーターが保険金を水増し請求していた問題で、国土交通省は「事実であれば言語道断」と関係者を聴取する方針を明らかにしました。なぜ、不正が横行したのか。元幹部を取材しました。

■「強引な利益追求方針にかじ」元幹部の証言

 2017年、経営陣の実質的な代替わりをきっかけに、ビッグモーターを退社したという元幹部で、現在はバディカ社長・中野優作さんを取材しました。

 中野さん:「全く別の会社になるなと。会社終わるなと思った。同じ意見の人はかなり多い。僕が一番最初だったと思います。パッと俺抜けるわって抜けて…」

 この年、ビッグモーターを成長させた、古参のスタッフが大勢辞めていきました。中野さんは「会社が強引な利益追求方針に、大きくかじを切り始めたのが理由だった」といいます。

 中野さん:「数字に強い人たち。今の取締役は確かに数字に強い。だけど、やり方は選ばないだろうなって…」

 その翌年、不正が起き始めました。

 関東エリア元工場長:「何万人ってお客様を裏切る行為をしてしまっている。本当に申し訳ない」

 不正の手口を、元工場長が明かしました。

 元工場長:「(Q..当時は、それでもバレないと?)バレない。どう、だましてやろうという方が大きかった」

 中古車販売大手のビッグモーターは、販売・買取にとどまらず、車検、整備、塗装、修理まで自社工場ですべてを引き受けることを売りにし、全国に店舗を拡大していきました。

 その裏で行われていたという、保険金の不正請求が判明しました。車を故意に傷付けるなどして修理代を水増しし、自動車保険の保険金を不正に請求していたことが明らかになったのです。

 18日、斉藤鉄夫国交大臣は「もし、そういうことがあったとしたら、言語道断の話だと思います。我々も直接会社からヒアリングを行って、適切に対応して参ります」と述べました。

■目を疑うような手口…不正が常態化?

 また、ビッグモーターはこれまで伏せてきた外部の弁護士らによる調査委員会の報告書を初めて公表しました。報告書の中には、目を疑うような手口が指摘されていました。

 調査報告書:「ヘッドライトのカバーを割る。ドライバーで車体をひっかいて傷を付ける。ローソク、サンドペーパーなどを使って、車体に傷を付ける…」

 「修理費用の水増しには、様々な道具が使われていた」と元工場長は証言します。

 元工場長:「ひょう害の時は、ゴルフボールでひょう害に見せかけて、ひょう害の損傷がないパネルまで、ゴルフボールでひょう害の跡を付けるということはあった」

 問題がない車でも、元工場長は次のように話しています。

 元工場長:「損傷していない車両とかは、ヘッドライトの付け根をハンマーでたたいて折る。ヘッドライト交換にする。リサイクル(部品)を使うので、安く仕入れるものがあれば、そこで稼げるので」

 報告書では「車体を傷つける行為は、器物破損罪に当たり得る」と指摘しています。

 こうした不正は、常態化していた可能性もあります。調査報告書によると、サンプル調査で検証した2717件のうち、4割以上で「不正が疑われる行為」がありました。

■元社員が明かす「厳しいノルマの実態」

 なぜ、ここまで不正がまかり通っていたのでしょうか。

 報告書によると、「会社が売り上げ向上を最優先していたから」と382人中、261人が回答しました。また「上司からの不正な指示に逆らえない雰囲気があったから」と382人中、167人が回答しました。上司からのノルマ達成に向けた強い圧力が不正の原因になったことがうかがわれます。

 整備士だった元社員が、厳しいノルマの実態を明かしました。

 元整備担当者:「この表は、九州中の工場の順位表。青のところは(売り上げの)高いところ。『見本にしてくださいよ』とまずいところが赤」

 各店舗の工場長と地域を管轄するエリア長とのLINEのやり取りには、売り上げの成績が書かれた表が添付されています。

 エリア長:「鹿児島。どこまで下げ散らかしますか?」
 工場長:「申し訳御座いません」

 元整備担当者:「これは見せしめですね。(売り上げを)ここまで下げれば、こんなことまで書かれるよと。他の工場長に対する見せしめ」「かなり無理をして、やらなくてもいい作業をやったり、走らざるを得なくする要素がここにある」

 不正な保険金請求が行われた原因として、報告書は「不合理な目標値の設定」を挙げています。そもそも、修理費用は車両の損傷の程度によって決まるものにもかかわらず、「1台14万円」というノルマが現場で設定されていました。

 元工場長:「((Q..他の工場長とかに教えることもあった?)それはありました。『どうやったら工賃の単価上がるの?』っていうところで、ヘッドライトを損傷させたり、傷を増やしたりっていうことは教えました。『じゃあ、それやってみます』って…」「(Q..そうやってどんどん広がった)はい」

■社長報酬返上も…記者会見は未定

 修理をめぐる問題は、これだけではありません。

 去年12月、東北地方に住むAさんは、バッテリーの調子が悪かったため、ビッグモーターで新品に交換してもらいましたが、すぐにトラブルが発生しました。別の店で見てもらったところ、新品ではなく、中古のバッテリーだったのです。

 Aさん:「整備士が認めたんですよ。『やばいこと知られた』みたいな感じ。なんで、こんなことするんだろう」

 報告書にも、業務過多によって新品の部品を使ったとしながら、実際はリサイクル品に交換しただけのケースも指摘されています。

 半ば組織的ともいえる不正行為が明らかになったビッグモーターは、兼重宏行社長が報酬の全額を1年間返上すると発表しました。しかし、今のところ、記者会見が行われる予定はありません。

 中野さん:「黙っていれば、ほとぼりが冷めると思っているんじゃないか。正直、これまでここまでなるって、たぶん想像してなかったと思う。危機感がシンプルになかったんじゃないかと思う」

■「結果的にはもみ消した」報告書が指摘

 報告書によると、これまで従業員が経営陣に対し、不正を告発したことがありました。しかし、「経営陣は真偽に関して、特段の調査も行わないまま、結果的には、もみ消したと言わざるを得ない」と報告書は指摘しています。

 そして、「顧客の信頼を裏切って、自社の収益獲得を優先したとの非難を免れ得ない。かような行為が繰り返されればいずれ保険料の上昇を招きかねず、保険ユーザー全体の不利益にもつながるという意味で一層罪深い」と結論付けました。

 ビッグモーターの問題は、車に乗る人ならひとごととは言えません。損害保険に詳しい専門家は、次のように指摘しました。

 保険に詳しい 東洋大学経営学部・伊藤亮太氏:「ビッグモーターで修理した方の保険料が、もしかしたら上がっている。ひいては自動車保険の加入者全体の保険料にも影響してくる」

(「グッド!モーニング」2023年7月19日放送分より)
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

ANNnewsCHカテゴリの最新記事