都市を襲う豪雨環七地下50mに命守る巨大施設大災害起きた年と共通点Jの追跡(2023年7月2日)

都市を襲う豪雨環七地下50mに命守る巨大施設大災害起きた年と共通点Jの追跡(2023年7月2日)

都市を襲う豪雨…“環七”地下50mに命守る「巨大施設」大災害起きた年と“共通点”【Jの追跡】(2023年7月2日)

今年も雨のシーズンがスタート。気候変動の予測を行う専門家を取材すると、今夏は1時間に100ミリを超える豪雨が増えるのではとの予測も。

では、首都圏の「都市型水害対策」はどうなっているのか。環七の地下50メートルで建設が進む巨大トンネルに潜入。完成すると“国内最大級”の施設となるその驚くべき役割とは…?首都圏の水害対策の最前線を緊急取材しました。

■大災害が起きた年と“ある共通点”

北海道を除くすべての地域で梅雨入りした日本列島。今月初めには、台風周辺の湿った空気の影響で梅雨前線の活動が活発となり、各地で記録的な大雨に…。

気になるのは、これから先の雨の降り方。実は今年、特に警戒が必要だというのです。

海洋研究開発機構で気候力学を専門とし、気候変動の予測を行う土井威志主任研究員。今年は、かつて“大きな災害が起きた”年と、ある共通点があるといいます。

土井さん:「(同じような条件は)2015年と1997年の2事例しかなくて、特に2015年で記憶にあるのは、9月に鬼怒川の氾濫を引き起こすような大雨が…」

2015年9月。台風や前線の影響で、「線状降水帯」が次々と発生。関東や東北で、記録的な大雨となりました。

特に、被害が大きかった茨城県の常総市では、およそ200メートルにわたって堤防が決壊。建物が流されるなど、甚大な被害となりました。

実はこの年、“海に異変”が起きていたのです。

そして今年も、“同じ異変”が起きる可能性が高まっていました。

土井さん:「エルニーニョ現象だけでなく、インド洋で“インド洋版エルニーニョ”と言いますか。2015年には実際に(2つの)コンビネーションが起きて…」

太平洋の東側で海面水温が平年より高くなる「エルニーニョ現象」。そして、遠く離れたインド洋では、平年よりも西側で海面水温が高くなり東側で低くなる現象が。この現象が発生すると、日本に猛暑をもたらすとされています。

2015年は、2つの場所で海面水温の異常が同時に発生していたのです。

この年、日本だけでなく中国南部やミャンマーなどでも大雨が多発。

そして土井さんの予測によると、今年、太平洋とインド洋で、8年前と同じように、同時発生する可能性が高まっているといいます。

土井さん:「(同時発生による)日本への影響は、まだはっきり分からないのが現状です。ただ、2015年に大雨が増えたことを考えると、(今年は)大雨への警戒は必要だと考えている」

■東京…“都市ならでは”の大きな問題

雨の降り方が変わってきた現在、気象庁によると、1時間あたり100ミリ以上の雨の回数はおよそ40年前と比べ倍増。

大雨による被害は、東京都心でも確認できます。

渋谷駅が浸水し…たまった雨水によって道路は通行止め…歩行者用の通路も冠水するなど、度々、局地的大雨が襲っています。

実は東京には“都市ならでは”の大きな問題があります。

東京都建設局 河川部 中小河川計画担当課長 土方隆さん:「高度成長時代、昭和40年ごろに東京は宅地化が進みました。それによって、田畑だった所が宅地や道路になった。降った雨が地下にしみ込みにくくなり、川へ一気に集まってくる。これらによって発生する水害を『都市型水害』と呼んでいる」

過去に都心では、雨による死者も…。

1999年、新宿区を襲った集中豪雨で住宅地が冠水。水没した地下室に閉じ込められた男性1人が死亡しました。

■水害から命を守る“地下巨大施設”

東京都は、こうした「都市型水害」を防ぐため、ある“巨大施設”の建設を進めていました。

場所は、東京の交通の大動脈、環状七号線。その真下に造られているといいます。

今回特別に、建設作業の現場を見せてもらうことに。エレベーターと階段で、地下およそ50メートルまで下りると、そこには、大きなトンネルがありました。

環状七号線の真下で建設が進められていたのは、巨大なトンネル。でも、これは一体…?

東京都第三建設事務所 工事第二課長 向山公人さん:「この施設は『環状七号線地下広域調節池』といいます」

大雨が降った際に増水した川の水を一時的にためて氾濫を防ぐ、地下調節池という施設です。

この一帯に流れる5つの川。その氾濫を防ぐべく、すでに2つの調節池が運用中です。

今回、新たに建設を進めている調節池は、2つの調整池の間をつなげることで、一連の巨大なトンネルになります。

完成すれば総延長13キロ、25メートルプール4800杯分もの水をためることができるといいます。

土方さん:「昭和50年代は毎年のように、神田川があふれるなどの水害が発生した」

調節地が通るそれぞれの川では、幾度となく水害が発生してきた過去があります。

また近年では、想定を上回るような雨が頻発。「都市型水害」の危険がさらに高まるなか、急ピッチで作業が進められているのです。

向山さん:「シールドマシンの円盤が回って土を掘っています。シールドマシン自体は遠隔操作で、中央監視室で円盤が掘っている状況をモニタリングしながら土を掘っている。ちょっと今、地盤が固い。地質条件に合わせて、速度を変えながらやっている」

13メートルを超える大きなシールドマシンを使い、一日に数メートルのスピードで掘り進めているといいます。

と、その時…突然、トンネル内に音楽が鳴り響き、ワイヤーでつるされた大きな部材が…。

向山さん:「今やっている作業は、トンネルの壁になる部分。我々はセグメントと言っているが、壁になる部分のセグメントを一つずつ組み立てている所です」

ゆっくりとゆっくりと、慎重に精密な作業が進められています。

土方さん:「(1時間雨量)75ミリ対策に寄与するとともに、1時間100ミリ程度の雨にも効果を発揮する。この施設ができると、国内最大級の水をためる施設が出来上がる」

■今月はじめの大雨でも…被害拡大防ぐ

3年後までの稼働を目指していますが、実際にはどの程度、効果があるのでしょうか?

すでに運用中の調節池では、実際に水がためられ、被害軽減につながったケースがあるといいます。

4年前の令和元年東日本台風。4日間の総雨量が17地点で500ミリを超えるなど、記録的な大雨となりました。

当時、杉並区などを流域とする一級河川「善福寺川」は氾濫の危険があるとして、調節池内へと取水を開始。

これは、その時の内部の様子。容量の9割を越える水をため、流域の浸水被害を防ぎました。

そして実は、今月初めの大雨でも…。

深夜、都内では1時間に45ミリの激しい雨を観測。これは、善福寺川に設置されたライブカメラの映像です。勢いよく川の水が流れ、みるみるうちに増水します。

東京都建設局 河川部 防災課長 金澤大介さん:「モニタリングをしていて、河川の水位が基準の水位に到達したので取水を開始した。午前1時から4時ぐらいまでの間に、約24万トン、施設全体の約45%まで取水しました」

断続的に雨が降り続いているにもかかわらず、川の水位は大きく下がりました。一部は川を溢れてしまったものの、被害拡大を防ぐことができたといいます。

土方さん:「『激甚化する風水害から都民を守る』。こういった東京の街づくりを目指し、大雨の際に洪水をためる調節池の整備を一層加速化させていく」
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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