認知症疑いの父…借金して3億円寄付「異常で不当」遺族が大学病院提訴…刑事告発も(2023年4月28日)
「異常で不当」だと異例の訴えです。認知症の疑いのあった男性が病院に3億円もの寄付をしたのは無効だとして、遺族が大学病院と主治医に対し、損害賠償訴訟を起こしました。
■“認知症”の疑い…適切な検査行われず?
原告代理人:「認知症が疑われる患者から非常識な金額の寄付」
大学病院に寄付された3億円。寄付したのは、認知症が疑われる高齢患者です。
「寄付は無効」“認知症”患者の娘:「主治医が患者の病状を利用。悪辣(あくらつ)な所業」
果たして、巨額の寄付は正当か、無効か。
北陸・金沢市で巻き起こった3億円寄付騒動。病院と遺族、どちらの言い分が正しいのでしょうか。
原告 患者の長女・毛利貴和さん:「認知機能低下が顕著であった89歳の高齢者に対して、入通院していた病院の主治医、しかも病院長が家族に内密で3億円もの寄付をさせた。極めて異常で不当なものです」
“認知症”の患者に3億円の寄付をさせたのは無効だと訴えるのは、患者の娘らです。
金沢医科大学に3億円の寄付をしたのは、金沢市にある東証プライム上場の機械メーカー「澁谷工業」の前の社長だった、澁谷弘利さん(死亡当時90)です。
訴状によりますと、おととし1月、サウナで脱水状態となった澁谷さんは、金沢医科大学病院に入院しました。
以前から認知機能の低下が見受けられたため、入院中にMRI検査を行ったところ、大脳の萎縮が認められたといいます。
毛利さん:「認知症が相当進行していたのか、大声で叫んだり、看護師の処置を激しく拒むなど、了解不能な言動をあらわにするようになり、私たちは不安でたまらず、主治医であった伊藤病院長に説明してほしいと何度も申し入れましたが、いつも誠実な対応をしていただけず、はぐらかされていました」
認知症とみられる症状が表れていたにもかかわらず、適切な検査は行われなかったといいます。
■“借金”までして…3億円の寄付
その後、澁谷さんの症状は悪化。
3億円の寄付があったのは入院の4カ月後、おととし5月のことでした。その5カ月後、澁谷さんは自宅で死亡しました。
遺族が病院への寄付の事実を知ったのは、この直後のことでした。
毛利さん:「家族で父の遺産を確認しましたが、父にはこのような多額の寄付金をまかなう預貯金はなく、寄付は借り入れによって行われていたことが分かりました。当然、この借金は私たち家族が返さなければなりません」
3億円の寄付は、借金までして行われたことが判明しました。寄付直後の預金残高は、およそ2億5900万円であったのに対し、借入金は4億5000万円にも上っていました。
原告訴状から:「寄付により、債務が残るような状況であえて3億円を寄付することは極めて異常というほかなく、正常な判断能力のある者の判断とは到底考えられない」
■原告 病院長が「認知症を隠していた」
3億円の寄付は、正当か無効か。最大の争点は、寄付が行われた当時、澁谷さんの認知機能がどの程度だったかにあります。
澁谷さんの死後、残された記録をもとに、専門医がまとめた医学意見書では…。
死後 専門医がまとめた医学意見書(原告状から):「自分の財産を管理・処分できない程度に判断能力が欠けていたか、少なくとも常に援助が必要なレベル」ということです。
原告は病院長が「認知症を隠していた」とも指摘します。
寄付を受けた3カ月後には、こう発言したと主張します。
伊藤透病院長(当時)(現告訴状から):「笑顔で100歳まで社長を続けて頂きたい。認知はありません」
■2億4750万円の損害賠償 “刑事告訴”も検討
原告の弁護士によりますと、必要とされる認知機能検査が行われず、入院直後の1月に受けたMRI検査の結果についても、病院側は開示していないといいます。
原告の代理人・谷口央弁護士:「会社の役員も含めて、(澁谷氏の)認知機能が衰えている、検査してほしいという求めがあったが、病院では判断能力の低下に関する具体的な検査をしていない」
認知症を認めれば、結果的に寄付が無効になるからだと原告は主張します。
原告は、澁谷さんの判断能力が著しく低い状態で寄付が行われたとして、大学側に2億4750万円の損害賠償を求めています。準詐欺容疑での刑事告訴も検討しているということです。
毛利さん:「医科大の真意を聞きたいと交渉を続けていましたが、医科大には不誠実と言うほかない対応をされ、訴訟提起に至りました。裁判所には私たち家族の想いをご理解いただき、公正な判断をお願いしたいと存じます」
金沢医科大学は、「現時点で訴状が届いておらず、答えられない」としています。
(「グッド!モーニング」2023年4月28日放送分より)
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
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