“通報者”どう守る? 内部通報めぐり通報者の不利益めぐる裁判 訴え一部認め京都市に賠償命令 地裁
食品偽装やリコール隠しなど、これまで会社や団体の不正を明るみにしてきましたが内部通報です。その内部通報をめぐり、27日、京都で通報者が不利益を被ったとした裁判が開かれました。判決は今後、どのような影響を与えるのでしょうか。
原告の京都市の男性職員「納得できない部分があるなというのが、正直な感想です」
今から9年前の2014年。
京都市内にある児童養護施設で、入所者の少女にわいせつな行為をしたとして、元施設長の男が1年後に逮捕されました。
逮捕前、少女の母親から児童相談所に相談が寄せられていましたが、警察への通報などはせず。
危機感を抱いたのは、児童相談所に勤務していた男性職員です。
この男性がとった行動、それはーー。
京都市の対応に関する内部通報でした。
男性職員は、窓口だった弁護士にメールで通報。しかし、弁護士は「市の対応に問題はなかった」と、回答しました。
男性職員は、2度目の通報をすることを決めましたが、その際、証拠として、少女の個人情報などが載った内部資料を提出しました。
当時、男性職員はーー。
男性職員「不正を知ってしまったから、それを隠ぺいしようとしていることを見つけてしまいましたから、公益通報という制度を利用したんです」
公益通報に関する法律では、内部通報した人への不利益な取扱いが禁止されています。
しかし、市は男性を特定し、資料を外部へ無断で持ち出したことなどから、停職3日の懲戒処分にしました。
男性は、個人情報の持ち出しは、あくまで内部通報のためだとして、処分の取り消しを求めて、京都市を提訴。主張は認められ、懲戒処分は取り消されました。
問題は収束するかと思った矢先……。
京都市の担当者「裁判では、個人情報の持ち出し行為などについては、懲戒処分ができる理由と認められたため、改めて処分しました」
市は判決が出たあと、男性職員を、事実上の注意にあたる厳重訓戒処分にしたのです。
男性職員は、これまでの処分は不当であったことに加え、精神的苦痛を受けたとして、市におよそ620万円の損害賠償を求めていました。
そして迎えたきょうの判決。
京都地裁は、男性職員に対する停職の懲戒処分などは、違法と認めた上で、あわせて約223万円の損害賠償を認めました。
しかし、男性職員が受けた、厳重訓戒処分などに対する違法性は認められず、主張がすべて認められたわけではありませんでした。
原告の男子職員「公益通報の運用、問題性について、裁判所は判断してくれなかったので、そこは非常に歯がゆいと思います。」
公益通報制度に詳しい専門家はーー。
淑徳大学の日野勝吾教授「このような事例が横行してしまうと、今後、通報しようとするものが表れにくくなる。今回の京都市の事件を契機として公益通報者保護法のあり方も検討する必要があると思う」
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