【解説】本格運用開始から15年 過去には誤報やトラブルも 進化する「緊急地震速報」とは?『週刊地震ニュース』

【解説】本格運用開始から15年 過去には誤報やトラブルも 進化する「緊急地震速報」とは?『週刊地震ニュース』

【解説】本格運用開始から15年 過去には誤報やトラブルも 進化する「緊急地震速報」とは?『週刊地震ニュース』

今月21日、気象庁の検討会は、一般にも使われるようになって15年が経過した「緊急地震速報」についての報告書をまとめました。緊急地震速報は、地震予知とは異なり、実際に起きた地震を検知してから、わずか数秒で地震の規模などを推定し、地震被害を軽減するために伝える画期的な仕組みです。社会部災害担当・中濱弘道デスクが解説します。【週刊地震ニュース】

■震度1以上の地震が26回発生 福島や小笠原で震度4も
4月17日から4月23日までの期間、国内で震度1以上の地震が26回発生しました。このうち、震度4の地震は2回ありました。

▼17日午前0時45分頃、熊本県宇城市、宇土市、熊本市で震度3の地震がありました。この地震の震源は熊本地方で地震の規模を示すマグニチュードは3.6、震源の深さは10キロでした。

▼17日午前2時25分頃、福島県大熊町と楢葉町で震度4の揺れを観測しました。震源は福島県沖、マグニチュードは4.8、震源の深さは46キロでした。

▼17日午前7時16分頃、岐阜県高山市で震度3の地震がありました。この地震の震源は岐阜県飛騨地方でマグニチュードは3.3、震源の深さは6キロでした。

▼20日午後0時33分頃、石川県珠洲市で震度3の地震がありました。震源は能登地方でマグニチュードは3.2、震源の深さは7キロでした。

▼21日午後4時20分頃、東京都小笠原村で震度4のやや強い揺れを観測しました。震源は父島近海、マグニチュードは不明で、震源の深さは84キロでした。

■異なる「地震波」の速度の違いを利用して情報発信――テレビや携帯などに伝わる仕組みとは?
緊急地震速報の仕組みとは、どういうものでしょうか。

地震が発生すると、地中を地震波が伝わります。地震波には2つの種類の波があります。1つ目は「P波」と呼ばれる、スピードの速い波。1秒間に7キロ進む速さです。2つ目は「S波」と呼ばれる、大きな揺れを起こす波です。スピードは1秒間に4キロと、P波より遅いのが特徴です。緊急地震速報は、この2つの地震波の速度の違いを利用しており、地震発生後、P波が地震計に到達すると瞬時に震源の場所や地震の大きさを計算し、S波の揺れの大きさや到達時間などを割り出して私たちに伝えるものです。

発表基準は、発生した地震が「震度5弱以上の揺れが予想された場合」に、「震度4以上を予想した地域」に出され、テレビや携帯電話などを通じて皆さんに伝えられます。今年2月からはこの基準に加えて、高層ビルをゆっくりと大きく揺らして被害を出す「長周期地震」も、緊急地震速報の発表対象に加わりました。

■緊急地震速報 精度は「約8割」
2007年10月から今年1月までに、最大震度5弱以上などを予想した場合に出される緊急地震速報は、全国で258回発表がありました。東日本大震災が起きた2011年は、1年間に60回も発表されました。気象庁の統計によると、15年あまりの間で、「予想震度階級からプラスマイナス1までの範囲内に収まった緊急地震速報の発表」は、毎年ばらつきはあるものの、平均すると約8割の精度という結果になっているということです。

■関東から九州にかけて緊急地震速報発表も――誤報のワケは?
2013年8月8日の夕方、気象庁は「奈良県を震源とする地震が発生した」として、近畿地方を中心に関東甲信や北陸、東海、中国、四国、九州地方までの広範囲に緊急地震速報を出しました。しかし、実際に震度1以上の揺れを観測した場所はありませんでした。鉄道も一時ストップするなど混乱し、気象庁は会見で謝罪しました。

このトラブルの原因は、何だったのでしょうか。

和歌山県北部でマグニチュード2.3という非常に小さな地震が起きました。これだけであれば、本来は緊急地震速報が出るような地震ではありません。しかし、同じタイミングで、約200キロ離れた三重県沖の海底に設置された地震計で、何らかの原因でノイズが入りました。この海底地震計は緊急地震速報の発表にも使われていましたが、ノイズを地震と誤って検知し、和歌山北部の小さな地震と同じタイミングだったことから、気象庁のコンピューターは“大きな地震が起きた”と判断して、広範囲に緊急地震速報を出してしまったのです。

気象庁はその後、同時に別々の場所で発生した地震を1つの地震と解析しないようにシステムを改良したほか、東日本大震災のような巨大地震でも適切に緊急地震速報を出せるように技術改善を進めています。

■強い揺れまで時間はわずか――身を守るための行動は
地震の専門家・環境防災総合政策研究機構の草野富二雄さんは、「緊急地震速報発表から、強い揺れが来るまでの時間は、数秒から数十秒程度と短い時間のため、実際にできることは限られるものの、次のようなことを心がけてほしい」と話しています。

▼家の中では家具から離れて、とっさにテーブルの下に隠れるなどして身を守る
▼屋外では自販機やブロック塀等からすみやかに離れる
▼車を運転している場合は、ゆっくり減速することによって危険を減らすことができる

ただ、内陸の直下型地震では緊急地震速報よりも先に強い揺れが来ることもあるので、注意が必要です。
(2023年4月24日放送)

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