『監視試験片』足りないかも…“心臓部”経年劣化の検査に課題も 原発『60年超』へ(2023年4月21日)
原発回帰を鮮明にした岸田政権。60年を超える運転を可能にする改正法案の審議が21日も行われています。
大きな議論になっているのが“老朽原発”の延命策です。新たなルールは、現在の『原則40年・最長でも60年』から停止期間は除外して、その分だけ長く運転できるようにするというものです。しかし、まだ残されたままの問題があります。
原子力規制委員会・伴信彦委員:「『制度論』ばかりが先行してしまって、特に“60年超え”をどう(審査)するのが後回しになってしまって」
原子力規制委員会・石渡明委員:「経年劣化の管理は、事業者がやるものでしょ。規制委員会がやるものじゃないですよね」
“寿命が延びた”原発を、原子力規制委員会がどう審査していくのか。その具体的な内容が、まだ決まっていません。原子力規制庁などによりますと、長期運転の課題は大きく2つ。『経年劣化』と『設計の古さ』です。
経年劣化をめぐっては、過去に、劣化した配管から高温の蒸気が噴出。作業員5人が死亡する事故が起きています。こうした経年劣化で、最も懸念されるのが“原発の心臓部”圧力容器です。
原発を運転すると、圧力容器の中では、核分裂が起こり、壁の強度が、原子レベルで影響を受けます。
圧力容器の劣化試験は、各電力会社が行いますが、電力中央研究所では、それに関連した研究をしています。
材料の劣化は、長さ5センチの“監視試験片”を使って調べています。圧力容器と同じ材料でできた金属片を、定められた時期に取り出して測定。ハンマーを金属片に振り下ろし、劣化具合を測ることで、現在だけでなく、将来の圧力容器の劣化も予測します。安全性を見るための重要な検査ですが、今後の継続に課題があるといいます。
電力中央研究所・新井拓研究参事:「(60年への)運転期間延長申請で、2回の追加試験を行うと、(監視試験片の)数が足りなくなる可能性も考える必要がある」
金属片は、どの原発でも数回分しかないため、運転期間が延びると不足する可能性があります。対策として、一度、使った金属片の再利用などが、現在、検討されているという状況です。
そしてもう一つの課題が、数十年前に作られた原発の設計の古さ。規制委員会の更田前委員長が、設計の古さの具体例として挙げるのが、福島第一原発の事故です。中でも、“非常用復水器”は、水蒸気を水に戻して原子炉を冷却する装置。しかし、当時、ほとんど使われていない古いタイプで、本来、必要な訓練の設備もありませんでした。
原子力規制委員会・更田豊志前委員長:「東京電力は、1号機のIC(非常用復水器)がついたシミュレーターは廃止していて、1号機の運転員も2号機、3号機のシミュレーターで訓練していた」
緊急時の訓練が十分でなかったことが、メルトダウンを早めた可能性もあるとみられています。
原子力規制委員会・更田豊志前委員長:「普段使いしなくて、事故のときにしか使わない装置の、作ったときの“意図”が、運転員に正確に伝わっているか。これも含めて“設計の古さ”」
規制委員会は、こうした古い設計や問題に対して改良を求める『バックフィット』という制度を持っています。しかし、更田氏が強調するのは、問題そのものを“どうやって見つけるか”が重要だということです。
原子力規制委員会・更田豊志前委員長:「40年、50年、60年と長く使う炉に対して、『改善を強制すべき問題だ』と気づく。そこは仕組みがない。それをどうしようかというのが、まさに今の議論」
しかし、その議論を始める前に、規制委員会は延長の枠組みだけを承認しました。
「スケジュールありき」との批判も出るなか、延長に賛成した委員からも、疑問の声が上がっています。
原子力規制委員会・杉山智之委員:「これ言っちゃっていいのかなというところはあるが、我々これ(60年超運転)を決めるにあたって、外から定められた締め切りを守らなければいけない。急かされて議論をしてきた。そもそも、それは何なんだと」
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
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