リニア開業へ“9キロの壁” 静岡県“慎重姿勢”背景に…水利権「非常にデリケート」(2023年4月21日)
最高時速500キロ。超高速鉄道として注目されている、リニア中央新幹線。品川-名古屋間は2027年、4年後の開業を目指していますが、いまだ着工できていない区間があります。
その部分は、品川から大阪まで全長およそ438キロのルートのうち、静岡県を通るわずか9キロほどの区間です。この工事が進まない問題を巡って、20日に大きな動きがありました。
果たして、開業は間に合うのでしょうか?
■「ああ言えばこう言う状況」打開へ…異例要請
静岡・島田市 染谷絹代市長:「お互いに、ああ言えばこう言うという状況が続いている。これを打開するにはやっぱり、国にしっかりと関与していただくことが大事ではないか」
20日、国土交通省を訪れた静岡県島田市の染谷市長。
「ああ言えばこう言う状況」になっているのが、静岡県とJR東海です。リニア中央新幹線の工事を巡り、激しい応酬が繰り広げられているのです。
JR東海 金子慎社長(当時):「この状態が続けば、開業の時期に影響を及ぼしかねない。国土交通省を中心に、計画が円滑に進むように、何らかの措置や指導をしてもらえるとありがたい」
静岡県 川勝平太知事:「足を引っ張っているかのごとく、言われるようなトップの発言があったが。とてもじゃないけど、ゴーサインを出せる状況ではない」
最高時速500キロ。品川と大阪をおよそ1時間で結ぶリニア中央新幹線。4年後の2027年には、品川-名古屋間が先行して開業する予定でしたが…。
金子社長(当時):「名古屋までの開業時期も、見通しを立てることができない状態は残念」
山梨県側、長野県側双方から掘り進められているトンネルのうち、静岡県内の工事区間およそ9キロが着工できていないため、開業の見通しは立っていません。
■大井川への影響なくそう…解決策「田代ダム案」
背景にあるのが、「大井川の水問題」です。
現在、山梨県側で進んでいるトンネル工事が今後、静岡県との県境を越えると、一定の間、静岡県の水が山梨県側に流れ出ると言われています。水資源の枯渇を懸念し、静岡県は着工を認めていません。
そこでJR東海が解決策として提案したのが、「田代ダム案」です。
先月27日、静岡県と大井川流域の市長や町長らが集まった会議で、JR東海がこの案を説明しました。
大井川の最も上流部にある静岡県の田代ダムは、毎秒4.99トンの水を発電のために山梨県側へ送っています。
「田代ダム案」は、リニアのトンネル工事で山梨県側に流れ出ると見込まれている300万トンから500万トンの水について、ダムで取る水の量を同じだけ減らすことで、大井川への影響をなくそうというものです。
静岡・藤枝市 北村正平市長:「大事なことは、必要な時に必要な水があること。県外に流出する湧水を途切れることなく、大井川に戻していくという考えを確認したい」
JR東海 中央新幹線推進本部 澤田尚夫副本部長:「一日ごとに戻すのは運用上、現実的ではないと思う。決めていくにあたっては、(関係者の)意見や事情を聞きながら進めていきたい」
■“慎重”背景に…水利権「非常にデリケート」
様々な意見が飛び交うなか、出席者の多くは、JR東海の案に理解を示しました。しかし、県は…。
静岡県 森貴志副知事:「会員すべてがそろっておらず、会員すべての意思が示されていない」
県が慎重な姿勢を取っている背景の一つが、大井川の水を使う権利「水利権」です。
県が「水利権」にこだわるのには、過去の経験があるためです。大井川では、明治以降に水力発電用のダムの開発が盛んになり、次第に「河原砂漠」と呼ばれるほど水が減ってしまいました。
1980年代には、住民などによるデモ活動、いわゆる「水返せ運動」が始まります。こうした活動の末、住民側は毎秒3トンの水を取り戻しました。
川勝知事(先月28日):「この水利権というのは非常にデリケートというか、重要な問題。だから、この件について、軽々に水利権と関係ないというには少し詰めなくてはならないという認識を持っている」
■“9キロ”の壁…リニア開業 見通し立たず
県とJR東海の直接の話し合いでは結論がまとまらず、大井川流域の市と町は20日、国土交通省に対して国が関与するように求める異例の要望書を提出しました。
染谷市長:「現実的には、リニアの工事を止められるような状況にはない。この閉塞感をどうにかして打開していきたいという時には、国の力が流域の人たち、あるいは県民の皆様に信頼を得るという意味では、大きな担保になると思っている」
9キロの壁に阻まれ、開業の見通しが立っていないリニア中央新幹線。品川から名古屋まで40分で移動できるようになる日は、いつになるのでしょうか?
(「グッド!モーニング」2023年4月21日放送分より)
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
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