打ち上げ失敗のH3ロケット「エンジンに棲む魔物」とは?コストカットとパワーアップ両立目指した最新技術とは?【サンデーモーニング】|TBS NEWS DIG
打ち上げの成功が、まさに“見えた”直後に一転、「指令破壊」へと至ったH3ロケット。いったい何に「失敗」したのでしょうか。次世代を担う日本の最新鋭ロケット開発で困難を極めたのは、第一段目のロケット。その一段目が無事に想定通りの性能を発揮した直後、まさかの二段目に現れた「エンジンに棲む魔物」とは?従来のH2よりも大きな衛星を、より安い打ち上げコストで宇宙へと運ぶだめの最新の技術とは?手作り解説でお伝えします。
■H3ロケットの打ち上げ失敗
H3ロケット初号機の打ち上げ。成功まであと一歩のところで、残念ながら失敗に終わりました。今回ロケットの第1段はきちんと飛行しましたが、第1段と第2段が分離した後、第2段エンジンが着火しませんでした。「電気系統に異常があった」と見られています。
■「指令破壊」とは?ロケットはどうなった?
打ち上げからおよそ14分後、「指令破壊」の信号が送られました。「指令破壊」とはロケット全体の爆破ではなく、第2段の中にある燃料タンクを火薬で割ることです。それによって推進力を断ち、安全に海に落とせるようにします。その後、ロケットは大気との摩擦などで破壊されて沈んでいきます。第1段も、第2段もフィリピン東方沖に落ちたと見られていて、JAXAは「回収する予定はない」としています。また今回、地球観測衛星「だいち3号」が搭載されていましたが、これも失いました。
■より安く、より大きな衛星を…
日本の宇宙開発の次の主役としてデビューするはずだったH3。9年前から、およそ2000億円かけて開発されてきました。その至上命題の1つが「より安く」です。今、運用中のH2Aは成功率98%で最も安定していますが、衛星打ち上げの費用は100億円。一方、例えば、アメリカのスペースX社ではおよそ65億円です。そこで、衛星打ち上げビジネスで勝つためにH3が目標に掲げた費用は50億円。電子部品の9割に自動車用部品を採用するなどしてコスト削減を図りました。
H3は、より大きな衛星の打ち上げを可能にするための新型です。H2Aロケットより一回り大きく、重さはほぼ倍。そこには至上命題がありました。「エンジンのパワーアップ」です。部品の数を減らしてコスト削減を図りながら、世界で初めてという構造に変えて、推進力1.4倍にすることを目指しました。
■ロケットエンジンに棲む魔物
実は、ロケットのエンジンは「高温、高圧、高振動」という極限状態で燃焼するため、たとえネジ1本の亀裂でもシステム全体の破壊につながる恐れがあり、「エンジン開発には魔物が潜む」と言われています。その道のりは険しく、開発期間は2回の不具合で2年間延長されてきました。今回の打ち上げで、第1段のメインエンジンが燃焼を終えたとき、総合指令棟では「よくやった」と歓声があがりました。
ところが、第1段では魔物は現れなかったと思いきや、第2段のほうに魔物が現れたのです。こちらはH2Aとほぼ同じものを継承していて、問題はないとみられていました。
技術者たちの努力や苦労が実を結び、H3が無事宇宙へ打ち上がるのはいつになるのでしょうか。
(「サンデーモーニング」2023年3月12日放送より)
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