今は“ロシア化”進む…激戦地マリウポリで映画監督が映した“スープ”(2023年2月25日)
ゼレンスキー大統領 24日
「世界からの最大の支援が必要です。そして、我々は勝ちます。」
ゼレンスキー大統領は、ロシアに奪われた領土の奪還と徹底抗戦を強調しました。
ロシアの侵攻から1年となったウクライナ。
一方、地元メディアの取材に応じ、自身のプライベートな部分を公開。
クローゼットには、カバーが被せられていた服が…。
ゼレンスキー大統領 24日
「これは象徴です。つまり戦争に勝てば、ジャケットを着ることができます。」
欧米の推計では、1年間で、ウクライナとロシア両軍の死傷者数は30万人にのぼり
民間人も2万人以上が死傷しています。
今もなお、ウクライナ全土のおよそ18%をロシアが掌握しています。
開戦当初、激戦が繰り広げられたのはマリウポリです。
アゾフスタリ製鉄所のシェルターに、守備隊と住民が立てこもり、
世界中が、その成り行きを注目しましたが、去年5月、陥落しました。
そんなマリウポリを舞台にした映画が今、
注目されています。去年のカンヌ映画祭で
特別賞を受賞した『マリウポリ7日間の記録』。
『マリウポリ7日間の記録』より・避難市民の会話
「フードをこうやって」
「それで助かった?」
「あそこで爆発してこっちに飛んできた」
この映画が注目される大きな理由、
それは…
『マリウポリ7日間の記録』プロデューサー ナディア・トリンチェフさん
「彼は捕まり、殺されました」
無念さを語るのは、監督の遺志を継いで映画を完成させたプロデューサーのナディアさん。
この映画の監督、マンタス氏は、軍事侵攻が始まって間もない去年3月、マリウポリへ。
ロシア軍が包囲したアゾフスタリ製鉄所近くの教会で、市民と避難生活を共にしながら撮影を始めました。
避難市民
「マンタス(監督)、足元に気をつけろ」
マンタス監督
「大丈夫ついていってる」
マンタス監督
「この戦車(発電機)が通れるんだから僕だって」
廃墟と化した街で避難生活を送る人々の日常が、克明に記録されています。
この頃、マリウポリではロシア軍の攻撃が激化。
避難所として1000人あまりが身を寄せていた「マリウポリ劇場」が爆撃され、多くの犠牲者が出ました。そんな状況下。
スープを作る避難市民の会話
「全部入れるのかい」
「(混ぜてる人)全部よ ゆっくり入れて」
避難者たちが、命をつなぐための食事。
野草を煮込んだスープです。
スープを作る避難市民の会話
「これぞ最高のスープ。」
「きのうよりおいしいやつね。」
この場面をプロデューサーのナディアさんは、
最も象徴的だと話します。
『マリウポリ7日間の記録』プロデューサー ナディア・トリンチェフさん
「とてもおいしそうに見えましたね。そこが素晴らしいところです。砲弾が飛び交い、廃虚となった町には遺体が転がっている。そんな中でもカメラは、スープを作る人たちを映し出すのです。」
カメラが映し出すのは、生きる人の日常…
一見、穏やかに見えるこの場面。
しかし、その直後。
(爆撃音)「伏せろ、急げ」
ナディアさんは常に監督の身を案じていたといいます。
『マリウポリ7日間の記録』プロデューサー ナディア・トリンチェフさん
「彼は捕まり、殺されました」
遺体には銃で撃たれた痕があったといいます。
実は撮影には、マンタス監督の婚約者でウクライナ人のハンナさんが、助監督として同行。
監督の拘束時には別行動をしていたため無事でした。
『マリウポリ7日間の記録』プロデューサー ナディア・トリンチェフさん
「こんな悲しい状況の中で、彼女は、すべてを持ち帰ることが出来たのです。監督の遺体と全ての映像素材を…」
その後マリウポリでは、ウクライナ兵が最後の砦として
抵抗を続けたアゾフスタリ製鉄所が陥落。
ロシア軍の支配下に入りました。 そして今…
戦禍の痕跡を消し去るつもりなのでしょうか。
多くの犠牲者を出した「マリウポリ劇場」をはじめ、損壊した建物の撤去を進める一方、
近代的な集合住宅などの建設が始まっています。
3年以内に、町を“完全復興”させると謳うロシア側。
通貨や法律もロシアのものに。
マリウポリの住人
「住民の心はすでにウクライナから離れ始めています。」
そう話すのは、今なおマリウポリに残る住民です。
素性を明かさないことを条件に番組の取材に応じ、街の変化を語ってくれました。
マリウポリの住人
「町の住民が言うんです。『公共料金の支払いが今までの1/10だ!浮いた金でソーセージが買えるぞ』『ロシア人は何も強制してこないじゃないか』と。わたしが『街が破壊されたんだぞ。砲撃してきたのは、空爆を仕掛けてきたのは誰だ?』と言い返しても、『自分たちは何も知らない、何も見ていない』と言い切るんです。彼らは戦争に疲れ切ってしまったのです。」
生きるため、ロシアに順応することを選ぶ住民たち。背景にあるのは、激戦最中の記憶だと指摘します。
マリウポリの住人
「犬は通りで人間の死体を食べ、人々は砲撃に戸惑うばかり。自分の子供が凍えることを恐れ、中庭で鍋を炊き、雪を溶かして飲んでいました。生きることしか考えられなかったのです。」
記録映画でも、“生きること”がキーワードとなっています。
『マリウポリ7日間の記録』プロデューサー ナディア・トリンチェフさん
「人生はどんな時でも続くこと、そして戦争の不条理さも描かれています。何が大切なのか、生きることがどれほど大切なことなのか、そうしたことが全て映像の中に語られています。」
サタデーステーション 2月25日OA
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
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