“海洋プラごみ”を輝かせる…車いす生活のネイリスト 救われた“子どもたちの言葉”(2023年2月7日)

“海洋プラごみ”を輝かせる…車いす生活のネイリスト 救われた“子どもたちの言葉”(2023年2月7日)

“海洋プラごみ”を輝かせる…車いす生活のネイリスト 救われた“子どもたちの言葉”(2023年2月7日)

 9年前に難病を患い、車椅子生活となったネイリストの女性。世界的に問題となっている海洋プラスチックごみを、爪を輝かせるネイルによみがえらせる活動を行っている。

■有本さんを救った“子どもの言葉”

 鮮やかなネイルチップの数々。このネイルチップの一部に使われているのは海洋プラスチックごみだ。

 それを作っているのが、神奈川県茅ケ崎市に住むネイリスト・有本奈緒美さん(40)だ。

 9年前に下半身が徐々に麻痺する、国指定の難病を発症し、今、車椅子の生活を強いられている。

 そんな有本さんが夫の昌人さん(55)と向かったのは、茅ケ崎の海岸だった。

 有本さん:「まず、車椅子から砂浜用の車椅子に乗り換えます」

 一般的な車椅子では、砂浜を走行することはできないため、太いタイヤの付いた砂浜用の車椅子で移動する。

 有本さんが海洋プラスチックごみをネイルチップに活用することをひらめいたキッカケ…それは、車椅子生活となり、ふさぎ込んでいた時に掛けてくれた“子どもたちの言葉”だった。

 有本さん:「『お母さんは、お母さんでしょ。だって頑張ってるじゃん』って。病気になる前は、介護職をしてまして。人の役に立てる仕事が天職だと思っていました。(車椅子生活になり)仕事もなくなってしまったし、その当時はつらかったです」

 9年前に病気を患い、車椅子生活となった有本さん。つらい日々のなか、涙を流す日もあったというが、そんな気持ちを変えてくれたのは、3人の子どもたちから言われた“ある言葉”だった。

 有本さん:「『(車椅子の)お母さん(のこと)恥ずかしいんでしょ』って、(子どもに)言ってしまったんですね。その時、子どもたちが小さいながらに掛けてくれた言葉が『お母さんは、お母さんでしょ。だって、頑張ってるじゃん』って」

 次女・美凛愛さん(12):「(お母さんが)言葉で勇気付けられていたから、明るくなっていました。一人ひとりが、ちゃんとお母さんと向き合えているかなって」

 家族の応援もあり、有本さんは以前から趣味で勉強していた、ネイルを仕事にすることに決めたのだ。

 2018年には、自宅に健常者だけでなく、障害者も通えるネイルサロンを開業し、人生を再スタートさせた。

 さらに、足が不自由でも社会貢献をしたい。そんな思いを抱いていた2021年、車椅子でも砂浜のごみを拾う活動に参加できることを知ったという。

 その砂浜で、有本さんが見つけたのが、世界でも深刻な問題になっている「海洋プラスチックごみ」だったのだ。

 環境省によると、日本からも年間2万~6万トンの海洋プラスチックごみが流出していると推計されている。

 この日も、夫と共に砂浜用の車椅子で砂浜へ行ってみると…。

 有本さん:「こういうふうに拾って。雨上がりだと砂が湿ってしまって、ふるいにかけられないので。すごいいっぱい出てきましたね」「(Q.こんなにいっぱいあるんですね)丸い物は、プラスチックの元になるペレットっていうものですね」「(Q.色が付いてるこういう物もあるんですね。ペットボトルとかですかね?)ペットボトルっぽいですね」

 次々と出てくる「海洋プラスチックごみ」。川や海に捨てられたごみが、少しずつ細かくなり海岸に流れ着くのだという。

 だが、そんな海洋プラスチックごみを見た時、こんな考えが浮かんだという。

 有本さん:「指先に付けることで、常に目で見て意識できるっていうところで、ネイルチップにするのはいいのかなと」

■環境問題考える“きっかけ“”に…

 海洋プラスチックごみがネイルチップに…?一体、どのように利用するのか。

 まず、ごみを念入りに洗浄し、乾燥させた後、細かくカットする。そして、デザインが決まると、熱でごみを溶かすなどの加工を施し、ネイルチップのパーツにしていく。

 有本さん:「ネイルチップが完成しましたので、きょうお渡し致しますね」
 ネイルチップを購入した客:「楽しみです」
 有本さん:「こちらになります」
 ネイルチップを購入した客:「わーすごーい。えーかわいい」

 海洋プラスチックごみが、ピンクや紫など鮮やかなネイルチップとして生まれ変わったのだ。

 ネイルチップを購入した客:「爪って見るから、これ見る度に思い出すと思う。あっ、これって海ごみで作られているんだ」

 この海洋プラスチックごみで作られたネイルチップは、自宅のネイルサロンだけでなく、イベントでも販売。また、ネイルの授業も行うなど、活動は多岐にわたっている。

 有本さん:「この原点が、海ごみを拾うっていうところからこのパーツは生まれたんですけど。『これ、海ごみなの?』っていう言葉が、必ずお客様から返ってくる。やはり、環境問題にも意識して頂きたいなって」

 そんな有本さんの活動を支える家族は…。

 夫・昌人さん:「何でも、やっぱしやってみないとね。サポートが必要ならサポートするし、自分でできることは自分でやればいい」

 次女・美凛愛さん:「昔よりは、全然違う雰囲気にもなって。こっちも、すごい明るくなれる」

 障害があっても、社会に貢献したいという思いで活動を続けてきた有本さん。そんな有本さんが今、思うことは…。

 有本さん:「社会貢献ってことも、自分は何もできないというふうに思っていたんですけど。自分の存在意義も上がるし、ネイルチップ自体も、海洋ごみを使って作るっていうのを目標にしているんですけども、動けるうちに何か未来の役に立てたらなと思っています」

■海の豊かさ「指先から意識して守りたい」

 海洋プラスチックごみを使ってネイルを作る有本奈緒美さんに、思い描く未来図を聞いた。

 有本さんのイメージを、中学1年生の長女・凛恋華さんが描いたものだ。上の地球の画では、地球の周りを人々が手を繋いで囲んでいるが、世界が手をつないで海を守ってほしいという願いが込められている。

 そして、その地球を見つめる車いすに座る人魚が描かれている。これは、歩くことができない母を人魚と重ね合わせ、障害があっても社会貢献や海をきれいにすることができるという思いが込められているという。

 有本さんは、「ネイルを通じて、世界中の海の豊かさを指先から意識して守りたい」という。

(「大下容子ワイド!スクランブル」2023年1月30日放送分より)
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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