【報ステ解説】性犯罪規定見直しへ 「立証の負担加害者に」被害者語る“刑法の壁”(2023年2月3日)

【報ステ解説】性犯罪規定見直しへ 「立証の負担加害者に」被害者語る“刑法の壁”(2023年2月3日)

【報ステ解説】性犯罪規定見直しへ 「立証の負担加害者に」被害者語る“刑法の壁”(2023年2月3日)

法務省の審議会は3日、性犯罪に関する刑法の改正案に向けた要綱案をまとめました。

池田鮎美さんは、大学1年生のときと30歳のときの2回、別々の男からレイプ被害にあっています。しかし、加害者の男たちが、罪に問われることはありませんでした。
池田鮎美さん:「(Q.刑法の規定の壁を感じたか)感じました。0か100か。有罪か無罪か。本当に高いハードルで決められてしまう。ほとんど有罪を勝ち取ることができる被害者はいなかったと思います」

日本では、2017年に性犯罪に関する刑法が110年ぶりに改正されました。しかし、状況が大きく改善されたとはいえません。

加害者がよくいう言葉「同意の上だった」。その主張に対し、被害者が「同意はしていなかった」ことを証明しなければならない状況は変わらなかったからです。抵抗する。それは池田さんにとって、非常に厳しいものでした。
池田鮎美さん:「自分の一挙手一投足で、次の瞬間、命を奪われてしまうかも。どういう態度が正解かまったくわからない状況です。検察官が『抵抗はできましたか』と聞いてきたんですね。『恐怖から抵抗できませんでした』と伝えしました。すごくがっかりされた表情で、ため息もついていました」

2019年、4つの性暴力事件で立て続けに無罪判決が出たことで、多くの課題が浮き彫りとなり、フラワーデモといった運動につながっていきます。それらの事件の判決です。
福岡地裁・2019年の判決:「被告男性は、強い酒で被害者女性を泥酔させ、性的暴行に及んだが、被告は被害者女性が同意していたと勘違いしていたため、無罪」
名古屋地裁岡崎支部・2019年の判決:「実父が幼少期から娘に暴力をふるい、長年、精神的支配下に置いたうえで、中学2年から5年以上にわたり、性的虐待を行った。しかし、娘が抵抗できなかったとは認められないという理由で、父親は無罪」

このようなケースの被害者たちは、今後、救済されることになるのでしょうか。

今国会に提出する方針の改正案。その前提となる要綱案では、強制性交などの罪の成立要件として、新たに8項目が明示されました。アルコールや薬物を使われる。予期せぬ事態で恐怖を感じる。家族・親族などからの虐待。教師や上司といった立場を利用されるなどして、抵抗できない状態にさせられた。そのうえで、性暴力を受けたことが認定されれば、相手を強制性交などの罪に問うことができるようになります。前進したとの評価がある一方、一連の議論のなかでは、被害者を救済するには不十分だという意見も上がりました。

被害者や支援団体が求めているのは、北欧などで使われている『YES Means YES』という概念。行為の前に、相手から積極的な同意をしっかり得たのかどうかというものです。
池田鮎美さん:「本来ならば、その立証の負担は、加害者に負ってもらうべきであって、被害者がそこまで負わなければ有罪にできない社会というのは、社会としての機能を備えているといえるのかなと。性行為をしたいと思った人が、ちゃんと同意を取り付けたんだと、加害者に証明してもらうことが、本来なら必要と思っています」

◆現在の法律では、性犯罪の成立には、加害者が「暴行や脅迫」して犯行に及んだこと。被害者が抵抗できない状態だったことが必要です。逆に言うと、こうしたことが認定されないと犯罪が成立しません。

例えば、性行為の同意がないにも変わらず、被害者が抵抗した形跡がないことで加害者を処罰できないケースもあるなど、問題が指摘されていました。性犯罪は目撃者がいないことから、実際には犯罪の証明を、被害者がしなければならないために、被害者の負担は大きかったです。

刑法改正に向けた要綱案について、これまでの経緯を見ると、被害者の方の訴えについては、審議会でも議論になりました。当初、去年10月の試案では、加害者が被害者を「拒絶困難な状態にした場合」に処罰できるという案が検討されていました。
ただ、これだと被害者が抵抗しないといけない“義務”があるようにみえるとの指摘がありました。

今回、発表された内容を細かく見ます。処罰対象となる加害者の行為や状況の具体例が8項目示されています。

これまでの「暴行や脅迫」に加えて、「心身に障害を生じさせること」「アルコールまたは薬物を摂取させること」「睡眠や意識が明瞭でない状態にすること」「拒絶するいとまを与えないこと」「予想と異なる事態に直面させ恐怖または驚愕させること」「虐待に起因する心理的反応を生じさせること」「経済的または社会的地位の利用」。

そして、こうした行為によって被害者を同意しない意思を形成・表明・全うが困難な状態、つまり、「性行為に同意しない意思を持ったり、意思を示したりすることなどが困難な状態にさせた」場合に処罰できるとしています。今回の改正に向けた要綱案は、“強制わいせつ罪”“強制性交罪“などが対象となります。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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