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【独自】“黒い札束”江戸前のり激減…クロダイ“爆食い”で「東京湾からなくなる?」(2023年2月3日)
2日に東京湾の異変として、「タチウオ」が豊漁だと伝えましたが、同じ東京湾では「江戸前のり」が激減しています。70年続いた老舗のり問屋も、今月末での閉店を決めました。何が起こっているのか、現場を取材しました。
■クロダイ“爆食い”大ピンチ「7年で100軒やめた」
東京湾で行われていたのは、のりの収穫です。
のり漁師・三辻正幸さん:「普段は1万5000~2万枚の生産を毎日している。今年は50日かけて2万枚。絶対に今年は、のりが足りませんね」
こう話すのは、東京湾でのり漁師を40年続ける三辻さん。ここで取れるのりは、いわゆる江戸前のり。その価値の高さから“黒い札束”とも呼ばれています。
江戸時代には将軍家への献上品としても重宝されていました。しかし近年、江戸前のりに異変が起きています。
三辻さん:「きのうあったのりが、きょう収穫に来ると、突然なくなっている。夢を見ているのかな、という時があります。頭にきますよね」
海の中では、何が起きているのでしょうか?しばらくカメラを回していると、そこに映ったのは、釣り人にも人気の魚「クロダイ」です。
三辻さん:「秋ののりがことごとく短くなって、初め何が原因かなと思っていたけど。これは食害だと。(収穫は)平年の2割3割しか」
養殖するのり棚の周りには防魚ネットを施し、被害を食い止めようとしていますが、活発化するクロダイは、その隙間から入り込みのりを食べるといいます。あまりの被害の大きさに、ここ数年のり養殖から手を引く人が後を絶ちません。
収入減に加え、労力のかかる防魚ネットの設置は、高齢化する漁師たちの撤退に拍車を掛けています。
三辻さん:「生産者激減ですよ。7年で100軒くらい辞めた。1軒が年間200万枚生産したとして、2億枚のりが減るわけですからね。放置しておけば、東京湾から江戸前のりがなくなってしまう可能性はありますね」
■老舗店が苦渋の閉店「惜しまれているうちに」
生産数が減れば、私たちが口にする機会も少なくなるのでしょうか?
千葉県船橋市にある「船福」。昭和27年からおよそ70年にわたり江戸前のりを販売。佐藤栄作元総理大臣も店を訪れました。
しかし、「船福」は今月末をもって、その歴史に幕を閉じることを決断しました。
「船福」取締役会長・篠田好造さん:「味は、東京湾ののりが一番だと思う。全国的に見ても、磯の香りと味は。最盛期が6億枚くらい取れたものが、8000万枚とか7000万枚とか。(前は)入札で買わなかった下の等級まで買わないと、のりの数量が確保できなくなった。うちの先代がよく言ってましたよ。『人の目はごまかせても、人の舌はごまかせない』って」
豊富な栄養と香りの高さで愛された江戸前のり。しかし、今後数年、数十年先を考えると、品質の維持・向上が難しいと判断しました。店のアンケートには閉店を惜しむ声が数多く届きました。
篠田さん:「悩みましたよ、もちろん。お客さんから慕われているうちに、船福ののりまずくなったとか、この間良かったけど、今度は悪くなったとか。そういう評判が立ってやめるよりかは、お客さんに惜しまれているうちに。本当に申し訳ないと思う」
■漁師の思い「歴史は途絶えさせることなく…」
篠田会長は「時代」という言葉を使い、「需要や地球環境を見極めなければいけない」という一方、こうも語りました。
篠田さん:「のり屋さんを、できればまた復活してやりたい。プールでのりが作れる時代になるかもしれません。今の技術で行けば」
漁師の三辻さんは、こう話します。
三辻さん:「この富津が一番古いと思う。この歴史はやっぱり途絶えさせることなく、続けていかなくちゃいけないと思います。やりますよ。70になっても、80になっても、体が利くうちはやるつもりでいます」
(「グッド!モーニング」2023年2月3日放送分より)
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
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