【独日】「JPCZの謎」を追う調査に密着“最強寒波”直下の日本海で(2023年2月2日)

【独日】「JPCZの謎」を追う調査に密着“最強寒波”直下の日本海で(2023年2月2日)

【独日】「JPCZの謎」を追う調査に密着“最強寒波”直下の日本海で(2023年2月2日)

先週、各地に大雪をもたらした原因の一つが、JPCZ=日本海寒帯気団収束帯です。実は、その規模や、なぜ大雪をもたらすのか、詳しくわかっていません。今回、そのJPCZ直下の日本海で行われた調査に同行しました。

先月19日、山口・下関を出港した水産大学校の船『耕洋丸』。中では、学生たちが日夜、航海士になるための実習を受けています。この船に、気象や海洋の専門家、さらには気象を学ぶ大学生まで、8人の研究メンバーが乗り込みました。

JPCZとは、シベリアからの冷たい風が、朝鮮半島の山で二つに分かれたあと、再び収束。上昇気流が発生し、次々と雪雲をつくります。この現象自体は昔からあるものですが、なぜ近年、記録的な大雪につながっているのか、詳しくはわかっていません。

JPCZの規模は、今、どれほどのものか、そして、なぜ災害級の大雪をもたらしているのでしょうか。研究チームが調査に乗り出しました。

航海2日目。早速、観測が始まります。雪雲を横切るように船を進めながら、1時間ごとに風船を何度も何度も打ち上げ、大気のデータを集めます。風船についている小さなセンサーで、何が測れるのでしょうか。
三重大学博士前期課程1年・山本諒さん:「温度と湿度です。位置情報から風の向きと風速がわかりますね」

センサーからの情報で、JPCZの風の強さや、雪雲の規模がわかるのです。しかし、大気の状態が不安定なため、風向きやタイミングを計らないと、風船がうまく風に乗ってくれません。風は、時間を追うごとに強まり、波の高さも明らかに変わっていきます。大しけの荒波、左右に大きく揺られる船。計測器によると、傾きは40度を越えました。船酔いする人も。

観測するのはもう一つ、日本海の海水温です。水温が高いほど多くの水蒸気が発生し、雪雲にエネルギーを供給します。温暖化の影響で上昇する海水温が、JPCZの発生にどう影響しているのか、調べます。最大水深1850メートルまで、水温などのデータを取ります。

JPCZを追いながら、日本海をさまよう船。ついに、最大のターゲットを捉えます。1月24日から25日、気象庁が「10年に一度の記録的寒波」と警戒を呼び掛けた最も危険なJPCZが迫ってきました。ここから昼夜を問わず、36時間連続の観測が始まりました。

24日正午過ぎ、明らかに風の強さが変わってきました。
新潟大学・本田明治教授:「(JPCZの)だいたい先端に入ったと思います」

海面が大きくうねります。このあと、JPCZの中心線が船の上を通過。最大瞬間風速は35メートルを計測しました。
新潟大学・本田明治教授:「メソ・サイクロン、JPCZの中にある強力な低気圧ですね」

午後3時半。風と波が一段と激しくなり、研究チームや学生では危険と判断。ここからは、耕洋丸の船員のみで打ち上げを続けます。

約90回の打ち上げからわかったこと。それは、今回の雪雲の規模です。その高さは、平均的な雪雲の2倍以上に発達しました。そして、雪雲のもとを生み出す海水温は14度近くありました。観測の結果、暖かい海水温は、100メートル以上深くまで続いていました。

通常、寒気の下では、冷やされた表面の水が沈んでかきまぜられ、水温は下がっていきます。しかし、今回、暖かい水が100メートル以上の深さに達していたことで、水温は下がらずに水蒸気を出し続けました。その結果、雪雲の勢いが衰えなかった可能性があるというのです。

さらに、JPCZを強めるもう一つの要因がわかってきました。それは“極前線”と呼ばれる暖かい水と冷たい水の境目です。これが要因がある可能性を研究チームは突き止めました。

新潟大学・本田明治教授:「北の冷たい水と南の対馬暖流の暖かい水の境界で、シャープな勾配が維持されている。(風が)南では速く、北では遅いので、間の空気がなくなるわけですから、上から持ってくるしかない。それが下降流をもたらす」
三重大学博士前期課程2年・山中晴名さん:「(Q.極前線の北と南で風はどのくらい違う)2倍以上、3倍くらい違う」

暖かい水と冷たい水がぶつかる極前線。暖かい海の上では、冷たい海よりも強い風が吹きます。その“すき間”となった場所に、上空から引っ張られる形で下降気流が発生。これが、JPCZの風をさらに強めているのではないかというのが研究チームの見立てです。実際、衛星画像を見ると、極前線には雲のすき間が見えます。ここに、下降気流が発生していることが予想されます。
三重大学・立花義裕教授:「JPCZ付近じゃなくて、1000キロくらい遠い海も、JPCZに効く可能性があるとわかった。近年、災害級の激しい大雪が増えているのは事実だと思う。水温が上がっていることで、水蒸気の供給が増えていることなのか。違う理由なのかを知るためには、観測データに基づいて調べることが、温暖化に伴って(災害級の大雪が)増えるのか、増えないのか、結論に近づくと思いますね」
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

ANNnewsCHカテゴリの最新記事