「心が折れかけてた」 被災者向けの「借り上げ住宅」借りられず 台風15号から4か月 静岡|TBS NEWS DIG
シリーズ「現場から、」です。静岡県内に甚大な被害をもたらした台風15号から4か月。家に住むことができない被災者に行政が家賃などを負担する「借り上げ住宅」をめぐり、物件はあるのに部屋を借りられないという実態が明らかになりました。
年明け早々に不動産会社を訪れたのは、台風15号で家が浸水した森みつ子さん(81)です。これまで、娘の家に身を寄せていましたが、この日、新しい家探しを手伝ってくれているボランティアと共に相談に来ました。
ボランティア
「ずっと連絡してきたが、どこもできないと言われちゃて」
森みつ子さん
「毎日毎日が暗い生活。健康な体もずんずん沈んでいくような。一日も早く(借り上げ住宅が)決まってほしいです」
広い範囲で浸水などの被害をもたらした台風15号では、静岡市内だけでも、全壊・半壊の住宅がおよそ2400棟。自宅で生活を送れない人が数多くいました。
そうした被災者を救う制度があります。県が民間の賃貸住宅を借り上げ、被災者に現物支給するもので、定められた金額の範囲内であれば無償で入居できます。しかし…
清北土地(不動産会社) 山崎寛子さん
「(物件を)なかなか見つけにくいとうかがったんですけど」
ボランティア
「(不動産会社に)4件くらい電話かけたんですけど、はなから電話口でダメっておっしゃるところもあったし。結構、心が折れかけてた」
制度も物件もあるのに、部屋を借りられない。一方で、不動産会社の事情もあるようです。
清北土地(不動産会社) 山崎寛子さん
「すごい分厚い書類を作らなければいけなくて、しっかり県や市に聞いて取り扱おうとすればできるが、通常の業務とは全く違う業務になる」
大きな労力に加え、住人が短い期間で退去する可能性のある「借り上げ住宅」は、仲介業者が貸主の理解を得るのに高いハードルがあるといいます。
清北土地(不動産会社) 山崎寛子さん
「ここの社員もほとんど清水区にいるので。お互い被災しているので、みんな協力できる範囲で」
業者の“協力”に頼らざるを得ない救済制度。
静岡市住宅政策課 鈴木ちさと主任技師
「『借りたい物件があるが、そこの不動産会社には断られてしまった』という声をいくつかいただきました」
静岡市内で、不動産会社に断られたなどの理由で申請を取り下げた人は11人もいました。市は、制度自体を知らない人も潜在的にいるとみています。
静岡市住宅政策課 鈴木ちさと主任技師
「初動をより早められるようにマニュアル等の準備をしていきたい」
物件を探していた森さん、ようやく新たな住まいが決まりました。
森みつ子さん
「気に入りました。(娘の家だと)お友達とも会えないし、孫は『ばあば、ずっといて』と言うけど、そうもいかないんだよーって」
制度の限界が垣間見えた今回の災害。今も“被災者”のままの人たちがいます。
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