【解説】安倍元首相銃撃裁判 山上被告に無期懲役求刑 生い立ちや宗教虐待が裁判員の量刑判断の焦点
(中谷しのぶキャスター)
ここからは亀井弁護士です。よろしくお願いいたします。
極刑が求められるかもと注目されていた中、『無期懲役の求刑』となりました。この点はどうご覧になってますか。
(亀井正貴弁護士)
これはもう妥当というか、穏当な求刑です。
やはり永山基準がありますから、一人の死亡の場合に死刑まで打てるかという問題。死刑に上がる場合には政治テロであれば、これはまた別格の話になってくるので、民主主義・政治体制に対する攻撃になりますから別格になるのですけども、そこまでの立証はできていないということからすると、無期懲役というのが穏当というか妥当な求刑だろうと思います。
(中谷しのぶキャスター)
検察側の内容を見ていきたいのですが、事件の危険性について、多くの人が殺傷されておかしくない状況でパイプ銃を発射したもので、危険性は際立っている。年単位の計画があり、強い殺意が認められる。
そして人命軽視の視点ですね。対象が幹部から安倍元首相に変わった理由について、被告から最後まで納得のいく説明がなく、合理的飛躍がある。犯行は短絡的かつ自己中心的で人命軽視だと。
亀井先生、この2点が主に焦点となるわけですね。
(亀井正貴弁護士)
全くこの通りであって、いわゆる一般聴取がいるような場でパイプ銃をぶっ放すわけですから、公衆的な公共的な危険性もあります。それから計画性がかなり際立っています。それから殺意も強固です。
それから旧統一協会の幹部とか対象者が変わっていくんですね。殺害の対象が変わっていって、狙った相手が変わっていくわけだから、誰でもいいとは言えないですけども、特定のこの人を狙うんじゃなくて、その中であれば誰でもよかったということですから、人命軽視の傾向というのは否定できないと思います。
(中谷しのぶキャスター)
安倍元首相を狙った理由についても、教団の標的が来ないなら安倍元首相を襲撃することにした。あくまでも旧統一協会が対象で、安倍元首相は本筋ではないと思っていた。このようにも変遷しているんです。
(指宿文解説委員)
私が聞きに行った被告人質問の時にも、なぜ安倍元首相が襲撃対象になったかというような質問に対して、「少し考えさせていただきたい」ということで、統一協会から安倍元首相に変わった変遷を、すっと答えることができなかった。このあたりもやっぱりまだ引っかかっているところでもありますし、ちゃんと答えが聞けてないところなので、疑問が非常に残るというところになります。
(中谷しのぶキャスター)
他にも亀井先生が注目された点がこちらです。
検察側が論告求刑で、更生の可能性が乏しい点。また過去の量刑を考慮しても、量刑を軽くできないという点。これはどういう意味でしょうか。
(亀井正貴弁護士)
更生可能性について、これが「ない」となれば死刑求刑に向かうわけです。再犯の可能性が濃厚になりますから。やっぱり更生の可能性があるので、再犯も止めるという可能性もあるから、死刑求刑ではなくて無期懲役になるというようなことです。過去の量刑として、無期懲役の場合にどのような事案で無期懲役刑が出ているかということを比較した場合に、前例と比較しても、この事案は無期懲役刑がピンポイントにストライクゾーンだという判断です。
(中谷しのぶキャスター)
一方で、弁護側は「量刑としてあまりにも重い」と指摘をしています。その背景には不遇な生い立ちがあるわけなのですが、この点は今後どう反映されていくんでしょうか。こちらです。
(亀井正貴弁護士)
生い立ちといっても、例えば不遇な境遇にいた未成年の時代のところと、今回の宗教虐待というところと直接犯行に結びつく2つの事情が考えられるんです。
元々の生い立ちはあんまり考慮しないです。それを考慮していたら、他の事案でも、不遇な境遇の人が凶行に及んだ場合には、さらに刑を軽くするのかということになりますから、それはしないです。今回は『宗教虐待』というのがありますから、裁判員の心証にどう影響するかなんです。おそらく裁判官と検察は何も心証には来ないと思います。ただ一般の人は、やはりぐんと来るかもしれない。だから裁判員というのがポイントになってくると思います。
(中谷しのぶキャスター)
無期懲役が求刑されていますけれど、有期刑になる可能性ももちろんあると?
(亀井正貴弁護士)
可能性もありますが、この事案は有期刑にすべき事案ではないとは思います。検察はそう思っていると思います。確かにあります。これは裁判員裁判ですから、裁判員の心証に来れば、有期刑になる可能性もあります。
(中谷しのぶキャスター)
亀井弁護士からも、被告人の生い立ちは本件の核心部分。背景事情ではなく最も重要視されるべき事情だとありますが、ここは重要視ではないというご指摘でした。一方で、被告が宗教虐待の被害者であることを考えなければいけない。このあたりが裁判員の皆さんにどう響くかというところで、どのような判決が言い渡されるか注目ということになります。
(指宿文解説委員)
裁判員の方も非常に熱心に質問をされていらっしゃいました。裁判官を通してであったりしますが、気になるところを一つ一つ聞いていらっしゃるところがすごく印象的でしたので、裁判員の方々にどう伝わっているのか。やっぱりプロとは違いますので、裁判員の方への訴えかけというのも今後の判決が出てくるときの大きなポイントになってくると思います。
(中谷しのぶキャスター)
こちらは整理してお伝えしたいんですけれども、弁護側は情状酌量を求めています。「懲役20年までにとどめるべきだ」と。先ほどから更新されました。これも加わりました。内容としましては「被告人の生い立ちは本件の核心部分で、背景事情ではなく、最も重要視されるべき事情でもある。また、かわいそうなど感情論ではなく起こったいきさつを社会全体で考える。重い量刑の効果はどうか。新たな一歩を踏み出すきっかけを与えるべきだ」というのが、弁護側の主張として入ってきています。
無期懲役に対して、懲役20年までにとどめるべきだ。これはどう解釈したらいいんですか?
(亀井正貴弁護士)
弁護側の求刑って非常識なくらい低い求刑を出すことがあるんですが、この事案は重要ということで、弁護側としても本件の実態というのは理解していると見るべきです。だから争いは懲役30年が来るのか無期懲役が来るのかというところです。
(中谷しのぶキャスター)
懲役20年というのは非常識な範囲ではないと。十分に加味しているということですね。
そしてこちらですね。起こったいきさつを社会全体で考える。この重い量刑の効果はどうか。新たな一歩を踏み出すきっかけを与えるべきだというのも、山上被告に対していうことですよね。
(亀井正貴弁護士)
すごくわかりにくいと思うんです。もともと刑事事件というのは、被告人の再犯とかそういったことを判断する場であって、社会的にどうかというのを結果的にどうなったかというのか判断する場ではないので、弁護側としてはここがポイントなんです。ここを被告人が狙ってこれをしたんだとなったら、被告人にとってはマイナス。政治討論になるので、それは言えないんだけども。結果的に社会は変えていったんだ良い方向に変えていったということを情状として酌むべきだという理屈ですが、検察の考え方とすると、それは理論的じゃないだろうというような判断になる。
(中谷しのぶキャスター)
検察側は生い立ちは被害者に無関係であって、量刑の大枠を変更するものではない。暴力に訴えることは法治国家では絶対に許されないとして、無期懲役の求刑がなされたということで、このあたりが判決でどう判断されるかというところになるわけです。
(亀井正貴弁護士)
一般情状で普通の生い立ちと本件の関係する動機というのでは2つに分けるべきですが、弁護側の話は生い立ちは本件の動機の部分と密接な関係があると一体のものなんだということで、検察の主張を排斥しようとしている。
(中谷しのぶキャスター)
新しい情報です。 山上被告は証言台に立たずに結審したということです。 これはどうご覧になりますか。
(亀井正貴弁護士)
もう言い切ったということだと思います。被告人質問で検察の質問とかが来て、色々考えながら慎重に答えてきたと思うんです。だから一応言い切ったから、もうあまり言わない方がいいという判断もあったかもしれません。
(中谷しのぶキャスター)
こういうケースはよくあるのですか?
(亀井正貴弁護士)
申し訳ないとか社会に非常に迷惑をかけましたとか、被害者に申し訳ませんというのが一般的ではありますけども、本件の場合にはそれを言ったからといってどう変わるわけでもないので、本人がそういう判断をしたんだと思います。
(中谷しのぶキャスター)
弁護側としても、犯行後の社会の変化について、解散命令は犯行時に予測できたのか。予測はできないが、「私としてはありがたい」と答えていますし、 今の宗教2世救済の動きについては、世の中にとってもあるべき姿だと答えてはいます。
(指宿文解説委員)
このあたりの背景も含めて、判決にどういう影響があるのかなのですが、今後来年の1月に判決があるのですが、どのあたりを判決のポイントとして一番しっかりと見たいと思いますか?
(亀井正貴弁護士)
やった行為の悪質性・危険性は明白ですから、あとは裁判員が、その生い立ちとか含めて一連のものだと言ってます。おそらくそこは裁判員が納得するかもしれないです。そのあたりの情的なところをどう取るかということです。
(中谷しのぶキャスター)
先ほど亀井弁護士からは懲役30年あたりが妥当ではないかという話でしたか…。
(亀井正貴弁護士)
私はこの事案は無期懲役が妥当だと思います。今後の影響、この事案の将来における影響とか他の模倣性とか考えたら、無期懲役が妥当だと思いますが、裁判員がいますから、有期、例えば懲役30年とか28年とかそこと無期懲役との境界が全然違いますから。そこのところの争いになってくるんじゃないかなと思います。
(中谷しのぶキャスター)
わかりました。ここまで亀井弁護士のお話を伺いました。ありがとうございました。
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