「すみだ水族館」“魚の補充作戦” 200匹超を1000km先まで…“非常に珍しい魚”も(2023年1月29日)

「すみだ水族館」“魚の補充作戦” 200匹超を1000km先まで…“非常に珍しい魚”も(2023年1月29日)

「すみだ水族館」“魚の補充作戦” 200匹超を1000km先まで…“非常に珍しい魚”も(2023年1月29日)

 電気代の高騰などから全国の水族館が、厳しい状況におかれている。そんななか、東京の「すみだ水族館」が非常に珍しい魚を含む200匹の魚を巨大水槽に移すプロジェクトを敢行した。

■“物価高”直撃…水族館も悲鳴

 ジンベエザメがいる巨大水槽で知られる大阪の海遊館が、今月12日から入館料の値上げに踏み切った。今、各地の水族館が、値上げに踏み切らざるを得ない状況に直面している。

 背景にあるのが、エネルギー価格の高騰や餌(えさ)代などの物価高騰だ。

 マゼランペンギンたちの様子を間近で見ることができる、東京「すみだ水族館」も、4月からの値上げを決定した。

■3年がかりで計画…魚の“補充作戦”

 厳しい状況下にある、すみだ水族館だが、その裏で新たなプロジェクトが進行していた。

 すみだ水族館 展示飼育チーム長 柿崎智広さん:「この大水槽、元々思いとしては、小笠原の海の日常を感じてほしいと。小笠原の海って、ダイナミックさで広大な海の中にドーンとした群れがある。そういった海ですので」

 小笠原諸島の海をテーマにした「小笠原大水槽」。魚の群れもウリの一つだというこの水槽では、定期的に魚を補充しなければならない。

 しかし、1000キロ離れた温かい海から魚を移動させるには、様々な難関が待ち構えていた。

 3年がかりで計画されたという、魚の補充作戦に密着した。

■200匹超捕獲…なかには“珍しい魚”も

 東京・すみだ水族館。その目玉の一つが、小笠原諸島近海で見られる、絶滅危惧種のサメ「シロワニ」をはじめ、45種類の魚たちが泳ぎ回る、巨大水槽だ。

 この水槽をより魅力的なものにするため、3年がかりのプロジェクトが進行していた。

 今月中旬、職員たちの姿は、すみだ水族館からおよそ1000キロ離れた小笠原諸島近海にあった。職員たちが、水族館に補充する魚を捕獲しているのだ。

 柿崎さん:「網でとると結構、メッシュで擦れちゃったりとか、魚にストレスがかかってしまうところもあったりするので…」

 魚への負担を最小限にするため、釣り上げるのは1匹ずつ。これを6日間ひたすら行い、200匹以上の魚を釣り上げた。

 そして今回、釣り上げた魚の中に小笠原の海でもあまり見ることができない珍しい魚がいた。

 しかし、本当に大変なのは、この後だ。捕獲した魚を1000キロ離れた水族館まで無事に運ばなければならない。

 柿崎さん:「少しずつコンテナの中の水を、海水を入れ替えながらずっと(船が)走ってきます。水温が下がっちゃうと、もちろん生き物が弱ったりするので」

 わずかな水質の変化で、魚が全滅してしまうこともある。フェリーで24時間、輸送中は一時も気が休まることはない。

 23日、小笠原諸島を出発してから24時間後。フェリーが芝浦埠頭へ到着。魚は、無事なようだ。

 そして、珍しいという魚が、小笠原諸島や温暖な地域に生息する「ミナミイスズミ」。通常は、グレーがかった色をしているが、今回は小笠原諸島周辺で見られる黄色い個体を捕獲できたという。

 さらに、輝く白いミナミイスズミもいる。

 柿崎さん:「白(色の個体)も、たまにいて。さらに珍しいんです。(なぜ白いのか)理由は分かっていないんです」

 小笠原諸島でもめったに見ることができず、すみだ水族館でも、これまで飼育したことがないという。

 後は、この魚たちを水族館に届けるだけだ。

 しかし、それも簡単な作業ではない。一刻も早く、魚を水族館の水槽に移さなければならない。ここからは、時間との勝負だ。

 小笠原諸島を出発してから、およそ28時間。ようやく、魚がすみだ水族館に到着した。

 少しでも魚を揺らさないよう、最新の注意を払いながら、職員総出で魚を水槽へと運んでいく。

 そして、小笠原出発から、およそ30時間。無事、1匹の魚も死なせることなく、「小笠原大水槽」に移すことができた。

 職員たちの奮闘により、迫力を増した水槽の前には、たくさんのお客さんがいた。

 来館者:「黄色いやつが、すごい群れになっていて面白かった」「たのしい」「遠い所からきたんだって。すごいね」

 柿崎さん:「苦労はするんですけど。苦労が報われる瞬間が、この大水槽に搬入した瞬間でした。今回搬入したことで、より小笠原の海を表現できたと思いますので。そういった思いをはせて、水槽を眺めてもらえたら」

■電気料金&餌代高騰で“苦渋の決断”

 電気料金などの高騰により、全国の水族館で値上げが相次いでいる。

 東京・豊島区の「サンシャイン水族館」は、3月18日から入館料が値上げとなる。大阪市の「海遊館」は、今月12日に入館料が改定された。

 電気料金などの高騰は、水族館の経営をどのように圧迫しているのか。香川県の「四国水族館」を取材した。

 四国水族館で影響が最も大きかったのが光熱費で、水温管理や濾過(ろか)装置などで電気を使うため、大きく響いたという。

 また、およそ400種類、1万4000の生き物のための餌代も高騰した。

 その結果、四国水族館では「施設維持費」が、去年と同じ時期のおよそ1.5倍に跳ね上がり、来月1日から入館料を大人200円、子ども100円を値上げするという苦渋の決断となった。

 四国水族館・管理課の山村優衣さんは「生き物に対して、節電はできません。すんでいた世界の水温で過ごし、良質なご飯を食べることで、健康に過ごしてもらいます。館内の温度を下げるなど、お客さんやスタッフに対しての節電をしましたが、入館料を上げざるを得ない状況になりました」と話す。

 今後も、さらなる電気料金の高騰などが予想されるが、山村さんは「四国水族館は、コロナ禍の2020年にオープンしました。その後、入館者は横ばいでしたが、去年の『GoToトラベル』以降、観光客が分散してしまい、入館者はやや減少しています。今のところは、この料金でやっていけますが、先のことは分からない状況です」と苦しい胸の内を語ってくれた。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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