【報ステ】日米で進む中国への備え「台湾有事で日本被害」報告書の意味と問われる外交(2023年1月12日)

【報ステ】日米で進む中国への備え「台湾有事で日本被害」報告書の意味と問われる外交(2023年1月12日)

【報ステ】日米で進む中国への備え「台湾有事で日本被害」報告書の意味と問われる外交(2023年1月12日)

台湾は12日、軍事演習を公開しました。赤い帽子の“敵軍”に占領された基地を奪い返すという具体的な場面を想定したものです。

台湾はここ最近、こうした実戦形式の演習により力を入れています。

来年から兵役義務期間を4カ月から1年にするのも、中国の台湾侵攻が「決して遠い話でもない」という警戒感の表です。

台湾市民:「台湾国民や軍隊が十分な実力を養い、敵の戦意を喪失させるべきです」

台湾市民:「私たちは戦争が起きる危機に直面しています。兵役の延長は、国の良いかじ切りだと思います。

“台湾有事に備える”これは、現在のアジア情勢において避けられない問題です。

13日、ホワイトハウスで日米首脳会談を行う岸田総理。先月、安全保障の大転換に舵を切った日本にとって、同盟国アメリカとすり合わせを行う重要な機会になります。

11日に先立って行われた日米の外交・防衛トップによる会合『日米2+2』。主なテーマは、中国にどう対抗していくかでした。

ブリンケン国務長官:「中国は、アメリカと同盟国に共通する最大の戦略的課題です」

林外務大臣:「共同声明は、戦略的競争の新たな時代における同盟ビジョンを提示。日米同盟を絶えず強化してまいりたい」

日米の共同発表では、中国を名指しで「国際社会全体における最大の戦略的挑戦」だと明記したうえで、“日米同盟の現代化”が必要だと説いています。

“現代化”の意味するもの…。例えば、日本が保有を決めた「反撃能力」を運用するために日米で連携していくことや、宇宙空間でも日米安保が発動されることを確認。さらには、平時から両国の施設を共同利用できるよう、協議を行っていくことも書かれています。

アメリカ軍の防衛体制の刷新も決まりました。沖縄に駐留する海兵隊を再編成し、対艦ミサイルなどを備えた『海兵沿岸連隊』として新たに配備することになります。

機動力と即応性をより高めることで、危機が迫る離島にいち早く上陸し、敵の進出を食い止めるという役割を担うとみられます。

中国の台湾侵攻に備えた対応部隊であることは間違いありません。

なぜ日米とも、台湾有事への備えが求められるのか。その答えの1つがこれかもしれません。

最近、ワシントンのシンクタンクが公開した、台湾有事のシミュレーション。2026年に中国が侵攻した場合に想定されるシナリオと、それに伴う被害です。

CSIS(戦略国際問題研究所)のシミュレーション:「上陸した中国軍は主要都市を攻略できず、10日以内に物資が尽きた。中国が日本の基地やアメリカ軍の艦船を攻撃しても、この結果を変えることはできない。ただ、この防衛には高い代償を伴う。全てのシナリオにおいて、アメリカ軍は2隻の米空母や、駆逐艦などの主要艦船を最大20隻失うことになる。自衛隊の被害はさらに深刻である。海上自衛隊の全戦力が、中国のミサイルの射程に入るため、より大きな被害を受けた」

平均で、航空機が112機に、艦船が26隻。可能性が高いシナリオで算出された、日本側の被害です。

日本単独でも、防衛能力の増強が加速しています。鹿児島県の離島・馬毛島で12日、新たな自衛隊基地の建設が始まりました。

防衛省によりますと、工期はおおむね4年とされていますが、滑走路などは先行して完成させ、アメリカ軍の訓練に活用する予定です。

【「台湾有事で日本にも甚大な被害」米研究所がシミュレーション】

CSISのシミュレーションは、2026年に中国が台湾に侵攻するという仮定で行われました。

条件を変えて24通りのシミュレーションが行われ、侵攻当初はいずれも、中国軍が数時間で台湾の海軍・空軍の大半を破壊。台湾を包囲して、数万人の兵士が上陸する形で始まるとしています。

その後、大半のシナリオにおいては、アメリカ・日本の支援で、台湾が中国軍を撃退するとしています。

その一方で、代償も大きくなるようです。

アメリカ軍は、沖縄の嘉手納基地や山口の岩国基地、東京の横田基地、青森の三沢基地から戦力を展開。これに対し、中国軍は巡航ミサイルなどで、日本にあるアメリカ軍基地や自衛隊施設を攻撃。結果として、日米両国で数十隻の艦船、数百機の航空機、数千人の隊員を失うだろうとしています。

◆防衛省防衛研究所・高橋杉雄さんに聞きます。

(Q.アメリカ軍基地がある日本も攻撃対象になるという見方について、どう考えていますか?)

日米シンクタンクの専門家はおおむね、そういう可能性があるとみています。

それを決めるのは中国ですが、台湾を奪うにあたっては、周辺の飛行場や港湾を潰す必要があります。

日本に上陸はしないまでも、ミサイルで無力化したうえで、台湾に上陸するのではないかというのがコンセンサスです。

(Q.日本が攻撃された場合、民間人も犠牲になる懸念があると思いますが、いかがですか?)

中国側も進んだ技術の兵器を持っていて、恐らく軍事目標を中心に攻撃するので、例えばウクライナで起きているような都市爆撃は起こらないと思います。

第2次世界大戦のような形での大規模な民間人の被害者は、恐らく出ないと考えられます。ただ、ゼロではありません。

ただ、戦争になると失うものの方が多いので、民間・都市が攻撃されないとしても、戦争を抑止することがとにかく重要です。

(Q.2+2でも日米の連携強化が確認されましたが、中身をどう評価しますか?)

今回の連携強化に書かれていることと、書かれていないことがあります。

日米防衛協力の指針と呼ばれる、ガイドラインの見直しをするとは書かれていません。

そういったところから考えると、中長期的に同盟を強化するというよりも、短期的に抑止力を強化することを重視していると。

今あるガイドラインに基づいて、共同対処計画を詰めていくことが重要であると、恐らく考えたのではないかと思います。

逆の言い方をすると、それだけ台湾有事に切迫感がある。今とにかく短期的に対処能力を高めていく必要があると考えていると分析できます。

(Q.中国政府もリスクを感じていると思いますか?)

特にこの戦争は、中国にとって始めたら負けられない戦争になります。

負けてしまったら、中国共産党の統治の正当性そのものが突き崩されかねません。

そのため、侵攻の判断は非常に慎重になると思います。

中国が侵攻を判断した時は、勝てると思った時です。周辺の軍事バランスは中国に有利になってきているので、5年前や10年前と比べると勝てると考える可能性は増しています。

中国に「今戦えば勝てる」と思わせないように、抑止力を強化していくことが重要だと思います。

(Q.台湾を名実ともに統一することが、習主席の根源的な願いとされています。政治的な理由でも、侵攻のリスクがあると考えられますか?)

台湾や日本に対する、最近の中国の行動が、そういう不安感を捨てきれなくしています。

また、ロシアとウクライナの戦争で、一見不合理に見える政策判断が起こり得ることが分かりました。

そういう意味では“最悪のシナリオ”に備えなければいけない状況にあります。

(Q.岸田総理は9~13日にかけて、数多くの首脳と会談します。安全保障的にみて、西側諸国と会談をする意味合いをどう評価しますか?

ロシアとウクライナの戦争でも明らかになりましたが、アジアとヨーロッパの安全保障は切り離せません。

特に民主主義・民主的な価値を共有する国々にとって、世界が居心地の良い環境であり続けるためには、日米欧の協力が不可欠です。

中国やロシアといった挑戦者についても、日米欧の共通認識が深まっているので、具体的にどういうことをしていくのか。

ロシアとウクライナの戦争と同じことを、アジアでも繰り返さないことに向けた協力を進めていく段階に入っていると思います。

戦争の抑止が破られる時は、勝てると思った時です。勝てない戦争をわざわざ始める国はありません。

中国は、台湾だけが相手なら勝てると思っています。ところが、日米欧が来るとなると、なかなか勝てないと考えるでしょう。

そのように、勝てないと思わせることで、戦争を抑止する。戦争が一度始まってしまうと、終わらせるのも大変です。膨大な被害が出ます。

そのため、今はとにかく、戦争を始めさせないためにすべての努力を費やすべき時期だと感じます。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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