【解説】古川聡宇宙飛行士が謝罪 JAXAの“不正研究”とは?「“Trust, but verify”が不足していた」|TBS NEWS DIG
まず、古川氏がどんな人物なのか見ていきます。
【古川聡 宇宙飛行士(58)】
・神奈川 横浜市生まれ
・子どものころの夢は「ウルトラセブン」
・東京大学医学部卒業 消化器外科の医師 1999年ごろから宇宙を志す
・2011年宇宙へ 日本の実験棟「きぼう」で実験を行う
・2023年 再び宇宙へ行く予定だが
・異例 1月12日 謝罪会見
どんな研究でどんな不正があったのか。
■「閉鎖空間で8人生活」古川氏関与の研究とは?
上村彩子キャスター:
実験は2016年から2017年の合わせて5回、公募で選ばれた一般人が、ISS国際宇宙ステーションを模した空間閉鎖環境で2週間生活を行うというものです。
古川さんはこの研究の責任者に当たっていました。ストレスの蓄積を調べる研究です。
では、どんな環境だったのか、こちらで見ると細かい部屋にわかれています。
約50畳ほどの空間で、浴室であったりトイレであったり、あとは一人暮らしをキッチンや冷蔵庫レンジなど生活できるものは一通り揃っていますが、この空間に2週間8人でずっと生活するというものです。
プライベート空間も一応はあるんですが、唯一のものが寝そべるのがやっとというサイズなんですね。
ではこの研究をどう役立つのか。
科学ジャーナリストの寺門和夫さんによると
「閉鎖空間などのストレス環境で、人体にどれくらいの負荷がかかるのか。血液・尿の成分や面談などにより分析する研究」だということです。
今は民間人も宇宙に旅行に行ける時代となりましたが、宇宙空間での長期の生活に加え、避難所など密集した空間や、働きすぎている社員の労務管理などにも、この研究が役立つのではないかということなんですね。
日比麻音子キャスター:
未来のためだけではなく、現在のためにも重要な実験ということですよね。
パナソニック社外取締役・アース製薬社外取締役 ハロルド・ジョージ・メイ氏:
今すごく話題になっているのが、宇宙のどこまで人が行けるのかということ。その基礎研究の一つにあたるわけです。非常に大事な役割を果たしてますよね。
■「多忙だった」せいで、取り違え・ねつ造・改ざん
上村キャスター:
そのような大事な研究で、どんな不正があったのか。2017年、この実験に参加した8人全員分の血液サンプルの取り違えが発生しました。
今回の研究は、血液や尿の成分や、面談が大切な根幹となるので、本当に大きな取り違えでした。数値もおかしなものが出てしまいました。
JAXAが内部調査を行ったところ、大事な根幹だった「面談」において、研究者が2人しかいなかったのに「3人で面談しました」と偽ったり、診断結果を書き換えたり、捏造が少なくとも5件、改ざんも15件あったことが分かりました。
このような不正が行われた原因について、JAXAの担当者は「(研究者の)業務が多忙だったため」と話しています。
寺門さんは「研究の基本は“正確なデータの蓄積”。スキルや経験が不足していた」のではないかと話しています。
古川さん自身は捏造や不正を行っていたわけではなく、管理や監視する立場でしたが、こう語っています。
古川聡 宇宙飛行士
「業務において私がめざしている姿勢は『トラスト バット ベリファイ』(仲間を信頼するが念のため確認せよ)。本件では確認の部分が十分でなく信頼の気持ちが勝っていた」
JAXAによる処分について見てみましょう。
上村キャスター:
懲戒処分は「懲戒解雇」「停職」「減給」「戒告」四つの段階があります。今回実際にデータの改ざんなどを行っていた主任研究開発員は「停職14日」です。そして古川さんは書面による注意「戒告」を受けました。
さらには特定不正行為に当たるのではないかという指摘もありました。
特定不正行為とは、発表された研究結果の中にデータや調査結果等の捏造、改ざん、盗用などがあった場合、文部科学省に資金等の返還などの措置をとるというものです。
JAXAの担当者は「文科省と話をしたが、該当しないと認識。資金の返還について適切に対応したいと思う」と言ってます。
ホラン千秋キャスター:
これ発覚の経緯は何だったんでしょうか?
上村キャスター:
サンプルの取り違えで、おかしなデータが出たところ、内部で気づいた。公に出る前に内部で分かった。もしそのまま(気づかず研究結果を)発表したり公表したりしていたら、特定不正行為にあたる可能性もあったわけです。
古川さんの今年の宇宙飛行は、予定通りなのか。
2022年11月 JAXAの担当者
「研究実施責任者の資質と、宇宙飛行士の資質は異なると思う。今のところ(予定の変更は)考えていません」
古川聡宇宙飛行士
「(今回の研究不正と宇宙飛行士の資質について)共通する部分があると考えている。与えられた任務を行うことが自分の責務。信頼回復に努めたい」
ホランキャスター:
研究の分野においてこういった事例が、もし海外であった場合はどのような措置が取られることが多いんですか?
ハロルド・ジョージ・メイ氏:
データの捏造や改ざんはあってはな…(https://newsdig.tbs.co.jp/list/article?id=jnn-20230112-6061622)
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