【報ステ解説】「国内向け配慮」ロシア“クリスマス停戦”の思惑…欧米の支援にも変化(2023年1月6日)
ロシアのプーチン大統領が、36時間の停戦を一方的に呼び掛けました。
ロシア正教のクリスマスにあたるというのが理由ですが、ウクライナの人々は「侵略者の言葉など信用できない」と反発しています。
プーチン大統領の狙いはどこにあるのでしょうか。
【今なお続く空襲警報…ウクライナ市民は?】
◆ウクライナ西部リビウで取材する醍醐穣記者
(Q.そちらはどのような状況ですか?)
空襲警報がなり、一時、緊張感が走る場面もありました。
街中を行き来する人の数は多いですが、街の中心部では、先月末に亡くなった兵士の追悼式なども行われています。
連日、計画停電が行われていて、私がいる辺りも6日も午後5時~午後9時まで行われるということです。
それに備えて、軒先に発電機を置く商店もあります。
街中にいても戦時下だということを肌で感じます。
(Q.突然の一時停戦は、ウクライナで、どのように受け止められていますか?)
ウクライナでも「クリスマスを祝う」という方が非常に多くいます。
私の後ろにある教会でも、6日午後5時からクリスマスミサが行われるということです。
教会の方に話を聞くと「例年に比べて参列する人は減ってしまうだろう」と話していました。
例年だと、クリスマスマーケットが盛大に開かれ、皆で祝いますが、今年は空襲に備えて自粛となっています。
また、電力不足に備えて、街中を彩るイルミネーションも軒並み中止になっています。
街行く人に停戦について話を聞くと、「そんなものは信じられない」「ウクライナが勝利するまで戦い続ける」と口をそろえて皆さんが言いますが、その一方で「新年に加えて、毎年盛大に祝っていたクリスマスも祝えない」と肩を落として話す人もいました。
【国内批判かわす?プーチン大統領の狙い】
一時的な停戦は、今後の戦況にどう影響を与えるのでしょうか。
◆ロシアをはじめとする国際政治が専門の慶応義塾大学・廣瀬陽子教授
(Q.プーチン大統領が停戦を命じた狙いは何だと思いますか?)
軍事目的と政治目的があると思います。
軍事目的では、戦況が非常に悪化しているので、少し休ませて、できれば軍の再編成などをして、ムードを変える狙いがあると思います。
ただ、それにしては36時間は短すぎるので、政治目的、つまりロシア国内対策の方が大きいのではないかとも言われています。
遠征費用が高まっていて、国内のムードを変えると。
ロシア正教にとって、クリスマスは一家団らんをしたり、礼拝に行ったりする非常に大事な日です。
そういう日に休みを取るというのは、国内的に良い印象を与えると思います。
また、正教に対して信仰のあつい人というのは、プーチン大統領の支持層とかぶるところもあり、そうした支持層を固めたい狙いもあると思います。
(Q.一時停戦にウクライナは反発していて、ロシアが攻撃されるリスクもあると思いますが、どう秤にかけているのでしょうか?)
リスクもありますが、ロシアは新年早々、非常に大規模な攻撃を受けて、多くの兵士を損失していて、国内の批判を浴びています。
こうしたなかで、仮にウクライナが休戦中に攻撃をしてきたとしても「教徒として礼拝などに行く日に攻撃をしてくるウクライナは悪人だ」と、ロシア国民に植え付けることができます。
国内で、ウクライナに対する反感をもう一度高めることができれば、軍に対する不満をウクライナに振り向けることができるので、戦闘継続にとって良い条件を作ることができます。
プーチン大統領にとって、どちらに転んでも、ロシア国内をまとめる材料に使うことができます。
【欧米の軍事支援に“変化”背景は】
ロシアを取り巻く国際情勢にも変化が見られます。
西側諸国は、ウクライナへの軍事支援について、これまでロシアを刺激しないように供与を見合わせてきた「歩兵先頭車」や「装甲車」を支援することを表明しました。
ウクライナ国防省のブダノフ情報局長は、アメリカメディアの取材に対して「春に大規模攻撃を計画している」と話しています。
◆慶応義塾大学・廣瀬陽子教授
(Q.西側諸国の支援もロシアへの配慮がなくなったように感じますが、どうみますか?)
これまで欧米は、ロシアをなるべく刺激しないように“防御重視”の支援をしてきました。
ここにきて“攻撃が主力”となる支援をし始めたということで、1段階フェーズが変わったと言えます。
西側諸国の方も状況が難しくなってきています。
例えばエネルギー価格の高騰などで、各国が非常に苦しんでいて、政治の乱れも生じてきています。
西側諸国が一丸となってウクライナを支えていくうえで、戦争の終わりを早めていくことも重要になってきたと思います。
(Q.今後、プーチン大統領はどう出てくると予想しますか?)
プーチン大統領は引くに引けない状況だと思います。
ウクライナも新しい兵器を導入して、ますます強くなっていくことが考えられます。
他方で、ロシアも去年9月に動員した兵士を前線に送り出して、激しい戦闘を展開する可能性もあります。
恐らく、どちらも切り札を持たないような戦いになってくると思います。
そうなると、長期化してくる可能性が高いと思います。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
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