「“食”の安全保障」世界各国が奔走する食料確保 食料自給率38%の日本は?【風をよむ】サンデーモーニング|TBS NEWS DIG

「“食”の安全保障」世界各国が奔走する食料確保 食料自給率38%の日本は?【風をよむ】サンデーモーニング|TBS NEWS DIG

「“食”の安全保障」世界各国が奔走する食料確保 食料自給率38%の日本は?【風をよむ】サンデーモーニング|TBS NEWS DIG

中国・習近平主席が強く訴える「食料安全保障」。それは、日本も他人事ではありません。

■中国が進める「食料安全保障」とは?

10月22日、閉幕した中国共産党大会。習近平国家主席への、より一層の権力集中が話題となったこの大会で、こんな発言がありました…。

習近平主席「食料安全保障の基盤を全方位で固め、中国人の食料を自らの手でしっかりと確保する」

習主席が訴えたのは、「食料を巡る安全保障の強化」。その発言の背景にあったのは、中国の食料自給率の低下です。

14億という巨大な人口を抱え、食料需要が増え続ける中国。かつて100%近かった食料自給率は近年急激に下落し、最新データで65.8%。中間層拡大による輸入量の増加が大きな要因です。

食料が海外頼みとなることへの懸念。そうした危機感からか、2022年4月に、習主席自ら足を運び訪れたのは、中国南部・海南島にある「タネの研究所」でした。

習近平主席「我々の手でタネをしっかりと握ってこそ、中国人の茶碗、中国の食料を確保することができる」

国産のタネを品種改良し、野菜などの収穫量をより一層上げる必要があると力説。

タネの品種改良会社の担当者「品種改良の目的は、『他人に自分の首を絞められないこと』です」

中国は、野菜のタネの90%以上を、西側からの輸入に頼っており、その脱却を図っているのです。

中国が真剣に取り組み始めた「食料安全保障」は、国際社会にとっても重要な課題です。

■ウクライナ侵攻がもたらした食料危機

それを強く認識させたのは、ロシアによるウクライナ侵攻。

ロシアとウクライナは世界有数の小麦などの食料輸出大国ですが、ロシア軍が黒海沿岸の港を封鎖したために輸出がとまり、世界的に小麦などの価格が高騰。

この状況に「国連世界食糧計画」のトップは…

WFP・ビーズリー事務局長
「ロシアの行いは、《食料安全保障》への“宣戦布告”だ」

輸入に頼るアフリカ諸国などでは、一時およそ5千万人が深刻な飢餓に見舞われました。

こうした状況にもかかわらず、ロシアのメドベージェフ前大統領は、食料の重要性を逆手にとり、侵攻に利用しているかのような言葉をSNS上に書き込みました。

「我々の食料は武器である。静かだが、強力な武器だー」

さらに、ウクライナ問題に加え、近年の温暖化による異常気象が引き起こす洪水や干ばつが、世界の食糧生産に深刻な影響を及ぼしています。

その結果、自国の食料確保を優先するため、小麦の生産量で世界2位のインドをはじめ、22か国が今も食物の輸出規制を行っています。

■日本の「食料安全保障」の現状は?

世界各国が懸命に食料確保に追われる「食料安全保障」。

日本の場合、食料自給率はG7の中でも突出して低く、今年の発表では38%。

この数字は、20年ほど、おおむね横ばい状態が続いており、一向に改善される気配が見えません。専門家は…

資源・食糧問題研究 柴田明夫代表
「政府の危機感の欠如があった。経済合理性だけを考えれば、安い食料を海外からどんどん輸入した方がいい、いくらでもお金を出せば買えるという発想になる。そこにコロナパンデミック、戦争、異常気象の問題で、もはや海外から必要なものをいくらでも持ってくる時代ではなくなった」

■“持たざる国”日本の未来は?

現在の歴史的円安の影響も深刻です。輸入食材の価格高騰に加え、中国を中心とする海外業者に「買い負け」し、仕入れできない状況が生まれています。

また農業生産に欠かせない肥料や、家畜の飼料用トウモロコシも、99%以上を輸入に頼っており、円安の影響は農家や畜産家を直撃しています。

さらに、食料安全保障の基本となる「有事の備え」についても、日本の備えは万全とはいえません。

例えば、日本の政府が備蓄しているコメはおよそ100万トン。これは20日で底をつく量と試算され、これに対し、中国はおよそ半年分を備蓄しているといいます。

資源・食糧問題研究所 柴田明夫代表
「日本も、改めて、国内での食料生産、あるいは備蓄を厚くするとか、そういう方向に転換せざるを得ない。しかし日本は農業の弱体化が
深刻な形で進んでる。農業の就業人口、農地が減っている。その面ではもう手遅れになりかねない、待ったなしの状況になっている」

今、日本の農業生産を高めようにも、農業従事者は10年前に比べ4割減少、また65歳以上が7割を占めているのです。
 
危機的状況の中、日本にも真剣な「食料安全保障」への取り組みが求められています。

(「サンデーモーニング」2022年10月30日放送より)

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