「無意味ではないが“対症療法”だ」39兆円『総合経済対策』効果は?専門家に聞く(2022年10月28日)
岸田総理は28日“物価高”に対応するための新たな経済対策を発表しました。
財政支出は39兆円に及びますが、岸田総理は「来年にかけて消費者物価を1.2%以上引き下げる」と、その意義を強調しました。
岸田総理:「物価対策と景気対策を一体として行い、国民の暮らし・雇用・事業を守るとともに、未来に向けて経済を強くしていきます。今後は、この経済対策をできるだけ早く、お手元にお届けするよう、補正予算の編成を急ぎます」
埼玉県内でキクラゲを栽培する、清水雄一郎さん。キクラゲは寒さに弱く、温度管理のための電気代はかさむ一方です。
日栄交通・清水雄一郎常務:「うちは暖房を電気使っているので、結構もともと(電気代が)かかる。去年は冬場でも5万円ぐらいで済んだが、今年は5万円じゃまったく…」
高騰が続く、電気料金。政府の経済対策では、来年の1月から、家庭向けの料金を2割程度引き下げるとしていて、事業者も値下げの対象になります。
日栄交通・清水雄一郎常務:「もともと使う量が多いので、それが下がればだいぶ助かる」
ただ、うれしいばかりではありません。実は、タクシーが本業のこの会社。休憩室の給湯器やコンロに使う、ガス代の上昇も打撃となっています。
日栄交通・清水雄一郎常務:「(Q.都市ガスかプロパンガスか?)プロパンガスです。(Q.ガス代も馬鹿にならない?)少しずつ上がってますからね」
政府は今回、都市ガスは値下げしますが、プロパンガスなどのLPガスは直接支援する対象にはしていません。
今は国内の2700万世帯が都市ガスですが、プロパンガスなどのLPガスも2200万世帯に及んでいます。
日栄交通・清水雄一郎常務:「地方は、まだプロパンガスを使っている方もいるだろうし、何か理由があるのかなって、不平等感はすごく感じた」
経済対策の柱はもう1つ。政府は、妊娠・出産を支援するため、今年4月以降に赤ちゃんが生まれた世帯を対象に、10万円相当を支給する方針です。
子ども食堂を訪れたお母さんに聞きました。
4歳と2歳の母親(30代):「もともと出産・妊娠を考えている人はプラスでありがたいと思うんですけど、
例えばお金で困っている人が『10万円もらえるから産もう』となるかは、10万円だけだと…もっと子育てにはかかるから。それでは少子高齢化の改善策にはならないのかな」
経済対策の裏付けとなる補正予算案は29兆6000億円。その大半が赤字国債でまかなわれます。
ただ、その規模をめぐり、自民党内からはこんな声も聞かれました。
自民党・世耕弘成参院幹事長:「全体の規模感でいけば、もう一歩踏み込んでほしかったなと。もっと低い額が出ていた。ギリギリのところまで引き上げる努力を、政権トップとしてやっていただいた」
野党からは…。
立憲民主党・泉健太代表:「言い値で予算の総額が決まっていく“言い値予算”ですね。ひどいもんだと思います。これだけ規模が大きいにもかかわらず、例えば我々が言ってきているような、節電や省エネの投資が格段に増えたわけではない。もっと構造転換に資するような予算は増やしていくべきだ」
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総合経済対策は、4つの柱で構成されています。
【物価高騰・賃上げへの取り組み】
▼電気・都市ガス料金の負担を、一般的な家庭で総額4万5000円軽減。
▼ガソリン補助金を継続。
▼中小企業の賃上げ支援を大幅拡充・
【円安を活かした地域の“稼ぐ力”の回復】
▼訪日外国人旅行消費額の年間5兆円超の目標達成へ政策パッケージの推進
▼農林水産物・食品輸出強化
【新しい資本主義の加速】
▼妊娠・出産時に合計10万円相当を支援。
▼“リスキング”の支援強化
【国民の安全・安心の確保】
▼送迎用バスの安全装置改修支援
▼悪徳商法等の対策強化
今回の経済対策について、みずほ証券のチーフエコノミスト・小林俊介さんは、こう指摘します。
小林俊介さん:「“根治療法”というより“対症療法”の印象。補助金政策が無意味というわけではないが、長期的には財政赤字を増税で賄うことになるので、長く続ける政策ではない」
一方で、日本は“来年の経済見通しがまだ明るい国”だといいます。
アメリカはインフレと金融引き締め、ヨーロッパはロシアによるウクライナ侵攻、中国はゼロ・コロナ政策と続けていて、各国、経済見通しが大幅下方修正を余儀なくされるなか、日本は直接的な影響が少ない方だということです。
そのため、感染対策を取りながらもさらに経済活動を促し、賃上げなどの“根治治療”へ早急にシフトする必要があるとしています。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
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