「渋谷TOEI」閉館へ 69年の歴史に幕…開業時は大行列も コロナで打撃「客が戻らず」(2022年10月20日)

「渋谷TOEI」閉館へ 69年の歴史に幕…開業時は大行列も コロナで打撃「客が戻らず」(2022年10月20日)

「渋谷TOEI」閉館へ 69年の歴史に幕…開業時は大行列も コロナで打撃「客が戻らず」(2022年10月20日)

 東京・渋谷のシンボルがまた一つ、69年の歴史に幕を下ろすことになりました。幅広い世代に愛され続けた映画館の突然の発表に、悲しみの声が上がっています。

■好立地も“映画に行列”消えた

 東映:「12月4日の営業をもちまして、閉館致します。永らく親しまれた69年の歴史に、ピリオドを打ちます。映画ファンの皆様、関係者の皆様に、従業員一同心より御礼申し上げます」

 閉館が決まったのは、若者の街・渋谷の中心にある映画館「渋谷TOEI」です。

 突然の発表に、19日に劇場を訪れていた人からは驚きの声が上がりました。

 女性利用客(20代):「きょう決まったんですか?」「(Q.聞いてみて、いかがですか?)びっくり、びっくり、寂しい。何で閉まっちゃうんですか?」

 男性利用客(19):「ここでしかやっていない映画もあったみたいで。渋谷はよく来るので、悲しいなっていうのはありますね」

 渋谷駅から目と鼻の先、歩いて1分ほどの場所にある、この映画館。これだけ好立地にもかかわらず、どうして、閉館になってしまったのでしょうか?

 人気作を観るには、映画館の前で並ぶしかなかった時代。2000年に公開された映画「バトル・ロワイアル」がヒットした際、渋谷TOEIなどの映画館には、多くの映画ファンが詰め掛けました。

 その後も、ヒーロー戦隊ものやアニメ作品など、数多くの映画を上映した渋谷TOEI。幅広い世代に愛されてきました。

■評論家「ネット配信に押された」

 映画評論家・石津文子さん:「びっくり。全然知らなかったので」「(Q.閉館のお知らせと貼り紙がある)こんな駅前で、あって当たり前の感じがしていたので」

 こう話すのは、映画評論家の石津文子さん。現在の映画業界の状況について、こう話します。

 石津さん:「今年もトップガン マーベリックが大ヒットしていたし、ワンピースもすごかったし、大規模な映画がすごく当たるんですけど。中規模な映画、ちょっとしたデートで見るようなラブコメディーとかが、(客が)入らなくなってる」

 2003年、渋谷最大の映画館と呼ばれていた「パンテオン」が閉館。去年は、日本一小さな映画館として、ファンに親しまれてきた「アップリンク」が、26年の歴史に幕を下ろしました。

 石津さん:「(ネット)配信で見るようになっちゃってるというのは、正直あるのかなと思うんですけど。渋谷が映画を観に来る街だった時代って、確実にあったんですよね。映画館に行く何か動機付けになるような、個性的な映画館ができれば、また違うんじゃないかなと思います」

 渋谷が映画を見に来る街だった時代。渋谷TOEIが開業した、69年前の写真を入手。そこには、上映を楽しみに劇場までやってきた人々の姿が写っていました。

■“街の発展”見守り続け69年

 今年12月に、69年の歴史に幕を下ろすことが決まった、渋谷の映画館「渋谷TOEI」。

 入手した開業当時の写真です。屋上のバルーンや旗が風でなびくなか、1階には開業を祝う、数えきれないほどの花輪が並んでいました。

 この日、上映されていたとみられるのは、邪馬台国の女王・卑弥呼の人生を描いた東映初のカラー映画「日輪」。奥には、客の長い行列が確認できます。

 当時は、工場が立ち並んでいた渋谷。その後、東京オリンピック開催に向けて、急ピッチで開発が進められます。

 1960年代後半には、百貨店が相次いでオープン。1970年代に「渋谷109」が誕生すると、渋谷は一気に若者の街として、発展を遂げていきます。

 1990年代にはクラブが流行したほか、コギャルブームが到来。渋谷センター街には、ミニスカートに厚底ブーツの「アムラー」と呼ばれる女性たちの姿がありました。

 さらに、肌を黒く焼いて派手なメイクをするガングロファッションの女性が注目を集め、メディアをにぎわせました。

 その後も、サッカーのワールドカップやハロウィーンの際には、街に多くの若者が集まるようになりました。

 警察官:「ただいま、センター街付近は、大勢の方が立ち止まっているため、通行できません」

■コロナで打撃「客が戻らず」

 一方で、再開発も進められてきました。駅周辺には、高層ビルを建設するための工事車両が目立ちます。

 渋谷駅周辺は再開発が進み、47階建てのスクランブルスクエアなど、新しい高層ビルも建てられています。そんななか、この映画館は、この街で生き残り続けてきました。

 およそ70年に渡り、移りゆく街の様子を見守り続けてきた渋谷TOEI。今回、閉館を決めた理由について、劇場の担当者は次のように話します。

 東映・内藤恵広報室長代理:「当初は、緊急事態宣言で外出できなくなってしまいましたし。その後も、満席で入れることができないので。(客席が)50%までしか入れないというのは、かなりの痛手だった」

 去年、新型コロナが流行した際、東京都は独自の対策として、映画館に休業や座席を半分にするよう、協力を要請。ところが、要請が解除された後も、お客さんは、元に戻らなかったといいます。

 内藤広報室長代理:「これまで渋谷TOEIを愛して下さいまして、本当にありがとうございました。閉館は12月4日になるんですけど、それまでの間にぜひ、足を運んで頂けましたら大変うれしく思います。よろしくお願い致します」

(「グッド!モーニング」2022年10月20日放送分より)
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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