バス横転 路面のタイヤ痕から新たな事実 なぜ若手運転手が「初めて」のコースを(2022年10月14日)

バス横転 路面のタイヤ痕から新たな事実 なぜ若手運転手が「初めて」のコースを(2022年10月14日)

バス横転 路面のタイヤ痕から新たな事実 なぜ若手運転手が「初めて」のコースを(2022年10月14日)

 なぜ事故は起きてしまったのか。運転していた野口容疑者はこの道を走るのは初めてだったといいます。現場に残されたタイヤ痕から新たな事実も徐々に分かってきました。

 逮捕された26歳のバスの運転手・野口祐太容疑者はこの道を走るのが初めてだったといいます。そして、路面に残された黒い跡について新たな事実も分かりました。

 捜査関係者によると、タイヤ跡がまっすぐ斜面に向かって付いていたことからブレーキが弱くかかっていた可能性があるということです。

 しかし、野口容疑者は「ブレーキがきかなくなった」と話しています。なぜ食い違いが生じているのでしょうか。14日も捜査が続けられています。

 富士山を巡るバスツアーが悲劇に変わったのは13日正午前のことでした。小山町の市街地から富士山須走口をつなぐ県道、「ふじあざみライン」で36人が乗ったバスが横転。1人が死亡、35人がけがをする大きな事故となりました。

 この事故で亡くなったのは埼玉県入間市に住む枝川恵美子さんです。窓がすべてなくなり、損傷が激しいバスの右側に乗っていたといいます。

 枝川さんの夫は取材に応じ、今の心境をこう語りました。

 枝川恵美子さんの夫:「まだ震えが止まらなくて受け止められない。朝から入間のバス停まで見送ってバスに乗る姿を見た。自分は昼寝をしていて、起きてからテレビで事故を知った。何度も妻に電話をしたがつながらなかった」

 今年結婚50周年を迎え、夫婦2人で旅行の計画もしていたといいます。

 枝川恵美子さんの夫:「妻は明るい人で今回の旅行も妻が計画して友達を連れて行った。昔働いていた職場の友達と一緒に今回の旅行に行っていた。結婚してから50年で、今度記念の旅行に行こうと2人で話していた」

 枝川さんの遺族は14日朝、遺体が安置されている静岡県に向かいました。

 事故発生直後から24時間以上続いた交通規制は午後1時に解除されました。

 事故が起きたバスツアーは今週始まったばかりの全国旅行支援の対象となっていました。観光需要が喚起されるなかの大きな事故。原因究明が急がれます。

 ブルーシートの隙間からは右に傾いたままのタイヤが確認できました。捜査員が入念に調べています。

 警察は過失運転致死の疑いで埼玉県のバスの運行会社「美杉観光バス」へ家宅捜索に入りました。

 およそ3時間半に及ぶ捜索で関係資料を押収。バスの運行状況や安全管理体制などについて調べを進めるといいます。

 国交省は今回の事故が“三ツ星事業者”が起こした初めての死亡事故だということを明かしました。

 斉藤国交大臣:「この会社は日本バス協会の貸し切りバス事業者、安全性評価認定制度における三つ星、一番ランクが高い三つ星の事業者で、乗客がお亡くなりになる事故を起こしたのは初めてと聞いている」

 なぜ安全性の評価が高いバス会社が事故を起こしたのでしょうか。

 26歳の運転手、野口祐太容疑者は過失運転致傷の疑いで現行犯逮捕されています。野口容疑者についてバスの運行会社の社長は…。

 美杉観光バス・吉田典弘社長:「私の聞く中では真面目に運行する乗務員と聞いている」

 トラック運送会社に勤めていたという野口容疑者。美杉観光バスに入社したのはおよそ1年3カ月前だったといいます。

 美杉観光バス・吉田典弘社長:「入社して小さい車、送迎等の仕事、当然研修して、そういう難しくない仕事から乗務させて、今年の春ぐらいから観光バスに乗務が多くなった乗務員です」「(Q.今回のルートの運転経験はあったか?)それは今ちょっとわかりません」

 その後、関東運輸局の監査で野口容疑者が今回のルートを運転するのは初めてだったことが明らかになりました。

 なぜ若手の運転手が今まで通ったことがない道を運転することになったのでしょうか。専門家はバス会社の契約形態が関係していると指摘してます。

 高速バスマーケティング研究所・成定竜一代表:「ツアーを企画する旅行会社と、運行を請け負う貸し切りバス会社が年間契約で旅行会社はいろんなツアーを企画します。日によって曜日によっていろんな目的地にツアーを出す」

 旅行会社からツアーを請け負っているため、バス会社は行き先を選ぶことができないのです。だからバス業界では初めてのルートを走ることは珍しいことではないといいます。

 高速バスマーケティング研究所・成定竜一代表:「貸し切りバスの仕事はいろんな仕事がある。今回のように旅行会社のツアーもあれば、遠足、修学旅行もあれば、冠婚葬祭の式場に参列者を連れて行くこともある。毎日仕事は違う。初めての道を走るのは貸し切りバスの運転手としては普通。観光バスに乗り始めてまだ数カ月で、1人であのコースはちょっとチャレンジしすぎのような印象はある。ただ、それがだめなことかというと、本人のスキルを見ないとわからないが、重要なことはバス会社の運行管理者が、仕事の内容と自分の所の運転手の顔ぶれを見極めながら、この運転手ならこの仕事をこなせるだろうと判断して割り当てたか」

 山が多い長野県のバス会社は初めてのルートを走る前に丁寧な研修を行っているといいます。

 アルピコ交通安全マネジメント推進室・檀原順志さん:「(市内など)路線バスの経験をさせ、1~2年くらい経験を積んだ上で観光路線にステップアップさせる。観光地を結ぶ路線バスは山道を走ることが多いのでそうした山岳路線を運行する」

 さらに山道を走る前に教習も行っていました。

 アルピコ交通安全マネジメント推進室・檀原順志さん:「ベテランの運転手から運転のコツ、マニュアルが作成されていて、教えて、ハンドルを持ってもらう。登り下りが多いので、ブレーキの使い方などの教習は市内である程度経験を積んでいるが(山岳教習で)おさらいをしている」

 入社して1年3カ月だった野口容疑者は、どれくらいの経験を積み今回のルートを運転していたのでしょうか。容疑者の父親は取材に対し「お亡くなりになった方には本当に申し訳ない」と話しています。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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