絶景紅葉スポットに「廃虚ホテル」2軒 費用合わせて10億円…撤去への“2つの壁”【羽鳥慎一 モーニングショー】(2022年9月27日)

絶景紅葉スポットに「廃虚ホテル」2軒 費用合わせて10億円…撤去への“2つの壁”【羽鳥慎一 モーニングショー】(2022年9月27日)

絶景紅葉スポットに「廃虚ホテル」2軒 費用合わせて10億円…撤去への“2つの壁”【羽鳥慎一 モーニングショー】(2022年9月27日)

 紅葉で人気の北海道の「天人峡」では、ホテルが廃虚化しています。露天風呂だった場所は、雑草が生い茂っているということです。この地域では2件のホテルが廃虚化していて、観光客から「怖い」という声も出ています。

■紅葉名所「天人峡」に“廃虚ホテル”

 日本で1番早く紅葉が楽しめるという北海道・旭岳。その近郊に位置し、絶景の紅葉スポットとしても知られる「天人峡温泉」。

 美しい渓谷には日本で2番目の落差270メートルを誇る「羽衣の滝」があります。日本の滝100選にも選ばれている名瀑です。

 まもなく紅葉シーズンが始まろうとするなか…。

 札幌から来た観光客:「景観的には、ちょっと怖い部分もある」
 東京から来た観光客:「どうにかなるんだったら、どうにかしてほしいですね」

 絶景を台無しにするもの、それは廃墟ホテルです。ドローンを使って上から見ると、露天風呂だった場所は雑草が生い茂り、宿泊客がくつろいだ客室は天井の照明が傾き、布団は敷いたまま。

 この廃墟ホテルを巡り、今、大きな問題が…。

 東川町・松岡市郎町長:「(撤去に)10億円以上の投資が必要だろう。とにかくマイナスのイメージは非常に大きい」

■廃虚ホテル“2軒も”…壁崩れ荒廃

 北海道旭川近郊、大雪山国立公園にある渓谷「天人峡」。目を見張るような絶景を一目見ようと、全国から多くの観光客がやって来ます。

 駐車場から「羽衣の滝」の展望台までは750メートル。川沿いの道を歩いて行くのですが、絶景スポットには似つかわしくないカラスの姿。

 その先に建つのは、廃虚と化したホテル。室内は荒れ果て、入り口に置かれた木彫りの人形は、出迎える人もなく寂しげにたたずんでいます。

 さらに橋を渡って進んでいくと、先ほどのホテルから100メートルほど先。また廃虚と化したホテルがありました。

 天井は、はがれ落ち、割れたガラスの破片が飛び散り危険な状態のため「頭上注意」の看板が設置されています。

 さらに、ハチの巣もあります。

 観光客は美しい「羽衣の滝」を訪れる前に、廃虚となったホテルの前を通らなければなりません。

 神奈川から来た観光客:「さびれた感じがしますよね。せっかく(滝は)きれいなのに、もったいない」「マイナスなイメージしかないと思いますね。なので、早急に対応してほしい」

 2軒の廃虚ホテル。ドローン撮影によって、内部の様子が明らかになりました。

 廃虚ホテルは、川を挟んで建っています。下流にあるのが、天人峡グランドホテルです。壁面は崩れ落ち、鉄骨がむき出しに。屋根の一部は、今にも崩れ落ちそうになっています。

 上流にあるのが、明治33年創業の老舗ホテル「天人閣」です。こちらは放置されてから4年。すでに屋根は朽ち、一部は崩落寸前。外壁は色あせ、客室の障子ははがれています。

■7年前に宿泊「お気の毒だなと…」

 20年ほど前に「天人閣」を取材した際の映像では、外壁は色あせておらず、入り口もきれいな状態が保たれていましたが、今では雑草が至る所に伸びていて、看板は薄汚れ、入り口の自動ドアは入れないよう板で覆われてしまっています。

 「天人閣」の温泉の特徴をうたう看板は、ひしゃげてしまっています。

 7年前「天人閣」に宿泊:「大手のツアーバスの方が来たり。昔は、すごく栄えていた場所という印象」

 こう話すのは、7年前に天人閣に宿泊した女性。

 当時、建物の2階には、宿泊客がくつろげるようにソファーが並べられ、窓際にもテーブルや椅子が置かれています。

 7年前「天人閣」に宿泊:「駐車場(1階)からエスカレーターで、2階に上がっていく感じで。すごく昔に、資金を投入して作られた印象」

 創業100年以上の老舗ホテルは、7年の歳月でみるみるうちに廃虚と化し、2階部分をのぞくと、窓越しにテーブルや椅子が放置され、エスカレーターも止まったままの状態。床は誰かに荒らされたかのようにゴミが散乱し、消火器も2本転がっています。フロント横にあったものと思われる自動販売機も倒れてしまっています。

 客室には天人峡の紅葉を思わせるデザインの布団がきれいに並べられていますが、現在、部屋の窓は開け放たれ、室内にはよく似たデザインの布団が敷かれたままになっていて、奥のベッドの布団には丁寧にシーツまで掛けられています。

 このホテル自慢の露天風呂は…。

 7年前「天人閣」に宿泊:「目の前に柱状節理、岩が見えて、すごく雰囲気がある露天風呂だった」

 大自然が広がる露天風呂からの景色と開放感は、抜群だったといいます。

 しかし、今では、うっそうと雑草が生い茂り、露天風呂は見る影もなく、隣にあった内湯も窓ガラスが割れ、荒廃しています。

 7年前「天人閣」に宿泊:「本当に再生しようがないくらいまで、朽ちてしまっている。こんなふうになって、お気の毒だなと…」

■“肝試し”“落書き”安全面も不安

 廃虚と化したホテルの問題は、景観を損なうだけではありません。

 この地域で唯一、営業するホテルの担当者は、次のように話します。

 御やど しきしま荘・水野彰人専務取締役:「肝試しだとか、廃虚巡りだとかでいらっしゃる方が結構いてですね。よく警察沙汰になったんですよ。夜騒いだりするっていうので、騒音トラブルとかもあったので。お客さんにも迷惑も掛かりますし」

 肝試しや廃虚巡りの目的で建物に不法侵入し、トラブルになるケースも相次いでいるといいます。

 実際に取材をしていると、前日に撮影していた時には、閉まっていた扉。翌日再び訪れると、誰かが侵入したのか、扉が開けっ放しになっていました。

 さらに複数、赤いスプレーで落書きした跡があります。

 日本有数の紅葉の名所にもかかわらず、なぜ天人峡温泉街は、廃虚化が進んでしまったのでしょうか?

■度重なる“大雨被害”で客足遠のく

 その要因となったのは、度重なる大雨被害でした。

 2010年、大雨の影響で温泉街に通じる唯一の道が土砂崩れなどで寸断。客と従業員合わせて300人以上が孤立する事態になりました。

 災害などの影響で客足は遠のき、2012年には「天人峡グランドホテル」、その2年後には「天人峡パークホテル」が相次いで廃業に追い込まれてしまいました。

 その後も、度重なる災害が天人峡温泉を襲うと回復のめども立たず。4年前には「天人閣」も財政難に陥り、4軒中3軒が廃業となりました。

 その後、1軒は取り壊されたものの、残りの2軒は廃虚となり、今も老朽化が進んでいるといいます。

 東川町・松岡市郎町長:「防犯上、景観上も、付近の衛生問題も含めて問題があるだろうと。本当にひどい状態で、放置されたまま」

 天人峡温泉がある、東川町の町長も一刻も早くこの状態を脱したいといいますが…。

 松岡町長:「我々は手を出すということも、ほとんどできない。ですから、相当時間がかかることになると思います。道路は狭くてですね。重機は入っていけないというようなところもありますので、相当の費用がかかってくるだろうと」

 町長の思いとは裏腹に、すぐに撤去に取り掛かれない理由とは?

■撤去できない“2つの理由”

 天人峡温泉は、この10年でホテルが4軒から1軒に減少しました。

 「天人閣」は2018年、「天人峡グランドホテル」は2012年に廃業し、廃虚化しています。

 「天人峡パークホテル」だけは廃業後に、経営者が自主的に解体しています。

 廃虚化したホテルの撤去には、2つの壁があります。

 1つ目の壁は「国有地」だからです。

 温泉地全体が国立公園、つまり“国有地”ですが、国はこれまで撤去に向けて具体的に動かなかったといいます。

 そこで今年6月、北海道と地元自治体の呼び掛けで、国も含めてホテルの撤去に向けた検討会を実施しました。

 2つ目の壁は「撤去費用」です。

 2軒のホテルを撤去する場合、合わせて10億円以上かかるといいます。

 東川町の松岡町長は、「地元自治体でホテルの撤去を検討したが、観光庁の廃屋撤去の補助金、最大1億円を使っても、自治体の負担が大きすぎる」と話しています。

(「羽鳥慎一 モーニングショー」2022年9月27日放送分より)
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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