【戦争長期化の影響】ヨーロッパでエネ政策転換 ドイツでは“異例の事態”エネルギー不足懸念も
ロシアによるウクライナ侵攻が始まってから、24日で半年となりますが、戦争長期化の影響は、各国のエネルギー政策にも及んでいます。ロシアからの天然ガスの供給量が低下するなか、ドイツでは店頭の薪(まき)が品切れになるなど異例の事態となり、「エネルギー価格などが上昇するなら、ロシアへの制裁を支持しない」という声も増えています。
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21日、ドイツのショルツ首相が市民との写真撮影に応じていると、突然、女性2人が上半身裸になって、「今こそガス禁輸を!」と声をあげ、一時騒然となりました。ロシア産天然ガスの輸入禁止を求め、抗議したとみられています。
ロシアのウクライナ侵攻から24日で半年。今、このガスをめぐる問題がヨーロッパを揺るがしています。
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18日、ドイツ西部の都市・デュッセルドルフにあるベーカリーを訪ねました。店内は焼きたてパンの香ばしい香りでいっぱいですが――
ベーカリーのオーナー
「店の存続の危機です、ガスなどの価格がとても上がっています」
この店ではこの冬、ガス価格が3倍以上に跳ね上がる見込みで、廃業も覚悟しているといいます。
先月、ロシアからヨーロッパへの天然ガスの供給量は20%にまで低下しました。制裁を科す国への揺さぶりとみられています。ロイター通信によると、輸入天然ガスの約半分をロシアに頼っていたドイツでは、この冬、エネルギー不足に陥る懸念が高まっているのです。
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ドイツ北部の都市・ハノーファーでは、ガスの節約に動き出しました。
記者
「ここは市営の温水プールですが、今はガスで水を温めるのをやめているため、水の温度は24℃ほどとなっています」
19日、市営の温水プールを訪れると、プールの水もシャワーも冷水になっていました。
利用者
「ガス節約のためだとわかっていますが、プールが温かくなくて残念です」
さらに、発電に使うガスを節約するため、街中では噴水が止まりました。観光スポットになっていた市庁舎のライトアップも取りやめで、夜は真っ暗に。
こうした中、暖炉などに使われる薪が、例年の倍以上の売れ行きだといいます。
薪業者の責任者
「多くの人が薪を買おうとしていて、市場は空っぽです」
実際に薪を買った人の自宅に案内してもらうと、薪の山が地下室やガレージ、家の外にまでぎっしり。
ハノーファー市民 イナさん
「暖炉用の薪は暖炉のそばや、この地下室などに置いています」
普段はインテリア同然の暖炉ですが、今年はガスの節約のために、例年の3倍の薪を買いだめしたといいます。
しかし、ガスの節約だけでは、冬のエネルギー需要をまかなえません。そこで、ドイツ政府は温室効果ガスを多く排出する石炭火力発電所の再稼働を決定しました。クリーンエネルギーの“旗振り役”だったドイツも、政策の転換を迫られているのです。
ヨーロッパ各国でも、こうした方針転換の動きがみられ、オーストリアは脱化石燃料を掲げていますが、石炭火力発電所の再稼働を決めました。さらに、オランダなど5か国が、石炭火力発電所の稼働期間を延長することなどを決めています。
こうした動きに、ドイツでは「エネルギー価格などが上昇するなら、ロシアへの制裁を支持しない」という声がじわじわと増えています。infratest dimapによると、「エネルギー価格などが上昇しても対露制裁を支持するか?」の問いに「不支持」と答えた人の割合は、3月は26%でしたが、7月には38%と増加しました。
ハノーファー市のオナイ市長は、「こうした世論の変化こそが、ロシアの狙いだ」と警鐘を鳴らします。
ハノーファー市 オナイ市長
「(これまでの失策で)ロシアへのガス依存を招き、プーチンがそれを利用しています。プーチンに屈して、ウクライナが譲歩したり、戦争で負ければ日常が戻るというのは、ばかげた思い込みです」
「対ロシア制裁」というヨーロッパの人々の決意に、揺らぎも見え始めています。
(2022年8月23日放送「news every.」より)
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