「何ができなくなるか議論を」感染者“全数把握”見直しの課題は?専門家解説(2022年8月18日)

「何ができなくなるか議論を」感染者“全数把握”見直しの課題は?専門家解説(2022年8月18日)

「何ができなくなるか議論を」感染者“全数把握”見直しの課題は?専門家解説(2022年8月18日)

“行動制限なし”のお盆休みが明けた18日、新型コロナの全国の感染者は25万5534人と過去最多になりました。都道府県別では、21道県で過去最多となるなど、地方での拡大が目立ちます。

東京では減少傾向が続くものの、新規感染者は2万7453人、病床使用率は59.8%となっています。

東京都医師会・猪口正孝副会長:「入院患者数は8月17日時点で過去最多の4424人となり、非常に高い水準で推移している。現在、都民の約70人に1人が検査陽性者として入院・宿泊・自宅のいずれかで療養している。そのうち入院療養等調整中を含めると、約95%の療養者が自宅療養」

自宅療養者も、減る様子は一向に見られません。

ひなた在宅クリニック山王・田代和馬院長:「入院すべき状態でも、すぐに入院できない方がいる。一日待って決まれば早いねって思ってしまうような状況なので、これが高止まりになれば、またさらに入院に時間がかかる」

さらに、3年ぶりに制限がない今年の夏休みは、憂慮すべき事態が起きているといいます。

ひなた在宅クリニック山王・田代和馬院長:「頭を悩ませた問題は『東京で検査して旅先で陽性と分かった。どうしたらいいですか』とか、逆に『旅行先で症状が出た』『検査をして(結果が)出る前に東京へ帰ってきて陽性が出た』と、検査と結果が出るまでの間に移動してしまったケースをどういうふうに対応するべきなのか。そういった方が移動の中でどれぐらい感染拡大させてしまったか。ちょっとぞっとするところはありました」

夏に人気の観光地・沖縄。石垣島はにぎわっているといいます。

石垣市医療アドバイザー・境田康二医師:「お盆の週がありましたから、帰省された方ですよね、大学生やご家族で帰省されている方もいますが、そういう方からも陽性者が出てきているので。今、陽性率が70%~80%くらいですね」

今、療養施設となっているホテルが、県外の療養者で埋まるという事態に陥っています。

石垣市医療アドバイザー・境田康二医師:「ホテル療養のベッド数の8割くらい、観光客がホテル療養している。(Q.島の中の人は施設に入るのが難しい状況に?)なっていますね。車中泊した人がいるとか、本当はホテル療養に入れたらいいが、家族で1人陽性者がいると、一緒に生活すると家族全滅状態に」

また、なかにはこんな人も…。

石垣市医療アドバイザー・境田康二医師:「夕方5時くらいから(検査結果を)報告するんですね、電話で。その時に電話になかなか出ない方がいらっしゃって、島の中にいるはずだから、つながらないってことはないと。8時とか9時にやっとつながって、結果は陽性ですけどって話したら『もう地元に帰りました』と。びっくりですよね」

地方で広がる感染。大都市では揺り戻しが懸念されます。

東京都・小池百合子知事:「これからはお盆があけて、仕事が本格化する。夏休みが終わって、新学期が始まるタイミングです。人と人との接触機会が増えるので、ここで改めて、いま一度気を引き締める必要がある」

◆東京歯科大学市川総合病院の寺嶋毅教授

(Q.地方での増加傾向をどうみますか?)

地域によってはお盆や夏休みイベントが影響した可能性があります。ただ、オミクロンになって小児の感染が増え、感染ルートが変わってきました。

これまでは飲食店や繁華街から家庭へのルートが注目されていましたが、現在は学校から家庭へのケースも増え、都市部と地方の違いが少なくなってきた気がします。

今後、夏休みが明けて学校が始まれば、20歳未満の感染者が増え、家庭内で再び感染が広がる可能性があります。

また、感染者数に遅れて入院患者のピークが来るので、地方は特に、病床のひっ迫状況がしばらく続くと予想される。

(Q.感染拡大を示す色んな指標がありますが、病床使用率は重要な指標とみていいですか?)

重症化リスクが高い感染者を守るという意味でも、病床使用率が大事だと思います。

病床使用率が50%を超えると、地域や病院によっては100%に近いところもあります。また、医療従事者の感染でフル稼働できず、数字ほどは余裕がない自治体も出ています。

平均70~80%くらいになるとかなり厳しく、すぐには入院できないケースも出てきます。病床使用率は、適切な医療が届けられているかの重要な指標ではないかと思います。

***

病床ひっ迫以外にも、医療現場の負担として挙げられるのが感染者のデータを届け出る業務です。これについて、政府は全ての患者を報告することを見直す方向です。

現在は『HER-SYS』で全患者の発生届を、医療機関が保健所に提出するのが基本です。ただ、入力作業が医療機関や保健所業務を圧迫していると指摘されています。

一方、インフルエンザ等の場合、全ての医療機関ではなく、報告する医療機関をあらかじめ決めて、そこでの患者数から全体の流行を把握する『定点把握』という方法を取っています。

これについて、政府分科会の尾身会長らは「重症化リスクのある患者を除いて『全数把握』をやめ、定点把握だけでなく、地域にあるデータの活用や、新しい仕組みを考えるべき」と提言し、政府も見直す方針です。

(Q.全数把握をやめるメリット・デメリットは何ですか?)

メリットを考えると、医療機関の負担が少なくなりますから、大変助かります。また、現在の感染拡大状況を見ると、実際の感染者数とのかい離が少しずつ大きくなっています。

デメリットの1つは、今の感染状況のトレンドが分かりにくくなることです。感染が拡大しているのか、収束しているのか、特に感染拡大時期は、そのスピード感の把握が遅れることもあると思います。

もう一つのデメリットは、高齢者や健康観察の必要な人がこぼれ落ちてしまう恐れもあることです。保健所や行政の入院調整がなくなると、状態が悪くても入院できないというケースが出てくると思います。

“全数把握をやめることで何ができなくなるか”を議論し、補うシステムを作りながら段階的になくしていけば、混乱が少ないと思います。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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