核戦争勃発の可能性は「過去最大」“戦力増強”求める声も…核廃絶に暗い影(2022年8月6日)
77回目の「原爆の日」を迎えた広島。6日に行われた平和記念式典には、被爆者や遺族をはじめ、世界99カ国の代表などおよそ2800人が参列しました。
「核兵器が存在する限り、人類を滅亡させる力を使ってしまう指導者が出てきかねないという現実を直視すべきです」(広島県 湯崎英彦知事)
2月末から、いまも続いているウクライナ侵攻。
「私たちが何を持っているのかを知るべきだ。我が国の主権を守る必要がある場合にはそれを使用する」(プーチン大統領、6月の国際会議で)
プーチン大統領が、核兵器の使用も辞さない姿勢をみせる中、世界中で「核戦争」への危機感が高まっています。ニューヨーク市は先月、“核攻撃を受けた際にとるべき行動”を説明する動画を公開しました。
「慌てるのではなく、常に積極的に備えておこう」(ニューヨーク市 エリック・アダムズ市長)
世界の核弾頭数は今年1月時点で推定1万2705発。その9割をロシアとアメリカが占めています。複数の国が核兵器を増強しているとみられ、中でも中国は2030年までに少なくとも1000発の保有を目指している可能性が指摘されています。
■米ロの核戦力差は“10倍” 機能しない核抑止力
世界の核軍縮はどこへ向かうのでしょうか。サタデーステーションは、アメリカの核戦略策定に専門家として携わる、米議会諮問委員会(安全保障)のピーター・プライ博士に話を聞きました。
「これまでで核戦争勃発の可能性が最も高いのは今現在です」(プライ博士)
今回のウクライナ侵攻により、アメリカの核兵器による抑止力が“機能不全”だと証明されたといいます。
「核抑止力の目的は戦争の発生を抑止することです。ロシアはNATOの報復を恐れウクライナに侵攻しないという想定でした。しかし、ロシアは恐れていなかった、侵攻してみせたのです。むしろ今、恐怖を感じているのは我々の方です。ロシアの核兵器を恐れるあまり、ウクライナへの決定的な武力介入に踏み込めないでいる。今やアメリカが“抑止されている側”なのです」(プライ博士)
現在の“ロシア優位”の状況は、核戦力のパワーバランスの崩壊が要因だというプライ博士。
「あまり知られていませんが、アメリカは今、最新の核ミサイルを保有していません。新たな核兵器も製造しておらず、冷戦期の“おさがり”を持っているだけです。ロシアの核戦力は今やアメリカの10倍かそれ以上でしょう。『量』ではなく、最新技術による『質』の差です」(プライ博士)
アメリカに対する通常戦力の劣勢を補うため、核兵器を重視する戦略をとってきたロシア。アメリカのミサイル防衛システムを突破するとされる新型の弾道ミサイルも年内に実戦配備する見通しです。
「バイデン政権は史上最も反核意識が高い政権です。アメリカはあと数年で、ロシア、中国に次ぐ3番手の核保有国に陥落するでしょう。バイデン政権には警告していますが、全く聞く耳を持ちません」(プライ博士)
オバマ政権が掲げた「核なき世界」の継承を目指す、バイデン政権。プライ博士は「もはやアメリカの核の傘では日本や諸外国を守ることはできない」と訴えます。
「私は本当に心を痛めています。日本国民がアメリカをいまだに信じていることについてです。こうしている間にも北朝鮮はミサイルを発射できるのです。それでも日本国民は“アメリカが守ってくれる”と信じています。ウクライナを見てください。いつ気付くでしょうか。“警察は守ってくれない”“自衛するしかない”と」(プライ博士)
■「無責任だ」核廃絶目指す取り組みに“逆風”も
国内でも「核共有」による防衛力強化を主張する声が上がる状況にただならぬ危機感を抱いている被爆地・広島。核廃絶に向けて活動する若者団体ではある“異変”が起きていました。核廃絶に向けて活動する、「カクワカ広島」共同代表の田中美穂さん(27)は、ウクライナ侵攻後、異変を感じたといいます。
「『核共有を議論してはいけないっていう発言は無責任じゃないか』とか『なんでそんなことが言えるんだ』っていう反応をいくつかいただいておりまして。ここまで反応があることはこれまでなかったので、まずその量に驚きました。やっぱり最初読んだ瞬間はグサッとくるといいますか」(田中美穂さん)
カクワカ広島に届いたメッセージ
「ノンビリお茶の間平和主義者」「北海道にロシアが攻めてきた場合どう対応するのでしょうか?」「発言に関して無責任だと感じました」
活動を非難するメッセージにもひとつひとつ返信しながら、核廃絶を訴え続けます。
「現に核兵器が存在してから戦争は各地で起こっているわけで、核抑止は働いていないんじゃないかと私は思うんです。核兵器が使われてしまったらどういったことが起こるか。使われた瞬間や当日だけでなく、その後の被爆者の方が受けてきた差別や暴力っていうものは、まだまだ日本国内でも伝わり切れてない。やっぱり核抑止は安全ではないし、安全を高めるためにはなくすしかないと思います」(田中さん)
■被爆者の証言を絵に 次世代に経験をつなぐ取り組み
被爆者が高齢化するなかで、“どう伝え続けるか”も課題となっています。服は燃え、皮膚がはがれた、おびただしい数の遺体。広島市の高校生・サンガーさんが、被爆者の証言をもとに原爆投下翌日の光景を描いた絵で、6日から広島国際会議場で展示されています。
「原爆の絵の制作を通して、平和に対する向き合い方が変わりました」(広島市立基町高校 サンガー梨里さん)
会場には、3歳の時に広島で被爆し、その体験を証言した飯田國彦さん(80)の姿もありました。
「原爆はこの世の地獄のようであったという人がいるけどね、それは全然違う。遺体が、遺体の恰好をしていないんですよ。似ても似つかないほど、原爆の方が悲惨なんです。殺人兵器ですから、これは無くさなきゃいかんです」(飯田國彦さん)
サタデーステーション 8月6日OA (C) CABLE NEWS NETWORK 2022
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