「拿捕されたら怖い」日ロ“漁業協定”停止 日本の食卓への影響と主権上の問題(2022年6月8日)

「拿捕されたら怖い」日ロ“漁業協定”停止 日本の食卓への影響と主権上の問題(2022年6月8日)

「拿捕されたら怖い」日ロ“漁業協定”停止 日本の食卓への影響と主権上の問題(2022年6月8日)

 ロシア外務省が北方領土周辺で、日本漁船のいわゆる「安全操業」を認める協定を停止すると発表しました。これによってホッケやタコ漁などが操業できなくなる恐れもあり、価格の高騰など生活にも影響が出そうです。

 松野博一官房長官:「一方的に協定の履行停止を発表したことは遺憾であります。日本側として引き続き協定のもとでの操業が行われるよう、ロシア側と協議を行っていく考えであります」

 ロシア外務省は7日、「北方四島周辺水域における日本漁船の操業に関する協定」の履行を停止すると発表しました。

 この協定はロシア当局による拿捕(だほ)を避けるなどのため1998年に日本とロシアの間で締結されました。

 いわゆる「安全操業」を認める協定で、毎年、操業の期間や漁獲量をロシア側と交渉し、協力金を支払って行われています。

 今回、ロシア側はこの協力金が支払われていないとしています。

 ロシア外務省のザハロワ報道官は、「日本側が財政的な義務を果たすまで協定を停止せざるを得ない」と声明を出しています。

 協定の履行停止にはウクライナ侵攻を巡る日本からロシアへの制裁が影響していると、漁業経済や漁業外交に詳しい専門家は話します。

 北海学園大学・濱田武士教授:「民間の人たちが主体でやっているという協定ですが、ウクライナ戦争が始まって制裁措置をして、日本の民間からすれば送金できる方法がないので、払いたくても払えない」

 北方四島周辺海域で「安全操業」でスケトウダラの漁に3年前まで参加していた漁師はこう話します。

 漁師:「(Q.漁獲的には)かなり落ちるんじゃないですかね。安全操業をあてにしている船は(売り上げが)かなり落ちると思います」

 一方で、今の情勢での漁について・・・。

 漁師:「あっち側から停止しなくても、こっち側から行くこと自体が怖いと思う。何か理由をつけて拿捕とかされたら人質みたいになっちゃうし」

 今回、影響を受けるのはスケトウダラやホッケのほか、タコ、コンブなどです。

 水産庁によりますと、去年12月に行われた協議では「安全操業」での日本漁船の漁獲量はスケトウダラ、ホッケ、タコ、その他合わせて2177トンと妥結していました。

 例えば、2020年の北海道のスケトウダラ、ホッケ、タコの漁獲量は合わせて21万4364トンです。

 北海学園大学・濱田武士教授:「日本のなかで供給される全体の数値評価でみたらそんなに大きくないので、食卓を騒がすということにはならない」

 ただし、長期的に続けば影響が出てくるというのです。

 北海学園大学・濱田武士教授:「根室という水産基地の経済が弱まるということですから、そうなると供給力が弱まるので長期的には大きな損失で、食卓にも影響が表れる。水産物価格は上がっていくわけですよね」

 その影響は、どこまで広がるのでしょうか・・・。北方領土の漁業協定停止を受けて海産物を取り扱う飲食店でも心配の声が上がっています。

 客:「僕だと刺し身1品900円とか超えてくるときついなって」

 店では今のところ影響は出ていないと話しますが、今後、値上がりすることを心配だといいます。

 おさかな本舗・たいこ茶屋、嵯峨完大将:「タラ、たらこ、明太子、ホッケ、タコ、北海だこなんかは大量に使うので、非常に心配な面がありますよね」「(Q.最近の客足は?)かなり回復してきた。ゴールデンウィークなんかは大変好調だった。前の景気に戻りつつあったけど、さらにこれ以上の値上げとなりますとね。大打撃になるのかと心配」

 また、影響は経済だけではないと専門家は指摘します。

 北海学園大学・濱田武士教授:「今まで協定の下で北方領土水域で操業していた日本政府としても、それが領土主権の事実の一つでもあるので、漁業が行われているという生業(なりわい)がそこにある事実も消えてしまう主権上の問題にも発展する」
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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