中国“太平洋の島しょ国”への進出強化…狙いは?太平洋めぐる米中の綱引きエスカレート【風をよむ】|TBS NEWS DIG

中国“太平洋の島しょ国”への進出強化…狙いは?太平洋めぐる米中の綱引きエスカレート【風をよむ】|TBS NEWS DIG

中国“太平洋の島しょ国”への進出強化…狙いは?太平洋めぐる米中の綱引きエスカレート【風をよむ】|TBS NEWS DIG

海洋進出を強める中国がいま、視野に入れているのが南太平洋の国々です。アメリカとの対立がここでも深まっています。

■中国が南太平洋8か国を訪問も…新構想の合意至らず

2023年、ソロモン諸島で開かれる、南太平洋のオリンピックとも呼ばれる「パシフィックゲームズ」のために建設されている新スタジアム。この建設を、資金面含め全面的に支援しているのが中国です。

その中国の王毅外相が5月26日、ソロモン諸島を訪問。それを皮切りに10日間の日程で、太平洋のフィジー、サモア、トンガ、パプアニューギニアなど、あわせて8か国を精力的に訪問したのです。

こうしたなか、5月30日にはフィジーで太平洋諸国の外相とオンライン会議を行い、安全保障などの分野で新たな構想の合意を目指しましたが…

中国・王毅外相
「一部の国には心配しすぎないよう忠告する」

アメリカとの結びつきが強いミクロネシア連邦が反対したとみられ、合意には至りませんでした。背景にあるのが、積極的な進出を進める中国への警戒感です。

■中国の影響力拡大に広がる不信感「とても懐疑的」
 
経済危機に陥り、反政府デモが起きているインド洋の島国スリランカ。インフラ整備のため中国から巨額の融資を受けましたが、返済に苦しみ中国の支配が強まる、いわゆる「債務の罠」に陥ったといわれます。

こうしたなか、今回、王氏が訪れた太平洋のソロモン諸島では、2021年11月、中国との関係を深める政府への抗議デモが起き、一部の市民が中国系の商店に放火するなど暴徒化…。

また、同じく王氏が訪れたトンガでも、中国の影響力拡大に対して国民の間に不信感が広がっているとの指摘があります。

トンガ在住ジャーナリスト マリアン・クプさん
「トンガの人々は今回の訪問に非常に好奇心を持っていますが、とても懐疑的です。なぜなら中国は我々よりも遙かに大きく、力があり、資源や手段を全て持っているからです」

■積極外交の狙いは?米中の綱引きエスカレート

こうした地元の不安がくすぶる中、依然として影響力拡大をはかる中国。2019年に台湾と断交したソロモン諸島と国交を樹立し、2022年4月には、安全保障についての協定を締結しました。

このような中国の積極外交の狙いは、いったい何なのでしょうか。

拓殖大学 富坂聰教授
「台湾を巡ってですね、安全保障上の視点からいうと、やはりここに拠点があるかないかというのはものすごく大きい。アメリカがもし台湾を守るという時に、少なくともアメリカの軍事力を太平洋で展開させないというために動いている」

実際、王氏がソロモン諸島を訪れた3日前には、日本を訪問中のアメリカ、バイデン大統領が共同記者会見で…

記者
「いざとなったら台湾を守るために軍事的に関与しますか?」

バイデン大統領
「イエス」

台湾についてこれまで意図的に曖昧なスタンスをとってきたアメリカですが、バイデン大統領は台湾防衛により踏み込んだかのような発言を行ったのです。

さらに、中国が接近を図るフィジーを巡っても、アメリカは自らが主導する新たな経済圏構想、IPEF=インド太平洋経済枠組みにフィジーの参加を歓迎すると発表。

また、1993年に閉鎖したソロモン諸島のアメリカ大使館を再開させる意向を示すなど中国への対抗姿勢を見せています。

南太平洋の国々を巡る米中の綱引きはエスカレートしているのです。

■太平洋戦争では日米が激戦 いま再び対立構造

戦前、日本はパラオなど南太平洋の一部を委任統治していましたが、太平洋戦争ではこうした島々で日米の激しい戦闘が繰り広げられました。

それからおよそ80年…。太平洋を巡り、再び大きな対立の構図が生まれています。

■クアッドで“中国包囲網” インド太平洋地域のインフラ整備へ

5月、東京で開かれた日本、アメリカ、オーストラリア、インド4か国からなる「クアッド」の首脳会合では、中国に対し改めて対抗する姿勢を確認。インド太平洋地域のインフラ整備に、今後5年間でおよそ500億ドル以上の支援や投資を目指す方針で一致したのです。

バイデン大統領
「我々はインド太平洋地域の大国だ。アメリカは親密な民主主義の仲間と共に共有する価値観や理想のために立ち上がる」

岸田総理
「自由で開かれたインド太平洋という共通のビジョンへの強固なコミットメントを国際社会に示す意義、これは極めて大きい」

■対クアッドに中国は?太平洋諸国への進出強化か

こうした連携に対抗し、中国は今後より一層、太平洋諸国への進出を強めるだろうと専門家はいいます。

富坂教授
「(クアッドには)アジア太平洋における中国の影響力を削いでいくという目的が当然ある。逆に中国から見た時には太平洋、そこをとっておいて動きを遮断する、包囲網がきちんとできてしまわないように、一つ穴をあけるという大きな意味がある」

今後、さらに激しい覇権争いが、太平洋を舞台に繰り広げられることが予想されます。

(サンデーモーニング 2022年6月5日放送より)

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