【解説】知床観光船“ずさんな安全管理の実態” 社長「とりあえず謝罪」 電話音声入手

【解説】知床観光船“ずさんな安全管理の実態” 社長「とりあえず謝罪」 電話音声入手

【解説】知床観光船“ずさんな安全管理の実態” 社長「とりあえず謝罪」 電話音声入手

北海道・知床半島沖で観光船「KAZU 1」が沈没した事故で、NNNは独自に運航会社「知床遊覧船」社長の音声と、社長が乗客の家族に配った文書を入手しました。今回、明らかになった安全管理へのずさんな実態を詳しくお伝えします。「社長『とりあえず謝罪』」、「文書に『自覚足りず』」、「捜索へ『飽和潜水』」、以上の3つのポイントについて解説します。

■社長「とりあえず謝罪」 会見前日の通話記録を入手
知床遊覧船の桂田精一社長が初めて記者会見を行う前日の、先月26日に録音された電話の音声をNNNが入手しました。

知床遊覧船 桂田精一社長
「事実関係が、まだはっきり事故の原因がわかってないから、あまり言ってもしょうがないんで、謝るだけになっちゃうと思うんですけど。とりあえず、謝罪の方は、もちろんするんですけど」

桂田社長は、「まだ原因はわかっていないが、とりあえず会見を行い、謝罪をする」と話していました。

この通話相手がどういう人かについては詳しくはお伝えできませんが、数年前からの知人ということです。この知人男性は「すごい他人事のようだった」と感じたそうです。また、今回の事故についても「自分の非を認めず、不可抗力で起きた」と桂田社長は話していたということです。

桂田社長が述べた「不可抗力」とは、クジラです。桂田社長は「クジラに当たったり、底から突き上げられると、穴が開く可能性もある」と話していました。

しかし、地元の漁業関係者に取材すると、「この時期にクジラを見たことはない。『海のことを何も知らない人間が、何をしゃべっているのか』と思った」と話しました。また、「責任逃れ」、「人の命をなんだと思っているのか」とも話していました。

■桂田社長“風評被害”を気にする様子も…
また、通話記録には、お金や経営を気にしているような音声も残されていました。「(遊覧船とは)別の会社なので、宿の方は問題ないと思います」と話していました。桂田社長は、観光船「KAZU 1」などの運航会社・知床遊覧船とは別に宿泊施設も経営していて、その経営や風評被害を気にする様子がうかがえました。

さらに、保険金の話もあり、電話の最後には自身の逮捕の可能性についても話していました。

知床遊覧船 桂田精一社長
「保険の方もですね(乗客)24名ですから、えーっと、1人最高1億とか出しても、まだ余るような形なので、そちらの方は問題ないかと思いますけども」
「逮捕はないですね。弁護士さんに、その辺はみんな相談していますので、逮捕はしづらいねっていう話です」

この入手した音声には、安全管理についての話はありませんでした。

■「自覚足りず」桂田社長が謝罪 家族への文書を入手
また、乗客の家族に向けて桂田社長名義で配布されたという文書をNNNが入手しました。この中で桂田社長は、法律で作成と国への提出が義務づけられている「安全管理規程」に違反したことを認めました。

「当社(私)の落ち度について」として、まず書かれていたのは、定点連絡を怠っていたことです。本来であれば、船長は運航ルート途中の13地点で、営業所にいる運航管理者に通過した時間や天候などを連絡し、それを記録しておく必要がありました。それにもかかわらず、事故当日は連絡も記録もしていなかったということです。

この運航管理者とは、誰なのでしょうか。文書には「運輸局に提出済み。当社の届け出内容を確認したところ、運航管理者として私が登録されております」と書かれていました。届け出を確認したら私――つまり桂田社長が登録されていたという、他人事のような表現でした。

さらに、運航管理者である桂田社長は、航行中は原則として営業所にいる必要があったにもかかわらず、その場を離れたことが問題であったとしています。その理由は、「私が病院に行くため」としています。

そして、運航基準通りに「KAZU 1」の運航を行っていれば、事故を回避できた可能性はあったとした上で、「私は船舶の運航等については社員に任せている部分が多く、私自身の運航管理者としての自覚も足りませんでした」と桂田社長は文書の中で謝罪しました。

■捜索のための「飽和潜水」とは? 「命がけの作業」と指摘も
3日時点で12人の行方が分からない中、捜索は続けられています。

船内に取り残された人がいないか捜索すること、船体の引き揚げのために船の状態を調査することが課題ですが、簡単なことではありません。

「KAZU 1」が沈んでいるのは水深115mと通常の潜水方法では到達できない深さです。このため、今回、海上保安庁は、「飽和潜水」という高度な技術を用いることにしました。

飽和潜水とは、水深100m以上の潜水を実現する特別な方法です。元海上自衛官で水難学会副会長の安倍淳氏によると、水深120mでは水圧により物体が陸上の13分の1の大きさまで圧縮されてしまうそうです。

バスケットボールがソフトボールの大きさに圧縮されてしまうほどの圧力がかかるため、特別な訓練が必要です。まず、潜水員は陸上にいる時から、気圧を変えられる部屋にこもり、事前に体を慣らします。そして、その状態を保つことができる加圧タンクで海の中に入ります。目標の深さに到達した時には、既に体が高い水圧に慣れているため、外に出て作業ができるということです。

安倍氏によると、飽和潜水はダイバーにとって「まさに命がけの作業」と話していました。普段から訓練をしていますが、加圧タンクには半日から1日入って、体を慣らすそうです。

■「KAZU 1」を引き揚げる際の費用は?専門家が指摘
今回、民間会社の日本サルヴェージと8億7700万円で契約が結ばれ、国が負担するということです。これはあくまでも捜索や船の状態を調査する契約で、船の引き揚げは含まれていません。

「KAZU 1」を引き揚げる際は、海底調査の費用とは別に「さらに数十億、あるいは10億円を超える費用が必要になるのではないか」と安倍氏は指摘しています。この飽和潜水による海底調査は、早ければ今月中にも行われる見通しです。

     ◇

ずさんな安全管理が次々と明らかになる中、一日も早い真相解明が求められます。
(2022年5月3日放送「news every.」より)

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