船体引き揚げのカギ握る「マルチビームソナー」を独自取材 知床観光船沈没事故(2022年5月1日)

船体引き揚げのカギ握る「マルチビームソナー」を独自取材 知床観光船沈没事故(2022年5月1日)

船体引き揚げのカギ握る「マルチビームソナー」を独自取材 知床観光船沈没事故(2022年5月1日)

いまだ12人の安否が分かっていない、知床の観光船沈没事故。帯広では今夜、亡くなった鈴木智也さんの通夜が営まれました。鈴木さんは、船上でのプロポーズを計画していました。

▽悔しさにじませ・・・父親「親友であり親子」
Q. 息子さまはどの様な存在でしたか
(鈴木智也さんの父親)「親友であり友達です。本当につらかったです。一日も早く帰って来てほしいと。悔しいです。残念です。本当に残念でまだこれからの長い人生を奪われたと思うと言葉になりません・・・」
先月28日、救助された鈴木智也さんの通夜が先ほど帯広市内で営まれました。鈴木さんは交際相手の女性と二人で観光船KAZU1に乗船。サプライズでプロポーズを考えていたといいます。
(鈴木智也さんの父親)「本来なら2人で見つかってほしいんですが、先に見つかってしまったので本当に残念で悔しくて。一緒に連れて帰ってやりたかったという気持ちでいっぱいです。最後(智也さんの)車を回収をするときに本人の(彼女宛ての)手紙が出てきたんです。つらくて読めなかったです・・・」
(鈴木智也さんの同級生)「周りも結婚している人も結構いたので(智也さんも)俺もそろそろかな、と。そんな連絡はしていました。(2人は)お似合いだなってすごい幸せそうだと思っていました。」

▽元従業員語る観光船“出航前の様子”
「今、北海道警察が水中カメラを投入しました。これからKAZU1の調査を行うとみられます。」
深さ120mほどの海底に沈むKAZU1。水中は視界が悪く、潮の流れも速いなど悪条件の中、懸命の捜索が続いています。
「先日、海上自衛隊が行った無人機の調査では、客室内を確認できなかった為KAZU1の中に取り残された人がいないかの確認が待たれます」
事故から8日が経過しましたが未だ12人の安否が分かっていません。出航前に乗客へライフジャケットの着用を担当していたという元従業員の男性が当時の様子を語りました。
(知床遊覧船の元従業員)「大人用のライフジャケットしか用意されていなかったので子どもにもちょっと待っていてねって中に入って、ただちょっと大きかったので、小さいやつに変えてもらいなさいと言って。(大きいと)抜けるんだよね海に落ちると」
Q. 何歳くらいのお子さんですか?
「7歳の見つかっていない子・・・」

▽海保への通報は“乗客の携帯”か
(佐々木一真アナウンサー)「知床半島の反対側羅臼側の漁港です。順次岬に向かう観光船の運行が始まっています。」
Q. 事故を受けて見直した点は?
(観光船「英人丸」 天神英二船長)「やっぱり安全対策だよね。安全対策だって、ある程度今まで同じ基準でやっていればそれ以上やりようがないと思うんだけどね・・・」
キャンセルも出るなか、1日は4人の乗客が参加しました。観光客は・・・
(京都からの観光客)「止めようと思ったんですけど、船長さんに(安全の)確認も取りましたので」
Q. 大丈夫かなと?
「はい」
船長は気象状況など念入りに確認し出航を決めたといいます。
(観光船「英人丸」 天神英二船長)「まず行ける所までとりあえず行ってみて、良ければ岬まで行くし悪ければ引き上げる。」
およそ2時間のコースを無事終えたクルーズ船。この日は岬の手前まで行くことができたといいます。

一方、海上保安庁によると事故当日、KAZU1からの118番通報は乗客の携帯電話から発信されていた可能性が浮上しました。
(海上保安本部 横内伸明次長)「少なくとも船長か乗組員の電話番号ではない。」

▽捜索難航・・・海底120mに沈む観光船
様々な要因が絡んだと見られる今回の事故―。原因究明のために急がれるのが、KAZU1の引き揚げです。
4月30日に公開された画像には、およそ120mの深海に、船首を陸側に向けて横たわるKAZU1の姿がありました。これを映し出したのは、海上保安庁の測量船『天洋』に搭載された『マルチビームソナー』と呼ばれる、測量機器―。
専門家は、この装置がKAZU1引き揚げの“カギを握る”と指摘します。
(「マルチビームソナー」に詳しい水難学会 安倍淳副会長)「(マルチビームソナーでは)船体の形、傾き、周辺に散らばっている様々な散乱物まで確認することができます。船体の引き揚げには欠かせない重要な機械であります」
水面からは見えない地形などを、立体的に可視化できる『マルチビームソナー』とは、どのようなものなのか?
『マルチビームソナー』を装備したリモコンボートを開発した会社の協力で、湖底調査を行いました。
(“ソナーボート”を開発したコデン株式会社 石倉正之氏)「こちらから音波を発信します。なにか構造体に(音波が)ぶつかったら音が弾き返されて、ここで受信します。条件次第では、際立った金属の沈んだものとか構造体。こちらはダムですけども家が元々あって、その家の構造が浮き出てきます」
発信された音波は、海底や障害物にぶつかると跳ね返り、船体へと戻ってきます。これを走行しながら行うことで、帯状に、海底の詳細なデータを得ることができるのです。
今回、調査を行うのは、千葉県内にあるダム湖。この湖で『マルチビームソナー』は、どんな画像を映し出すのでしょうか?

「ソナー入れます。記録開始します。」
白波を立てながら、湖面を進むボート。ソナーによって計測されたデータが、パソコンに送られてきます。
(“ソナーボート”を開発したコデン株式会社 石倉正之氏)「ちょうどここに溝ですかね、溝のような構造体が映し出されています。元々川か何かがあったんでしょうね。」
このデータを解析すると、湖の底の詳細が見えてきました。溝のようなものは、深さ9m以上あり、直径1mを超えるトンネル状のもので、水路のようにつながっていました。さらに・・・
(“ソナーボート”を開発したコデン株式会社 石倉正之氏)「フヨフヨとあるのが実は泡だったりします。音波は物質の境界線に対して跳ね返る性質があるので、水の中の泡も鏡のように音波を反射するんですね」
条件によっては、1cm程度の物体をも認識できるという『マルチビームソナー』。
4月30日に公開されたKAZU1の画像は、初期段階のもので、今後、さらに精度を高めていく必要があると言います。
(「マルチビームソナー」に詳しい水難近した画像が得られると思う。ただ、あの現場状況が刻々と変化するような厳しい環境の場所では、確実に引き揚げられるか答えを出すまでには、だいぶ時間がかかると思います」

※「KAZU1(ワン)」は正しくはローマ数字 

5月1日『サンデーステーション』より
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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