観光船社長 「注意報認識も“条件付き”で運航許可」に専門家「あり得ない判断」(2022年4月27日)

観光船社長 「注意報認識も“条件付き”で運航許可」に専門家「あり得ない判断」(2022年4月27日)

観光船社長 「注意報認識も“条件付き”で運航許可」に専門家「あり得ない判断」(2022年4月27日)

北海道・知床半島の沖合で観光船が消息を絶った事故から5日目。27日、ようやく運航会社の桂田精一社長(58)が会見を開きました。水難事故調査が専門の長岡技術科学大学の斎藤秀俊教授に聞きます。

(Q.この会見、全体の印象はどうでしたか)
長岡技術科学大学・斎藤秀俊教授:全体として差し当たりないような。社長自身、問題のあることはやっていないと言っているような印象を受けました。

なぜ出航したのでしょうか。会社側が発表した経緯です。事故当日の午前8時ごろ、桂田社長は、豊田船長と当日のクルーズと打ち合わせを行い、豊田船長から「午後、天気が荒れる可能性あるが、午前10時からの出航は可能」と報告を受けます。当時、風と波も強くなかったので、海が荒れるようであれば引き返す“条件付き運行”とするとし、桂田社長が出航してもよいと判断したといいます。

ただ、当日は朝から強風・波浪警報が出ていました。国土交通省によりますと、安全管理規程では、一定の条件になる恐れがある場合、運航は中止。条件付き運航というのはあり得ないといいます。
(Q.会見を聞きますと、社長のシーマンシップ、あり方を問われると思いますが、どうでしょうか)
長岡技術科学大学・斎藤秀俊教授:今回、安全管理規程のなかで、明確に“一定の条件になる恐れがある”とありますので、天候の急変というのは視野に入れなければいけないといっています。これはルールですから、シーマンシップで言えば、海での基本的なルールをしっかり守らなければいけないと思います。

また、どのような気象状況の場合だと出航を中止するのか、その基準を記載した“安全管理規程”の内容も問われました。桂田社長は「気象・海象が一定の条件に達したと認めるとき、または達する恐れがあるときは運航中止」と書かれていると説明。一度は数値について話しましたが、最終的に「明確な数値はない」と話しました。国土交通省によりますと、「安全管理規程の中に具体的な数字を書かないと受け付けられない」といいます。

(Q.桂田社長は、きちんと安全管理規程を把握していないとみられますが、どう考えますか)
長岡技術科学大学・斎藤秀俊教授:管理者として名前が載ります。今回は社長です。社長は、この安全管理規程に精通していないといけない。この規程は最低限のルールで、しっかり守らないと事故につながる、または、事故が起きたとき大変なことになることを防ぐためにあるものです。それが頭の中になかったということになると、管理者として、どうなのかということです。

出航判断だけでなく、船と会社の通信手段にも問題があったことが会見で明らかになりました。事故当日、無線アンテナが壊れていると指摘されていたことに対し、桂田社長は「携帯電話や、他の運航会社の無線でやり取りも可能であるため、出港を停止する判断は、そのときしなかった。衛星電話は積んでいなかたったと聞いたが、実際は確認できていない」としました。

(Q.アンテナが故障し、衛星電話もないなか、出航してもいいものなのでしょうか)
長岡技術科学大学・斎藤秀俊教授:出してはいけない状況だったはずです。アンテナが折れているということは、通信が全くできないということです。例えば、118番、海上保安庁への連絡が遅れる。現場、到着が遅れる。今回、かなり冷たい海水だったので、1分、1分のロスが最終的に大きな悲劇につながっていったのではないかと思います。

(Q.会見を聞き、事故が起きてしまった大きな理由は何だと思いますか)
長岡技術科学大学・斎藤秀俊教授:急に風が変わって、北西の風が強くなったというところ。天災は確かにあると思います。ただ、海ではそういった天災に対して常に準備をする。そういったなかで、一番、注目したいのが、通信手段が大変、お粗末だったこと。これを放置したこと。運航会社の責任は重いのではないかと思います。

(Q.今後、捜索・捜査するうえで、見つかっていない船体が重要な意味を持ちますね)
長岡技術科学大学・斎藤秀俊教授:船体を注意深く見れば、何があって沈没したのか、すぐわかります。あとは、アンテナですが、これで通信できたのか。また携帯電話が圏内・圏外だったのか。こういったことが、これから検証されていくと思います。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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