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自民が嫌がった“参院選前の補正予算”その理由と自公関係は大丈夫か?|TBS NEWS DIG
岸田総理や自民党が慎重だった“参院選前の補正予算の編成”を公明党の要望により一転受け入れることになりました。自民党が避けたかった選挙前の補正予算。そこには過去の苦い経験がありました。一方、岸田総理になってから自公の関係もギクシャクした場面がよく見られるようになりました。自公の関係は大丈夫なのか?TBS報道局の後藤俊広政治部長が解説します。(聞き手:長峰由紀キャスター)
後藤政治部長:
21日、にわかに動きがあった補正予算について考えていきたいと思います。補正予算とは毎年作られる本予算を補う意味合いで組まれるものです。早くも年度も変わって1か月も経っていないのですが・・・
――もうやりくりできなくなったということですか。
そう捉えられかねないことですが、今回は自民、公明の幹事長・政調会長が会談してこの国会で補正予算を成立させることを決めたのですが、題目としては物価高、原油価格があがっています。それに伴う物価が上がっているということでその対策の財源として予算規模は2兆5000億円強の補正予算をこの国会で成立させることを与党が決めたということです。
――その時期ですが、政府側は補正予算について選挙の前に編成することになりますよね。それについていろいろありましたよね。
岸田総理も自民党もやはり選挙前に補正予算は組みたくないというのがありました。
――それはどういうことですか。
これは一つのジンクスなんですが自民党幹部の一人はこう言っています。「過去3回国政選挙の前に補正予算を組んだが、自民党はいずれも選挙で負けている」と。その3回とも、それをきっかけにその時の政権が政権を放り投げ出さざるを得なくなってしまったということです。
――それはどういう意味があるのでしょうか。
一つは選挙前の直前にありますよね。経済対策でいろいろなものを支給しますとか補助しますというのは、イコール選挙目当ての経済対策だということを有権者に見透かされてしまうという危険があります。
――有権者はちゃんと見ているということですよね。
そういう風な「またバラマキか」ということで有権者に反発あるいは嫌悪感を抱かせないためにも、ある程度慎重に本予算の予備費がありますから、それで賄おうとしていたのです。さきほどふれた3回の選挙敗北ですが、直近では2009年の麻生内閣の時には総選挙の直前に当時の過去最大の13兆9000億円という補正予算を組んで歴史的な大惨敗を喫してその時は下野。こういう苦い経験を自民党議員多くが持っているので、それで今回なおのこと慎重ということがあったと思います。
――2009年には、リーマンショックがありました。
この時は“リーマンショック”がありましたから、経済対策として必要だったとやむにやまざる理由があったのですが、それでも自民党ではジンクスや有権者の反発を気にして慎重でした。
――今回は慎重だったが背景にはどういったものが?
やはり公明党の存在があったのだと思います。公明党はなぜ補正予算にこだわったのか。様々な理由はあったのでしょうが、山口代表は22日、国会内で、夏には参選挙を控えているから選挙で政治空白が生じてしまうとして、あらかじめ選挙後を見据えて考えなければいけないと必要性を訴えています。
公明党 山口那津男代表
「この政治空白の期間に財源不足で政府の対応が十分できないということでは困る。国民もこうした不安を抱きながらの今の窮状を懸念しているわけでありますから」
政治空白を作るべきではない。選挙の先まで確保しておくのが政治の責任だと、建前の部分が大きいと思うのですが、山口代表はそう言っています。最近岸田内閣になってから自民、公明があまり意思疎通がうまくいっていないと感じることがあるんです。
――自公の関係を思い返してみると参院選挙の相互推薦でまとまらなかった記憶があります
もともと選挙の時には自公それぞれが推薦することをスムーズにやっていきます。本来でしたら参院選の場合は前の年の暮れまでには行うのですがそれがうまくいきませんでした。3月の自民党大会直前までずれ込みました。それと同じように今回も、すり合わせが出来ていなくて、本当にやるんだろうか?私たちも補正を組みますと宣言しても、実際の補正は選挙終わってからではないかとみていましたが、今回も公明党に押し切られてしまったということなんですね。自民党幹部の一人は“国民民主党が自民に近寄ってきているから公明は余計頑なになっているのではないか”と言っています。トリガー条項の時に国民民主党が自民党に3党協議がありました。政策的にすり寄っている。それに対しての警戒感が公明党にあることが一つと、自公の調整があまりうまくいっていないことを幹部は暗に認めています。
――なぜ調整がうまくいかないのか?
いま執行部間が自民党も公明党も幹部同士が腹を割って話す機会とか水面下で交渉できていないということを感じるところがあります。政治ですので相性とかそれぞれの考え方が反映されますからその“チグハグ感”が出たのかなという印象があります。
――自民党にとって公明党はパートナー。この隙間風的なものはどういう影響を及ぼすか?
当面は選挙の協力、どれくらい今まで通り票の協力関係ができるかそこが試される。ただ今回、参院選挙、野党の方が多極化して立憲民主その他の政党が分裂しています。野党が一体で戦うかどうかもまだわからない部分がありますから、自公はそういった状況から救われているというところはあります。
――野党は細分化されてまとまりが見えない状況があり、自民党は割と強気なのか?
多少楽観視しているところは今もあると思う。3回の負けた時のようなシリアスな状況ではないと思いますが、選挙はやってみなければわからないのと自公がどうも隙間風というか不協和音に近いものが出始めていますから、その部分が選挙に向けて何らかの穴というか崩れるところになってくるところになってくるというところはあります。
――今回の補正予算を含めた経済対策はどういった内容になるのでしょうか?
政府は22日、自民党に物価高対策について示しました。原油高対策が中心です。石油元売りへの補助金の拡充でいままで1リットルあたり25円であった補助金の上限を35円に引き上げます。またこれまでガソリンの小売価格の全国平均が172円を超えた部分を抑えて行こうという設定だったがこの基準価格を168円に引き下げます。これで価格を引き下げることを目指します。その他にも、所得が低い世帯への補助も盛り込まれています。注目したいのが補助金の支給は「9月末までに限る」ことが明記されています。臨時国会を開いて第二次の補正も考えているのだと思いますが、9月末という期限は参院選をしのぎたいという政府与党の本音がうかがえます。
――原油高による物価の高騰ということもあります。
非常に難しいのは今回の対策は原油高をどうするかに力点が置かれていますが、もう一つの不安要因“円安”があります。円安は国際的な要因でしてきょうもアメリカの方で利上げの動きが報じられたと思うが、そういった日米の金利差とかいろいろな要因があると思いますが、根本の問題はいまマーケットで円が魅力的な通貨ではなくなってきている。そういう危機感があると思います。
――円がどうして信頼されていないと?
円を買いたいという、円で投資したい円を購入したいという購買意欲がなくなってきているから中長期の話になってしまいますが、岸田総理、選挙でどういった通貨対策、円安に対処していくのか問われる難しい課題になると思います。
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