「マリウポリ制圧に成功」製鉄所の攻撃中止も指示・・・プーチン氏の思惑は?専門家に聞く(2022年4月21日)

「マリウポリ制圧に成功」製鉄所の攻撃中止も指示・・・プーチン氏の思惑は?専門家に聞く(2022年4月21日)

「マリウポリ制圧に成功」製鉄所の攻撃中止も指示・・・プーチン氏の思惑は?専門家に聞く(2022年4月21日)

ロシアのプーチン大統領は、ウクライナ東部の要衝マリウポリについて「制圧に成功した」と主張し、これ以上の攻撃の中止を命じました。その思惑はどこにあるのでしょうか。

◆防衛省防衛研究所の兵頭慎治さんに聞きます。

(Q.プーチン大統領の発言を聞いて最初にどう思いましたか)

兵頭慎治さん:「まだアゾフスタリ製鉄所の中にはウクライナの部隊が残っているにもかかわらず、唐突に攻撃中止を命じて、マリウポリを制圧したとアピールしました。これは恐らく国内向けのアピールで、プーチン大統領の焦りのようなものを感じました」

市民も多数残るとみられるアゾフスタリ製鉄所について、ショイグ国防相は「作戦が3~4日で完了する」と報告したのに対し、プーチン大統領は「これ以上の攻撃は得策ではない。中止を命じる。ロシア兵士や将校の命と健康を守らなければいけない。マリウポリの作戦は成功した。おめでとう」と話しました。

(Q.プーチン大統領の発言の真意をどう読み取りますか)

兵頭慎治さん:「アゾフスタリ製鉄所は、これまでロシア側は軍事的な制圧に手こずってきました。広大な敷地に加え、頑強な建物で、ロシアが化学兵器が使ったのではないかと言われたのも、この製鉄所でした。貫通爆弾などを使って破壊しようとしたとみられますが、思うような形で軍事制圧ができませんでした。地下室などに突入しても、ロシア側の犠牲者がさらに増える可能性があります。プーチン大統領は、最終的な制圧を断念、製鉄所を封鎖し、一部の部隊を東部2州へ投入し、総攻撃に専念させる判断をしたのではないかと思われます」

(Q.戦争全体の目標を下方修正したという見方はできますか)

兵頭慎治さん:「プーチン大統領は、5月9日の対独戦勝記念日に、何らかの戦果をロシア国内にアピールしなければならず、東部2州の完全制圧を目指していると想定されています。ただ、3週間を切った現在も、ドネツク州全体の制圧は思うようにいかない可能性が出てきています。東部2州は完全に制圧できていなくても、最低限“ネオナチ”勢力のアゾフ連隊から、マリウポリのロシア系住民を解放したとアピールするため、実際には完全制圧していないにもかかわらず、プーチン大統領は『制圧した』という宣言を行ったのでしょう。そのため、目標そのものが変わったわけではないとみています」

マリウポリに残る市民の避難について、ショイグ国防相は「大統領の指示に従って、マリウポリから14万2711人の市民が避難できた。人道回廊を設置し、製鉄所からは誰も出てこなかったが、他の民間人100人以上が脱出できた」としています。一方、ウクライナの副首相は「人道回廊は計画通りに機能しなかった」と話しています。

ショイグ国防相は「2000人以上の兵士が製鉄所の中にいる」と述べ、中に残っているとされる市民については触れませんでした。これに対し、プーチン大統領は「ハエも通れないように製鉄所を封鎖せよ。まだ投降していない兵士に武器を置くように言ってほしい。ロシアは国際法に従って、彼らの命と尊厳を保証する」と応じました。

(Q.『ハエも通れないように封鎖』とは、どういうことを意味しますか)

兵頭慎治さん:「かなり強い表現です。武器を置いて投降しないのであれば、兵糧攻めにする、地下室から出られないようにすることを意味すると思います。まだ残っているとみられる民間人だけでも救えないのかと心が痛みます。ロシア側が表明の中で『民間人が残っている』という言い方をしていないのも気になります」

(Q.プーチン大統領は発言のなかで『国際法に従って』と言及しました。これは生物化学兵器の使用が遠のいたとみて良いですか)

兵頭慎治さん:「攻撃中止の命令を発していますので、プーチン大統領の言葉を信じて良いのであれば、化学兵器を用いた行動は取らないのではないかとみられます。ただ、兵糧攻めは行われると思います」

プーチン大統領は会談で「ドンバスの人々や我が国の平和のため、真のヒロイズムを示し、亡くなった同志たちを永遠に記憶する必要がある」と東部2州についても触れました。

(Q.この発言に込められた意味をどう分析しますか)

兵頭慎治さん:「プーチン大統領はこの発言の直前に『マリウポリの作戦は成功したが、それだけでは不十分である』という前置きを置いて、ドンバスの話をしています。『ドンバス地方の人々のために、真のヒロイズムを示す』ということは、これからドンバス地方の総攻撃を行うので、ロシア側の兵士はそれに集中してほしいと示しているのではないかと思います。5月9日に向けたドンバス地方での攻防戦には大きな変化はなく、いよいよ決戦が始まるのではないかとみています」

こうしたなか、マリウポリの市長が会見を行いました。

マリウポリ、ボイチェンコ市長:「状況は今も以前も厳しい。どこもかしこもロシア軍に支配されていて『避難できる』と言いながら阻止してくる。きょうも200人の住民が集まって避難を待っていた。避難できるか分からないが待っていた。残念ながら多くの人が避難するのは危険だと考え、留まることにした。(Q.アゾフスタリ製鉄所の民間人の状況を教えてください)停戦が必要だ。10万人の民間人がマリウポリの戦地にいる。アゾフスタリ製鉄所は判断が難しいが、300~1000人の市民がいるとみられる。人数を数えるためには、停戦しなければならない。最低1日は必要だ。住民が生きているのか知るためには。残念ながら砲撃と爆撃が続いていて、数えることができない」

(Q.マリウポリの人たちに今後、人道的な措置が取られる可能性はありますか)

兵頭慎治さん:「人道回廊は、今まで何度も両国間で合意されながら、実現できなかった、あるいは不十分な状況が繰り返されています。その背景には、現場の部隊への指示・情報共有がなされていないのではないのかということと、ロシア側には正規軍以外にもチェチェンの民兵や外国の傭兵など様々な勢力が戦っていて、連携が取れていないため、両国間で合意されても砲撃や爆撃が続いている状況が繰り返されているのではないかとみられます」
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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