外交官ら8人国外追放 今後のロシアの“報復措置”は 【後藤部長のリアルポリティクス】

外交官ら8人国外追放 今後のロシアの“報復措置”は 【後藤部長のリアルポリティクス】

外交官ら8人国外追放 今後のロシアの“報復措置”は 【後藤部長のリアルポリティクス】

後藤政治部長のリアルポリティクスです。4月8日、政府はロシアに対して外交官ら8人の国外退去を決めたほかロシア最大手の銀行への資産凍結を決めました。これに対し、対抗措置を明言するロシア。今後どういった報復措置が想定されるのでしょうか。TBS報道局の後藤俊広政治部長が解説します。(聞き手:岡村仁美キャスター)

■日本政府がロシア外交官の国外退去を決定

後藤政治部長
4月8日、政府が新たにロシアに対する経済制裁を発表しました。それと同じタイミングで外交官ら8人に対して国外退去の決定を下すなど、大きな動きがありました。きょうは今回の日本の対応とロシアが報復措置を行うのかについて話を進めたいと思います。

ーー外交官の追放はかなり重い措置だという印象を持ちました。

過去に日本が外交官を追放したケースは3件確認されています。直近だと10年前、シリアの政府軍が関与した内戦で多くの市民が殺害された際、駐日シリア大使を国外退去処分しました。それ以外に私たちの歴史に関わる部分では約50年ほど前、昭和の時代に「金大中(キム・デジュン)事件」がありました。後の韓国大統領になった金大中氏が東京都内で拉致され韓国に連れ去られてしまうという、日本の主権侵害の事件です。それに対して当時の政府が外交官を国外退去処分としました。

ーーロシア側もこうした措置に対抗してくる可能性もありますね。

すでにロシア側は対抗措置をとる考えを示しています。当然こういった報復的な対応は日本政府の方も折り込んでいます。ただ日本政府は当初、外交官の追放について慎重でした。外交官を追放したとなると“目には目を”ということでロシアに駐留する日本の外交官に同じような措置をとる可能性があります。すると日本とロシアの外交交渉が進まなくなってしまいます。しかし政府関係者の1人は「各国の対応を注視して判断」したことを示唆しています。今回もアメリカだけではなくフランス、ドイツなどヨーロッパ諸国の対応に追随したのが実態です。一方、外交官の追放と同様に厳しいのが今回の経済制裁です。

▼日本からロシアへの経済制裁
・石炭の輸入禁止
・機械類、木材、ウォッカなどの輸入禁止
・ロシアの最大手銀行ズベルバンクなどへの資産凍結など

日本がロシアから輸入する石炭は全体の10%を超える規模となっています。石炭というと私たち個人のレベルではあまりイメージが湧きませんが、火力発電のもとになります。また、ウォッカといえば日本でもウォッカベースでのカクテルなどは人気がありますが、そういった私たちの生活に馴染みのある部分まで厳しい対応を取らなければいけないという状況なんだと思います。そして、ロシア国内最大手の金融機関、ズベルバンク(正式名称はロシア連邦貯蓄銀行)です。これまで余りに巨大すぎて国民生活に影響があり“Too Big”であるということから最初は凍結の対象を見送っていましたが、いよいよ“最後のカード”を切らざるを得なくなったと言うことだと思います。こういったことは日本としては思い切った対応だなと思います。

ーーかなり厳しくなっているとみていいんでしょうか?

ボクシングに例えると最初の経済制裁はジャブで、相手がどう動くか見ていくカードだったと思います。ただジャブを続けていてもなかなかロシアが態度を変えないということから重いクラスの制裁措置がどんどん切られてきているなという気がします。

ーー石炭の輸入禁止については慎重な見方だったのでしょうか?

これは岸田総理の会見でもありましたが、火力発電を続けていく以上は輸入代替地、代替国を決めて「ロシアからはエネルギー供給を依存しない」という切り離しをしなければいけないので、ある程度計算が立たない限りは踏み切れなかったんじゃないかと思います。

■「エネルギー資源」と「漁業」が日ロ貿易の柱

ーーこれからしばらく長引くことになりそうでしょうか?

日ロ関係は貿易の関係でいえば大きな柱は「エネルギー資源」と「漁業」が2本の柱です。実際、日露戦争の頃も「ポーツマス条約」が結ばれましたがその時議論になったのは沿海州(ロシア帝国が極東に置いていた州)の漁業権をどうするのかという点でした。やはり日本とロシアにとって漁業の問題は切っても切れない関係にあると思います。逆の見方をすれば日本とロシアの独自の交渉をするのであれば漁業交渉などを一つの突端としてさらに進めて行くことが日本ならではのアプローチだと思います。

(11日17:24)

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