軍事提供にロシアの“レッドライン”はどこ?「カギは米国世論」専門家解説(2022年4月8日)

軍事提供にロシアの“レッドライン”はどこ?「カギは米国世論」専門家解説(2022年4月8日)

軍事提供にロシアの“レッドライン”はどこ?「カギは米国世論」専門家解説(2022年4月8日)

ウクライナ東部のドネツク州にあるクラマトルシク駅にミサイル攻撃がありました。これまでに39人の死亡がわかっています。ウクライナのメディアは、ロシア軍が駅にミサイルを発射したと伝えています。

◆ロシア情勢に詳しい、防衛省防衛研究所の長谷川雄之さん、経営学が専門の早稲田大学ビジネススクール・入山章栄教授に聞きます。

(Q.ロシア側は、クラマトルシク駅への攻撃の事実を否定していますが、どう見ますか)
長谷川雄之氏:断定的なことはいえる段階ではありませんが、ロシアが東部に戦力を集中するということで、国際的な関心が集まっています。そうしたなかで、戦争をさらにエスカレートさせていく、または、停戦協議に悪影響を及ぼしたいという意思を持った勢力、偽旗作戦も含め、撃ち込んだという可能性があると思います。ある程度、現地の事情に精通していた勢力だと思います。

アメリカは7日、地対空ミサイル『スティンガー』や、対戦車ミサイル『ジャベリン』などを提供するとしています。チェコも戦車十数台を提供したことがわかっています。

(Q.こうした軍事支援が、ロシアを刺激することにはならないのでしょうか)
長谷川雄之氏:今後、欧米諸国を中心として、さらに武器の供与が進むということになれば、その可能性はあると思います。ただ、今回のウクライナ侵攻において、ロシアからのレスポンスが遅いように感じます。2014年のクリミア侵攻のときと比べると、今回、プーチン大統領、ロシア国防省、ロシア軍、外務省などとの総合調整が十分に行われていない可能性があり、プーチン政権の一連の行動を見ると、一体感がみられないと感じます。

停戦協議をめぐって、ロシア・ウクライナの間に大きな溝ができています。ロシアのラブロフ外相は6日にウクライナ側から提示された新たな合意文書案について、「最も重要な条項からの逸脱がみられる」と批判しています。これに対して、ウクライナのポドリャク大統領府顧問は「ラブロフ外相は交渉に、直接、関係しておらず、プロパガンダだ。ロシアの戦争犯罪の非難から注意をそらすための戦略」だと反論しています。

(Q.現在の停戦協議の現状をどう見ていますか)
長谷川雄之氏:ロシア側としては、交渉に積極的に応じるタイミングではないと見ています。東部2州を掌握していないという段階です。また、ブチャでの虐殺もあり、国際世論の波があるなか、なかなか、ロシアとしての前向きな交渉をする段階ではないと思います。

(Q.両国がまとまるには、どのようなことが必要だと思いますか)
入山章栄教授:経営の世界でも交渉というのは重要です。交渉がうまく進むときというのは、3つの要素がそろっている必要があるといわれています。「譲歩できるカード」「交渉決裂のライン」「落としどころ」です。「落としどころ」が、それなり見えている状況で、交渉が一気に進みます。しかし、いま、ロシアが大きく戦略を変える可能性があって、ウクライナ側からすると、ロシアのどこが落としどころなのかが見えなくなっている。ロシア内で意見の一致が得られていないとなると、ロシアの中でも落としどころがしっかりしていない。そうなると、両者、落としどころがしっかり見えていないなかでは、交渉の進展というのは、なかなか期待できないというのが現状だと思います。

(Q.ロシアを止めるカギは、どこにあると思いますか)
長谷川雄之氏:今後のプーチン大統領の態度について考えますと、ロシアが戦略上、一番、気にしているのは、超大国であるアメリカにおける国内世論だと思います。特に、対ロ認識については、一つのカギになるのではないかと思っています。ロシアの対アメリカ外交において、指導的役割を果たす大統領府の外交政策局が注目されます。外交政策局長のネベーロフ氏は、在米首席公使で、外務省の北米局長を務めたアメリカ通で、クレムリンが正常に機能していればという前提ですが、プーチン大統領に対して、ウクライナへの軍事支援などに対するアメリカ世論の動向を、綿密に分析して報告しているものと考えられます。アメリカの世論調査でも、対ロ強硬が強まっているということで、対ロ認識をめぐる国内世論がより厳しくなれば、プーチン政権の政策に影響を与えるということもあるのではないかと思います。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

ANNnewsCHカテゴリの最新記事