【解説】アブラモビッチ氏はキーパーソン?ロシア前向きな変化も…

【解説】アブラモビッチ氏はキーパーソン?ロシア前向きな変化も…

【解説】アブラモビッチ氏はキーパーソン?ロシア前向きな変化も…

ウクライナとロシアの停戦協議は、ここに来てかなり大きな進展の動きが見られます。一方で本当に停戦に至るのかについては、依然として厳しい見方も出てきています。今後の協議のポイントや“キーパーソン”とみられる人物についてなど、詳しく解説します。

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■ロシア「軍事力を大幅に削減」も…ゼレンスキー氏「信用する根拠はない」
29日に実施されたウクライナとロシアの停戦協議の終了後、ウクライナ代表団のポドリャク大統領府顧問は、次のように述べました。

ウクライナ代表団 ポドリャク大統領府顧問
「今日はロシア側も(ウクライナの)安全を保証する国々も合致できる点が話し合えた。そして、大統領同士で会談できる条件に達しました」

また、ロシア側も交渉がさらに進展すれば、「最終合意に向け、大統領同士の会談が可能だ」とした上で、次のように述べました。

ロシア国防省次官
「軍事力をキーウ(キエフ)とチェルニヒウ方面で大幅に削減することを決定しました」

一方で、ウクライナのゼレンスキー大統領は、自身のFacebookで次のような厳しい見方を示しています。

ゼレンスキー大統領
「協議から聞こえてくるシグナルはポジティブなものと言える。(しかし)これらのシグナルは、ロシアの砲弾の爆発を黙らせることはできない。我々を滅ぼすために戦い続ける国の代表の言葉を信用する根拠はない」

■「十分な成果」評価も…東部地域 “独立” 明らかにされず
対面での停戦協議は、今月7日以来、約3週間ぶりとなり、トルコのイスタンブールで4時間近く行われました。協議では、ウクライナ側から停戦に向けたいくつかの提案が行われました。

焦点となっている「ウクライナの安全保証」について、アメリカやイギリスなどに加え、ロシアとの関係が良好な中国やトルコなども参加する新たな枠組みが提案されました。ただ、この枠組みは、主権をめぐってロシアと対立している「クリミア半島と東部地域には適用しない」としています。

そのクリミア半島は、2014年にロシアが一方的に併合を宣言していますが、ウクライナは認めていません。そこで今回、ウクライナ側が提案したのは「今後、15年かけて協議する。その間、いかなる武力も行使しない」ということで、事実上、クリミアの問題を棚上げした形と言えます。

また、ロシアが「独立」を認め実効支配しているウクライナ東部地域の扱いについては明らかにされておらず、交渉の行方は不透明な状況です。

こうしたウクライナ側にとっては「歩み寄り」を見せた提案をした上で、交渉担当者は「プーチン大統領とゼレンスキー大統領による首脳会談を行うのに、十分な成果があった」と述べました。

一方ロシア側も、「まずは外相レベルでの予備的な調印が必要だ」とした上で、「交渉がさらに進展すれば、最終合意に向け両首脳の会談が可能だ」と述べています。
■富豪・アブラモビッチ氏、協議に出席…“プーチン大統領と会える関係”利用?
「歩み寄りは難しい」という見方も出ていましたが、なぜここに来て急に進展を見せたのでしょうか。

1つのカギとなった可能性があるのが、29日の協議の場にも出席していたことが確認されている、ロシアの実業家で大富豪「オリガルヒ」のアブラモビッチ氏です。ロシアとウクライナをつなぐ存在で、重要人物とみられています。

アブラモビッチ氏は、ロシアによる軍事侵攻を終わらせようと、正規の交渉団とは別の裏ルートで両国の間の仲介をしてきました。今月3日の非公式の停戦協議の後には、「中毒症状が出ていた」ということは29日も伝えました。

裏ルートで交渉をしてきた人物が、なぜ、表だった公式の停戦協議の場に出てきたのかについては、実はよくわかっていません。

今回の協議の場でも、アブラモビッチ氏は、ロシア側でもウクライナ側でもなく、トルコなどと並んで仲介役の場所に座っていたとみられ、あくまでも中立的な立場で参加していたことが推測されます。

BBCによると、アブラモビッチ氏はここ数週間、モスクワとキーウの間を行き来していたということで、プーチン大統領と“個人的に会える関係”を利用して役割を果たしていた可能性があるとみられています。

■「落としどころ」探っていた? アブラモビッチ氏の役割は…
アブラモビッチ氏の具体的な役割について、ロシアの安全保障などが専門である防衛研究所の山添博史主任研究官によると、「今回の協議の進展にアブラモビッチ氏の存在がどれくらい影響したかは、よくわかっていない」ということです。

ただ、「ゼレンスキー大統領が、アブラモビッチ氏を通じてプーチン大統領に“何か”を伝えたかったのではないか」と指摘しています。あえて非公式なルートを通じて、ゼレンスキー大統領の「本音」を伝えることで、プーチン大統領が受け取りやすい交渉の「落としどころ」、つまり、どういう条件なら妥協できそうなのかといったあたりを探っていたのではないかということです。

また、プーチン大統領としても、政治家とは一線を画すアブラモビッチ氏の裏ルートは「信頼」できるとみているのではないかということで、キーパーソンの役割を果たしている可能性があるといいます。
■停戦となるか…「だまされてはいけない」米側は慎重な見方崩さず
この停戦協議ですが、このまますんなり停戦といくのでしょうか。

ロシア側は、交渉の環境を整えるためとして、ウクライナの北部の首都キーウとチェルニヒウ方面での軍事活動を「大幅に縮小する」と発表しました。

アメリカの国防総省のカービー報道官も「キーウ周辺のわずかな部隊に後退の動きがみられる」としています。ただ、このロシア軍の一部の動きについては「再配置であり、真の撤退ではない」ともしています。その上でロシア側の「軍事活動を大幅に縮小する」との主張について、「誰もだまされてはいけない」と否定的な見方を示しました。

バイデン大統領も「様子を見たい。彼らの行動を見るまでは、何とも言えない」と慎重な見方を崩していません。

■今後の協議 ポイントは“東部地域”問題…専門家
では、今後、停戦のカギを握るウクライナのゼレンスキー大統領とロシアのプーチン大統領の首脳会談への見通しはどうなのか、現代軍事戦略が専門である防衛研究所の高橋杉雄室長に伺ったところ、ポイントになるのは、今回の協議で触れられなかったウクライナ東部地域の問題だといいます。

この問題は「両首脳の決断が必要で、最も重要な課題について開かれる首脳会談まで、前進はしているが、まだまだ難しそうだ」ということでした。

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停戦や和平に向けては、予断を許さない状況が続きそうです。
(2022年3月30日放送 「news every.」より)

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