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“キューバ危機”再来か 全米を射程に置く1万5000キロ 新型ICBMにバイデン大統領と国際社会は?【後藤部長のリアルポリティクス】
北朝鮮が発射実験した新型のICBM=大陸間弾道ミサイル。射程距離はアメリカの首都・ワシントンDCなどに届く1万5000キロを超えうると日本政府が発表しました。これまでの一連の発射とは“次元の異なる”ミサイルの出現に、アメリカ政府はどうするのか?60年前の“キューバ危機”を彷彿とさせる危機に日米をはじめとする国際社会はどう立ち向かうのか?TBS報道局の後藤俊広政治部長が解説します。(聞き手:長峰由紀キャスター)
――北朝鮮が新型の弾道ミサイルを3月24日に発射し、日本の排他的経済水域に落下しました。今回のミサイル発射は今までとは事情が違う、段階が違うという見解でしょうか。
やはりステージが変わった、上がってしまったというのが率直な印象です。3月24日に発射が確認された後、岸田総理は外遊で不在だったんですけれども、政府側は幹部、閣僚らが集まって情報収集を行いました。その対応が明らかに、これまでのミサイル発射時の対応と違う緊張感があると感じました。
実際に3月25日の閣議後の会見で岸防衛大臣は、今回のミサイルは改良中の新型のICBM=大陸間弾道ミサイルと考えられるということをまず表明しました。
そして我々が気になっているのは、ミサイルの飛行距離なんです。
――どこまで到達する能力を持っているのかということですよね。ミサイルの性能について改めて説明していただけますか。
今回、3月24日の段階では最高高度が6000キロを超えたということが発表されたのですが、実際にそれが大陸間、ミサイルが通常打たれる場合にどれぐらいの距離に進むのだろうかというと、岸大臣は通常の弾道で考えて計算する場合、十分にアメリカに届く距離であるということを言っています。
具体的な距離については、勿論ミサイルにどういった弾頭、いわゆる爆発物を載せるか、その重さによって変わるのですが、単純な計算でいくと一般的に考えられるのは1万5000キロを超えるのではないか、そういった射程だというふうに言っているんです。
この1万5000キロという距離を具体的にみていきます。防衛省が出している資料では、これまでは1万5000キロというのは想定の外にあったと思うんです。1万キロでどれぐらい飛ぶかという想定で、平壌を中心に計算してるんですが、ハワイが7000キロちょっと、1万以内ですとアメリカの西海岸、ロサンゼルスとかサンフランシスコなどの領域に到達するということになります。
そして今回は、1万5000キロという数値になりましたから、さらに外側に広がり、シカゴや、ワシントンD.C.、ニューヨークというような私たちにも馴染みのあるアメリカの都市が十分、射程圏内に入ってしまった。ある意味、これは日本以上に、アメリカにとって衝撃的な実験結果になったんじゃないかなと思います。
――アメリカにとっては相当な脅威であると?
そうですね。図らずも岸大臣は「これまでの一連の発射とは次元の異なる、我が国および国際社会の平和と安定に対する深刻な脅威」ということを言っていますが、この国際社会が意味するところのかなりの部分は、アメリカを指しているのではないかなと思います。
――アメリカに対する何かのアピールなのでしょうか。
そうですね、これまでの北朝鮮の外交をみてみますと、常にアメリカを意識してきました。おそらく、この30年程変わってないと思います。今回のミサイルに対しても政権幹部の見方としては、アメリカに対する挑発であろうということ、そしてウクライナに乗じてバイデン政権を交渉の場に出すことも考えてるんじゃないかと。
ミサイルの発射実験があったタイミングに、バイデン大統領はベルギーでG7会合を控えていました。まさにそこでは、ウクライナの話を7か国でどうこれからやっていこうかという首脳会合だったんですけれども、その直前にこういったことが起きた。
おそらく北朝鮮側は、バイデン大統領がアメリカに不在で、G7諸国の首脳とこういったやりとりをするであろうということも想定した上で、ミサイル実験を行ったのではないかとみられているんです。
――北朝鮮は、その場を選んでいるわけですか?
おそらくそういうタイミングも意識して、特に今回の場合は明らかに日本に対してよりも、明確にアメリカに対して発信をしたいんだという意思を感じます。バイデン大統領が国際会議に向かっているというタイミングが、判断の材料になったのではないかなと思います。
――打ち上げから一夜明けて、北朝鮮のメディアが実験の様子を写真で公開しましたが。
成功であるということをアピールしたいのだと思いますが、これもアメリカを中心とした国際社会に自分たちが成果を上げているということを示したいと。北朝鮮の国の事情を見てもお分かりだと思うのですがミサイル実験がうまくいかなかったときというのは往々にして沈黙する、何も言わないんですね。
今回は金正恩氏が、この発射実験を視察していたということも発表しています。北朝鮮側としては実験成功したんだっていうことを、まさに内外に訴えたい。そのための手段がこの新聞なのではないかと思います。
そして今後、私たちが注目するのは、やはりアメリカ側の動きです。国際社会は今、このミサイル実験まではずっとウクライナの問題をどうするかということに注力、神経を集中していましたが、ウクライナ情勢だけではなくて日本も含め今1度北朝鮮の今回のような軍事的な挑発について、どう向き合っていくのかという2つ目の課題に突き当たった、ぶち当たっていると言えると思います。
そして早速、国際社会は国連の安保理で緊急会合を開くことを決めています。今回は公開で行うということなんです。
――公開することには何か意味があるのでしょうか。
普段は公開という形をとってないものですから、おそらく公開することには何らかの意図があると思います。
これは私が想像することですが、最近の国連の安保理ではウクライナの軍事侵攻の時に、5大国、常任理事国のロシアが反対しました。5大国には拒否権がありますから、それを行使したわけなんですけれども、今回アメリカ側が主導で、この安保理緊急会合が開かれます。ですから、おそらくそういったロシアの動きなども意識したものなのではないかと想像します。
いずれにしても、まず緊急会合で注目すべきは、アメリカ側がどういった言葉で北朝鮮を非難するのか。これはすなわちアメリカの、今回の発射実験に関しての危機意識や、北朝鮮に今後どう立ち向かっていくのか、そういったことを図る重要なサインになるのではないかと思います。
――北朝鮮はアメリカを脅かして何をしたい、してほしいのでしょうか。
経済的な支援というものの枠組みや色々ありますが、やはり元々、北朝鮮が恐れているのは、アメリカが本気になって北朝鮮を攻めてきたらどうしようという恐怖感があったんですね。それに対抗するために、ずっとミサイルの実験でや核実験を行って威嚇するという、威嚇のメッセージというものを続けてきたんですけれども、これがどちらに転ぶかわからない。
今回、アメリカにとっては、おそらく私が思うに60年前に、同じような危機があったんですけれども、キューバ危機というのがありました。つまりキューバ危機というのは、当時のソ連と核戦争直前まで行くような危機だったんですけれど、直接の原因としてはソ連がキューバにミサイル基地を作ったんですね。つまり、このミサイルというのは、キューバはアメリカの隣国、海を挟んだ隣国になりますから、そこからミサイルが飛んだら、アメリカ本土は襲撃されてしまうということなんです。
60年前はキューバとアメリカの距離だったんですけれども、今は北朝鮮とアメリカでもそういうような危機が、実際もう生じているのだという、おそらくアメリカの政権幹部からみれば、60年前と同じ安全保障上の危機が迫ってるんだと思います。
当時、ケネディ大統領でしたけれども、キューバを海上封鎖して、基地を撤去するまではもう絶対、物資をキューバに入れないんだという対応でした。ですから世界はあと数日、こういうふうな動きが続いていれば核戦争が起こったんじゃないかと。それと同じような意識は、おそらくアメリカも持ってくるんじゃないかなと思います。
――当時、ソ連の指導者というのはフルシチョフ書記でしたよね、交渉相手が。
そうです。中々フルシチョフ書記としても、アメリカに外交交渉で負けちゃうということになりますから、チキンレースというのか睨み合いが13日間に渡って続いたんですけれども、当時は雪解けなどとも言われたアメリカとソ連がやや融和した時期ではあったので、フルシチョフ書記はその時の指導者でしたから、これはこのままいくと本当に大変なことになるということで、最後は降りたということなんです。
――今回はどうかということですが。
分からないです。ただこれは、アメリカが何らかの軍事的なアクションというのに乗り出した場合、北朝鮮との地理関係でいくと、日本が多かれ少なかれ少なかれ影響を受けます。そういった意味でいくと、今後のアメリカの対応というのはウクライナ情勢とは別の意味で日本にとっても何らかの危機、リスクを伴うことは十分あり得ると思います。
――こういう危機が迫ってくると、それこそ強い国になろうという声も多分他方から上がってくると思います。そのバランスがすごく大事ではないかと。
それとやはり中国に対してどういうふうな、これはアメリカも勿論アクションをかけると思いますが、日本も同時にやはり中国が今、数少ない北朝鮮に影響を及ぼす国だと思いますから、そこは注目したいと思います。
(25日19:10)
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