ロシアを止められるのか『化学兵器』への対応は・・・NATO首脳が緊急会合 専門家に聞く(2022年3月24日)
ロシアによる軍事侵攻から1カ月。ウクライナ情勢が緊迫するなか、NATO(北大西洋条約機構)が緊急の首脳会議を開きました。
NATOの加盟国はアメリカ・カナダ・アイスランドを含む30カ国。ウクライナは入っていません。防衛が最大の目的で、加盟国が武力攻撃された場合、全加盟国への攻撃とみなして集団的自衛権を行使することが条約に書かれています。最高意思決定機関は北大西洋理事会で、全会一致が原則です。
ウクライナ情勢では、意見が分かれているところがあります。ウクライナの隣国ポーランドは「ウクライナへのNATO平和維持軍の派兵」を提案していますが、アメリカは派兵に慎重な姿勢を示していて、立場が分かれている状況です。
◆NATO首脳会議が開かれたベルギー・ブリュッセルにいる金指光宏記者に聞きます。
(Q.現場の状況を教えてください)
首脳会議が始まって4時間ほど経ちますが、予定を1時間ほど超えて続けられています。
私がいるメディアセンターには、多くの国からたくさんのメディアが集まっています。今回、緊急の首脳会議ということで、記者登録できる期間は短かったのですが、500人が記者登録を済ませていて、非常に多いと言えると思います。ロシアによるウクライナ侵攻が始まって1カ月。西側諸国の首脳が一堂に会して何を決めるのか、何を世界に発信するのかに関心が集まっています。
私は去年の6月もNATOの首脳会議を取材しましたが、その時に比べて、ロシアの脅威を肌で感じている東ヨーロッパのメディアが多い印象を受けます。ルーマニアの記者に話を聞いたところ『国民の危機意識の高まりとともに、NATOへの関心が高まっている』『ウクライナで化学兵器・核兵器が使われた時に、自国がどうなるのか。ロシアによる侵攻が自国に及んだ時にNATOは守ってくれるのか。そういったところの関心が高い』と話していました。
◆国際安全保障に詳しい防衛省防衛研究所の高橋杉雄さんに聞きます。
(Q.NATO首脳会議、どんな点に注目していますか)
注目点は3つあります。1つは、NATOの一体性をどのような形で見せられるか。加盟国のなかで温度差があるようなので、書かれたことと、書かれていないこと両方重要だと思います。
2つ目が中国です。NATOのストルテンベルグ事務総長は23日の記者会見で、中国をかなり批判していて「それは議論される」と言っていました。アメリカのバイデン大統領は、先週の米中首脳会談の説明をしながら中国問題を話し合うつもりだと思います。それが表に出てくるかは別にして、どのような形で議論されたのかが気になります。
恐らく最も重要な点が、生物・化学兵器への対応です。使われた場合、現在のように使われることが切迫していると考えられた場合に何をするのか、どのようなメッセージをロシアに送るのか。NATO首脳レベルでのコンセンサスがどれくらい作れたかが重要になると思います。
(Q.オンラインで参加したウクライナのゼレンスキー大統領は『飛行禁止空域』の設定を改めて切望しました。今回のNATO首脳会議で合意する可能性はありますか)
まずないと思います。引き続き、ウクライナの空の防衛は、ウクライナ人の手でやってほしいということで、武器の供与などが拡大される可能性はありますが、今の段階でNATOが飛行禁止空域の実施に関わることはないと思います。
(Q.NATO内での温度差をどこで一致させると思いますか)
確実なのは、ウクライナの支援をしましょうということ、もしNATO加盟国に戦火が及ぶことがあれば共同防衛で戦うこと。問題はその中間です。化学兵器の使用や人道的危機など、NATOに直接攻撃は及ばないが、ウクライナ国内で状況が悪化した場合、どのようなメッセージを送るか、どう対応するかについて一致点が見いだせていません。
ただ、あらかじめ一致点を見いだしてロシアに伝える必要性は必ずしもありません。どこかにレッドラインのようなものを示してしまうと、ロシアはその下をついてきます。少なくとも、何が一致していないかをお互いに理解することが必要だと思います。
(Q.ストルテンベルグ事務総長はブルガリア・ルーマニア・ハンガリー・スロバキアに新たにNATOの部隊を配備すると述べました。これはロシアにどういう影響を与えると思いますか)
これによって、黒海からバルト海までNATO部隊が配備されることになります。ウクライナより西には戦火を拡げることはできないという意味で、抑止力の強化になると思います。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
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