「ロシアと貿易禁止を」ゼレンスキー大統領が国会演説 対ロ貿易の焦点“エネルギー”(2022年3月23日)
ウクライナのゼレンスキー大統領が日本時間23日午後6時から、日本の国会で演説しました。オンライン形式で行われた演説は約12分に及びました。
ゼレンスキー大統領は、ウクライナが直面している危機について「核施設をロシアが戦場に変えた」「サリンなど化学兵器も準備しているという報告を受けている」と述べました。また「家族や隣人が殺されても、きちんと葬ることすらできない」と厳しい現状を訴えました。
◆ロシア情勢に詳しい、防衛省防衛研究所の兵頭慎治さんに聞きます。
(Q.演説をどう受け止めましたか)
兵頭慎治さん:「日本人の心に沁み込んでくるような演説だったと思います。これまでウクライナの現状を、メディアを通じて間接的にしか知ることができませんでした。今回、一国の大統領が直接、自らの言葉で日本人に対して、現場の惨状やロシアに対する怒りを伝えました。非常に重いメッセージだったと思います。
日本に対して『アジアで初めてロシアに圧力をかけてくれた』と謝意の表明がありました。アジアの中でも中国のように、ロシアに対する経済制裁に積極的でない国がありますが、日本のリーダーシップを高く評価して頂いたことは、非常にありがたいことだったと思います」
ゼレンスキー大統領の演説では、冒頭から何度か「原発」という言葉が出ました。「チェルノブイリ原発が支配された。事故があった原発を想像してみてください」「すぐに復興も考えなければいけない。避難した人が故郷に戻れるように」と、過去の原発事故を想起させるような発言もありました。さらに「侵略の津波を止めるために、ロシアとの貿易禁止、各企業は撤退を」と強い言葉を使って訴えました。
◆政治部官邸キャップ・山本志門記者に聞きます。
(Q.ゼレンスキー大統領の演説に対し、日本政府はどう受け止めていますか)
山本志門記者:「日本政府は、今回の演説を厳粛に受け止めながらも、神経をとがらせてもいました。というのも、これまで大統領が演説した欧米諸国のなかには、それぞれの国の事情をかなり研究したエピソードを披露していましたし、そのなかで、批判的なくだりもありました。
そうしたなかで、日本に対しては何を求めてくるのか。事前調整もないまま、まさに『出たとこ勝負だ』と緊張感をもって構えていました。結果としては、これまでの日本政府の対応を『高く評価された』、または『思ったより発言は穏便だった』などと受け止められていて、政府内からは、ひとまず胸をなでおろした様子がうかがえました。
一方で、ゼレンスキー大統領から『ロシアとの貿易禁止』について注文があったので、今後、日本政府の対応のポイントになってくるかもしれません」
(Q.具体的には、どういうところがポイントになりますか)
山本志門記者:「ロシアとの貿易、あるいは経済協力については、そのほとんどを縮小する方向で進めています。今後、議論になってくる可能性があるのは、ロシアからの輸入の6割を占めるエネルギーについてです。特に、日本政府や企業が出資する天然ガスのプロジェクト『サハリン1、2』について、岸田総理は
『ビジネス上の取引なのか、失うとすれば大きな不利益を被る日本の権益なのか、明確に区別する。このプロジェクトを大事にしていかなければいけない』と明言しています。ここから撤退すれば、さらにエネルギー価格の高騰を招きかねないとも警戒していて、あくまでもエネルギー面での貿易関係は継続する方針を貫いています。ただ一方で、日本にとって守るべきものという立ち位置がはっきりすればするほど、ロシア側が強力な対抗措置として、日本を締め出してくる可能性も出てきます。今後のエネルギーの安定供給という観点と同時に、ロシアに対する厳しい制裁措置をどう取っていくのか。難しい立ち位置が迫られていると思います」
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
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