“生物兵器”使用は?ゼレンスキー氏“国民投票”発言の影響は?専門家解説(2022年3月22日)

“生物兵器”使用は?ゼレンスキー氏“国民投票”発言の影響は?専門家解説(2022年3月22日)

“生物兵器”使用は?ゼレンスキー氏“国民投票”発言の影響は?専門家解説(2022年3月22日)

ウクライナへの激しい攻撃が続くなか、生物・化学兵器の使用まで取りざたされています。ロシア情勢に詳しい防衛省防衛研究所の兵頭慎治さんに聞きます。

アメリカのバイデン大統領は、「追いつめられたプーチンの偽旗作戦として、ウクライナが生物・化学兵器を保有していると言うが、これは彼自身が使用を検討している兆候だ」と発言しました。“偽旗作戦”とは、さも別の誰かの攻撃と偽ることです。これに先立って、ロシアの国連大使が、「ウクライナによる生物兵器の計画をアメリカが支援している」と発言していました。

(Q.実際に使用する可能性はありますか)
バイデン大統領は「明確な兆候がある」と発言していますので、何らかのインテリジェンスの情報、使用に踏み切るロシアの動きを察知していると思います。仮にロシア軍が使用に踏み切る場合、偽旗作戦、ウクライナ軍が使ったと見せかけて、自らが使う可能性があります。どこで使用されるのかというと、戦闘が激化していて、ウクライナ軍が存在する場所。首都のキエフというよりは、マリウポリをはじめとした南部・東部、戦闘が激化している場所で、残念ながら使われる可能性があるとみています。

(Q.制圧するために、生物・化学兵器の使用する必要がありますか)
軍事的に抑えるだけということであれば、必ずしも生物・化学兵器の使用に踏み切る必要はないと思います。ただ、ロシア側は、これまで新たな兵器の使用に踏み切っています。いずれキエフで使われるかもしれないという見せしめ的なところもある。最終的にゼレンスキー政権に対して、心理的・精神的圧力を加えるという狙いがあるのではないでしょうか。

(Q.生物・化学兵器の使用が現実的になった場合、現在、直接介入を避けているNATOは見過ごすのでしょうか)
難しいところだと思いますが、一部、アメリカの保守派やポーランドはじめとした国々からは、もう少し踏み込んだ軍事的な介入をすべきではないかとい意見が出ています。万が一、ロシアが生物・化学兵器の使用に踏み切る。その次は、考えたくはありませんが、戦術核などを使用するという紛争のエスカレートが進むと、直接、アメリカ軍が介入し、抑えるという意見が高まっていくと思います。しかし、バイデン大統領は、繰り返し、「直接、派兵することはない」と明言しています。軍事介入をするべきだという声が高まるなかで、ロシアのエスカレートする軍事行動に、どう向き合っていくのか。アメリカは、非常に難しい局面に直面しつつあります。

ウクライナのゼレンスキー大統領は、「いかなる妥協案も国民投票での決定が必要」と発言しました。どのような項目かといいますと、ロシアが占領したクリミアの主権問題、親ロシア派地域の独立、各国が提供するウクライナの安全保障についてです。

(Q.この発言について、どう受け止めますか)
戦時下にあるウクライナで、こういう国民投票が実施できるのかと素朴な疑問を感じました。国民の4分の1の1000万人が国内外に避難し、ロシア軍が軍事的に制圧した地域が、南部・東部にあります。そして、いま、キエフを包囲しようとするなかで、国民投票を平穏に実施できるかが疑問ですので、実現性は高くないと思います。

(Q.この発言が、今後の停戦協議に与える影響はどうでしょうか)
国民投票で、クリミア半島や東部2州の帰属問題などが掲げられています。ゼレンスキー大統領は、国民投票をすることによって、国民の多くがロシアへの帰属を認めていいというのであれば、ウクライナは態度を変える余地はあると、譲歩しようとしているようにも見えます。ただ他方で、停戦協議で、首脳レベルの妥協案がまとまったとして、そのあと、国民投票にかけることになります。そうした場合、首脳の間で妥結したものが国民投票で否決される可能性もありますので、むしろプロセスが複雑化しますので、停戦協議のハードルが上がった気がします。

こうしたなか、日ロ関係にも大きな影響が出てきました。ロシアが発表した日本への対抗措置です。「日本による一方的な制裁が明らかに非友好的である」として、「平和条約交渉の中断する」としています。これに対して、岸田総理は22日の国会で「極めて不当で受け入れられない」と答えています。

(Q.これについてはどう受け止めましたか)
日本も欧米諸国と同じで厳しい経済制裁を科しましたので、これは、ある程度は予想されたことではあります。これによって、平和条約交渉も停滞し、日ロ関係全体も経済面で後退していくと思います。ほかの国もロシアとの関係が悪くなりますので、我々も受け止めなければいけないと思います。ただ、平和条約交渉が停滞するからといって、北方領土問題をあきらめていいわけではありません。以前、ソ連が解体した直後、ロシアの経済が疲弊したときが、北方領土問題の解決の好機だったと、よく指摘されます。これからロシアは、国際社会から強い経済制裁を科されているので、今まで以上に厳しい状況に追い込まれます。そうしたなか、また、北方領土問題を解決する次の機会が来る可能性があるかもしれません。引き続き、北方領土の返還について、ロシアに対して要求を粛々と進めていくべきだと思います。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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