鈴木エイト氏はどう見た?山上被告に「無期懲役」の判決「非常に重い判決で、認定内容にも問題ある」
(中谷しのぶ キャスター)
殺人罪などに問われた山上哲也被告の裁判で、先ほど奈良地裁は山上被告に無期懲役を言い渡しました。長年旧統一協会を取材し、今月山上被告に2度接見したジャーナリストの鈴木エイトさんにもお話を伺いながら、今日の判決について見ていきたいと思います。
その鈴木エイトさんと、裁判を取材した神田記者が奈良地裁前にいます。まずエイトさん、今回の判決を聞かれて率直にどう感じられましたか。
(鈴木エイト氏)
非常に重い判決で、かつ問題がある認定内容だったと思います。
(中谷しのぶ キャスター)
神田さん、その判決について詳しく教えてください。
(神田貴央 記者)
はい。今回の裁判では、母親の旧統一協会への多額の献金など、山上被告の生い立ちをどこまで量刑に考慮するかが最大の争点となっていました。
ただ奈良地裁は検察側の主張を全面的に認め、求刑通り無期懲役を言い渡しました。
山上被告の生い立ちについて、裁判所は「不遇な側面が大きいと言えるが、激しい怒りを抱いたとしても、現実に殺人という行為に至ることには大きな飛躍がある。短絡的で自己中心的な意思決定をし、生い立ちを背景にすることは認められない」と判断しました。
その上で「強い非難が妥当で、動機や経緯に大きく酌むべき事情は認められない」とし「およそ300人の聴衆や至近距離に関係者が複数いる中で、銃を2回発射していて、悪質性・危険性がほかの事件に比べても著しい」と厳しく批判しました。
(中谷しのぶ キャスター)
鈴木エイトさん。判決を受ける被告の様子はどう思いましたか。
(鈴木エイト氏)
証言台で判決を聞いたときは当然こちらから顔は見えず、微動だにしなかったのですが、その後、被告人席に戻る際には、少し呆然としているような印象を受けました。
(中谷しのぶ キャスター)
そして先ほど、今回の判決認定にはいくつか問題があったと冒頭でお話しいただきましたが、鈴木エイトさんからご覧になって、どの点が問題だったと感じますか。
(鈴木エイト氏)
はい。発射罪であるとか犯行態様については、確かにそういう面もあるかもしれません。ただ、弁護側が最も強調していた情状の部分について、彼の生い立ちや家庭環境といった点がまったく加味されず、“酌むべき事情は認められない”という言葉で、一刀両断に断罪された内容でした。そこで片付けてしまっていいのか、彼一人に背負わせてしまっていいのか、ということを聞きながら感じました。
(中谷しのぶ キャスター)
エイトさん、今月14日とおとといの2度、山上被告と接見されたということですが、接見中の山上被告はどんな様子でしたか。
(鈴木エイト氏)
はい。非常に、法廷で見る時よりも、一対一で、刑務官はいましたけれども、会った彼はリラックスした様子で、ある程度フランクに話をしてくれました。法廷で見る彼の印象とはだいぶ違っていました。
(中谷しのぶ キャスター)
中でも印象的だった言葉などはありましたか。
(鈴木エイト氏)
はい。いろいろな会話をし、主に私の裁判や事件に対する見解を伝えて、彼に確認を取っていた場面でした。その途中で、彼が唐突にこう言ったんです。
「僕は統一協会はゆずれないので」という発言をしたんですね。
その文脈からすると、家族が受けた被害、自分自身が受けた被害、そして統一協会が絡んだ問題。“そうしたものは自分とは関係ないんだと、関係ないところで生きていくという人生を僕は選べなかった”、という意味に私は受け取りました。
統一協会の問題があったからこそ、自分はこの事件に至った。そこが譲れなかったところなんですと。
今日の判決の中でも、裁判長の言葉の中に「彼は家族思いである」という言葉があったんですね。裁判体も、その点は一応認定した上でしたが、それだけに、今回のような判決になったことは非常に残念に思います。
(中谷しのぶ キャスター)
エイトさん、政治家を対象にした暴力という点については、どのようにお考えですか。
(鈴木エイト氏)
はい、私もその点は気になっていました。
例えば、これが“教団幹部を殺害した事件”であれば、彼の生育歴や生い立ちといった事情が、ストレートに情状として反映された可能性があると思うんです。
しかし、その矛先が“政治家”に向かったという点で、一般の多くの国民は“そこに飛躍がある”と思っていると思うんですが、実は私自身は、そこに大きな飛躍があるとは感じられませんでした。もちろん、政治家が殺されていいとはまったく思っていません。安倍元首相を含めてです。
ただ、そこにたとえば、彼の中で教団への恨みや憤り、復讐心が、被害者が安倍さんと聞いたときに「そうなってしまったんだ」という感覚を僕も持ったし、その感覚は、彼と接見した際にも改めて共有できたんです。
そういうところが一般国民を代表する裁判員に十分伝わらなかった。伝わらなかったということは、すなわち、立証ができていなかったということだと思うんです。
教団への恨みや、教団に憤りを持った人間が、教団と関係を持った政治家へと向いてしまった。そこに、どこまで理解可能性があるのか、という点をしっかり提示できるだけの証拠が、提示できていなかったと思います。
結果として、弁護側の主張がまったく認められない判決になってしまった。やはり、そこの立証が尽くされていなかったと思います。
(中谷しのぶ キャスター)
政治との関わりという点が指摘されていますけれども、今後繰り返さないためには、どのような点が必要だと思われますか。
(鈴木エイト氏)
彼は“社会問題の被害者”でもあるということが重要な点なんですね。社会問題には被害者がいますけれども、その被害者が重大な事件を起こした。であれば、彼のような存在を今後生み出してはいけないんです。
そのために何ができるのか、この裁判は非常に重要な検証をすべきなんですけれども。彼が罪を償った上で社会に復帰をし、自分の経験を後世に伝え、「自分のような存在を生み出さないための存在になってほしい」と接見のときにも伝えた。
しかし、今回の判決は、そうしたチャンスすら奪ってしまうような判決になってしまったと感じています。
現状はこうした形ではありますけれども、二度と同じような問題が起こり得ない社会を作っていくためにも、今回の判決内容をしっかり検証して、政治家を含め、さまざまな問題がまだ残っていますし、実際には何の検証もされていません。ですから、徹底した検証が必要だと改めてこの裁判を通して思いました。
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