離島で奮闘する「島育ちの医師」と「都会育ちの医師」 島民の“命と健康”を守る【Jの追跡】【スーパーJチャンネル】(2024年1月18日)
島根県にあるいくつもの離島に、小さな診療所があります。離島で島民たちの命を守る「島育ちの医師」と「都会育ちの医師」。離島で奮闘する2人の若きドクターを追跡しました。
■知夫里島で33歳医師が奮闘
日本海に浮かぶ島根県隠岐諸島の小島・知夫里島。人口はわずか600人。島の美しい景観は、ユネスコの世界ジオパークにも登録されています。
その島に小さな診療所があります。高齢者から小さな子どもまで、多い日には30人の患者が訪れます。
勤務するのは加藤輝士医師(33)。医師不足の離島医療では、内科や外科などを問わず、すべてを1人で担当します。
この日は、足首が大きく膨れ「痛い」と訴える85歳の女性が訪れました。
加藤医師
「この黒いところが何かしら液体がたまってる。たぶん血」
患者
「それで腫れてるの?」
10日前に倒れてきたバイクで足首を打撲。その後、大きく腫れてきたといいます。
加藤医師
「触ってるのは分かる?」
患者
「足の甲がピリピリする」
痛みをやわらげるため、皮膚の下にたまった血液を注射で抜き取ることにします。すると…。
患者
「注射怖い。かわいそうなことせんとって」
加藤医師
「ごめんなさい。チクッとしますよ」
患者
「久しぶりに痛い目したわ」
■“トータルでの健康管理”を心がけ
実は、加藤医師はこの知夫里島育ち。島根大学の医学部を卒業後、出雲市内の病院に勤務。そして去年4月、家族とともに故郷である知夫里島に移り住みました。
加藤医師
「(島の)人口が減っていて お店も減っちゃったりとか、いずれなくなるかもしれないと感じていたので。好きな知夫村を守るために貢献していかないといけない」
診療所を訪れる患者のほとんどは加藤医師が古くから知る人です。
この日は、中学時代を知る女性教師が訪れました。
中学時代を知る教師
「大変優秀な何でもできる。特に長距離が速かったと」
島民の病歴だけでなく、家族構成や生活の様子なども把握しているという加藤医師。心がけているのは、それらを生かしたトータルでの健康管理。そのため…。
看護師
「なので、診察時間は長いですけど」
患者さんの生活や悩みを聞いたり、会話の流れから追加で検査をするなど、診療が20分を超えることもしばしばあるといいます。
看護師
「患者さんのすべてに興味がある感じ」
■高齢者施設から戻るも…気にかける加藤医師
この日は、島の高齢者施設で新型コロナのワクチン接種を行います。
すると、「具合の悪い入居者を見てほしい」と依頼がありました。
脱水症状だといいますが、原因はお酒の飲みすぎでした。
加藤医師
「お酒を飲んでもええですけど、飲んだらお水を飲んでください」
女性
「大したことはないかね?」
加藤医師
「今はね」
診療所に戻った加藤医師ですが、先ほどの女性が気になっている様子です。
加藤医師
「お酒どのくらい飲んでるか、誰か見に行っている?」
看護師
「ケアマネージャーが」
女性を担当しているケアマネージャーに「小まめに水分をとらせるように」と指示を出します。なぜ、そこまでするのでしょうか?
加藤医師
「僕することないので」
■望みは…島の人が生まれ育った地で最期まで暮らせること
「すべての島民の健康が気になって仕方ない」という加藤医師。診察の休憩時間を使い、先日、バイクで足を打撲した女性の自宅へ向かいました。
早速、症状を確認します。
患者
「血がまだ…」
加藤医師
「熱いな」
診察後、突然、コーヒーメーカーが故障。すかさず加藤医師が近寄ります。色んなことが気になるようです。
加藤医師
「(島に)家を建てるかどうしようかと思って」
患者
「最高。みんな喜ぶわ、ははは」
加藤医師が望むのは、島の人が生まれ育ったこの地で最期まで暮らせること。
加藤医師
「人が生まれて亡くなるのは普通のこと。それができないのは変だなと」
実は、島の高齢者はひとたび重い病気にかかると、医療が整った病院に移るため、好きな島を離れざるを得ないといいます。
加藤医師
「(この島で最期まで暮らせるように)していくのが僕に任されている仕事だろうなと」
■「総合診療」離島医療の課題の解決に?
この日は、知夫里島から船で17分の西ノ島へ早朝から向かいます。
加藤医師
「今、週3回こっちに来ていて」
知夫里島の診療所と西ノ島、中ノ島を含め4つの医療機関が連携。唯一、西ノ島にだけ入院が可能な病院があります。
緊急手術が必要な場合は、ドクターヘリを要請して松江市などの病院に速やかに搬送します。
離島医療の大きな課題は、設備や人手の不足。そこで、この病院は「総合診療」を取り組んでいます。
総合診療では、1人の医師が内科や外科、耳鼻科、時には眼科などまで、すべてに対応しなくてはなりません。
加藤医師
「ここは『全部診るよ』という医者じゃないと働けないと思います」
しかし、それにより加藤医師が島で行っているような患者と密接に関わる、いわゆる「主治医」的な医療が可能になるといいます。
■総合診療の現場を学ぶため移住 東京育ちの33歳医師
そんな総合診療の現場を学ぼうと、島にやってきたのが北村亮医師(33)です。出身は東京都ですが、おととし4月、島根県の西ノ島に移住しました。一体、なぜ?
北村医師
「総合診療科は、どんな患者さんの声にも自分たちが対応する。こういう医療や医者が日本全国で必要になってくる」
専門的に診療科が細分化した反面、高齢化が進むなか、改めて注目される総合診療に北村医師も可能性を感じたといいます。
この日、島では内視鏡手術が行われます。内視鏡の経験が少ない北村医師に、加藤医師が実際の手術を通して教えていきます。
手術後、病院の一角では内視鏡の練習をする北村医師の姿がありました。
訪問診療も島に来て初めて経験しました。
重たい医療機器を自ら担ぎ、患者の自宅へ向かいます。
北村医師
「家にある椅子を借りてエコーを置きます。いろんな工夫をしながら」
初めての経験もある島の総合診療。北村医師は当初、戸惑ったといいます。
北村医師
「自分は初めて。やりながらちょっとずつ勉強して」
■単身赴任中の北村医師 家族とのテレビ電話が心の支え
東京育ちの北村医師。島の生活で一番困ったのは食事でした。島にはコンビニ店がありませんが、冷蔵庫の中には…。
北村医師
「食パンも患者さんからもらった。自前で作ってくれて」
さらに、シャケや干物まであります。
北村医師
「患者さんからいただいたもので生活してます」
実は北村医師は現在、単身赴任。3カ月前に長男が生まれたばかりです。
妻 小貴さん
「乳児訪問の人が来てくれて」
北村医師
「そんなのあるんだ」
小貴さん
「5.3キロでした」
北村医師
「また増えた」
遠く離れた家族とのテレビ電話が心の支えです。
■当直中に緊急連絡…たった1人で対応
ある日の夜、緊急の連絡が入りました。この日の当直は北村医師。たった1人で対応しなくてはなりません。
北村医師
「隣の海士町(中ノ島)から入院依頼なので救急車で」
およそ1時間後、患者を乗せた船が到着。高齢の女性は心不全を起こしているといいます。事態は一刻を争います。
北村医師
「横になると苦しいですね。このままで行きましょう」
エコーを使い、心臓や肺のあたりを診ると…。
北村医師
「肺に水がたまっている」
元々、腎臓が悪く体内に水分がたまりやすい女性が心不全を起こしたことで、肺にまで水がたまっているといいます。一刻も早く水を抜く処置を行わなくてはなりません。
北村医師
「入れます。よし、治療効果がありそうです」
およそ20分、処置をしたことで…。
北村医師
「ちょっとずつ血圧が落ち着いてきました。いい兆候ですね」
ほっと一息つく北村医師。女性は一命を取りとめました。
北村医師
「治療が遅れたり、一気に悪化すると命に関わる。遅れると重篤になり得る」
島育ちの加藤医師と、都会育ちの北村医師。若き2人のドクターは、きょうも離島で島民たちの命を守り続けています。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
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