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「100年後の子どもたちへ」消えゆくふるさとを記録に 浪江町の男性
東日本大震災からまもなく11年。JNNは今年も被災地の今を見つめる「つなぐ、つながる」プロジェクトを展開します。福島県内には、いまだに住民の立ち入りが厳しく制限されている「帰還困難区域」が残ります。消えゆくふるさとの姿を記録誌に残す男性の思いを聞きました。
浪江町の帰還困難区域、赤宇木地区。戦後は満州からの引揚者も多く入植し、千年以上の歴史があると言われています。震災前はおよそ230人が住んでいました。原発事故ですべての住民が避難し、いまも帰還の見通しは立っていません。
浪江町 赤宇木地区 今野義人区長
「近所の人がいないと思うと、さびしさは感じますね」
赤宇木の区長・今野義人さん。自宅に戻るのは、およそ1年ぶりです。
動物に荒らされた室内。先祖代々大切にしていた仏壇や地域のボーリング大会でもらったトロフィーなど、ありとあらゆるものが散乱し、今野さんの記憶にある「自宅」からはかけ離れていました。
長い時間が過ぎ、区長の今野さんは、地区の人たちの気持ちが少しずつ変化してきているのを感じると話します。
浪江町 赤宇木地区 今野義人区長
「生涯住みたいという気持ちはあると思うが、生活拠点が向こうになっちゃったから、ここに来ても年をとって車の運転ができない。買い物もできない。そんな時どうするのかという不安があると思う」
赤宇木地区を含む浪江町の旧津島村は、1.5平方キロメートルが特定復興再生拠点に指定され、帰還に向けて除染などが進んでいますが、これは全体のわずか1.6%に過ぎず、残る98%は手付かずの状態が続いています。
住民は地区全体を除染するよう求め続けていますが、いまもその見通しは立っていません。
失われつつある故郷の姿を残すため、今野さんは地域の記録誌を制作しました。タイトルは「百年後の子孫たちへ」。8年かけて聞き取りなどを進め、赤宇木のすべてを収録した700ページにわたる大著です。帰還の見通しが立たない中、せめて記録誌を通じて地域の歴史と人々の思いをつなぎたいと考えています。
浪江町 赤宇木地区 今野義人区長
「100年後の子どもたちに何らかの形で残しておきたいなと思って思いついたのが、この地区の歴史をまとめて、現在いる人たちのいまの思いを記録誌に載せた方がいいのかなと始めた。この本を作ってよかったと思う」
震災から11年。復興が進む地域がある一方で、残した活字に未来を託さざるを得ない地域がいまも残り続けています。
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(06日11:54)
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