「ほかに受け入れ施設ない」障害者支援施設の職員も被災“災害弱者”サポートの現場【報道ステーション】(2024年1月8日)

「ほかに受け入れ施設ない」障害者支援施設の職員も被災“災害弱者”サポートの現場【報道ステーション】(2024年1月8日)

「ほかに受け入れ施設ない」障害者支援施設の職員も被災“災害弱者”サポートの現場【報道ステーション】(2024年1月8日)

地震発生から1週間がたち、被災地では、高齢者や障害者など“災害弱者”とされる人々を、どのようにサポートしていくかという課題も生まれています。

穴水町にある障害者の入所施設『石川県精育園』。体育館では、知的障害者など111人が避難生活を送っていました。
障害者支援施設『石川県精育園』・田中こず恵さん:「(Q.職員は常時、どなたかが配置されてないといけない)6~7名ですね。(Q.その方々も被災されている方が多い)ほとんど方が被災して、家が住めなくなった方もいますし、ここに寝泊りしながら、お仕事に入っている方もいます」

何が起きているのかを理解できてない人も少なくありません。
障害者支援施設『石川県精育園』・田中こず恵さん:「(Q.それぞれの特性の方に職員ができるだけ手厚く向き合ってあげたいところだが、それが全くここじゃできない)いま、ご飯を食べていただいて、手洗いをお手伝いして、水分補給をしてっていう必要最低限のことだけで、手を洗ったり、体をきれいに拭いて差し上げたりとか、そういうことが丁寧にできない状態」

施設の建物は、大きな被害を受けました。
障害者支援施設『石川県精育園』・田中こず恵さん:「空が見えてなかったんですけど、2日ほど前の余震で(天井が)パックリと」

施設の至るところに地震の爪痕が残されていました。
障害者支援施設『石川県精育園』・田中こず恵さん:「生活できないわけではないかなと思うんですけど、ただ、やっぱりこういう落ちるかもしれないとか。(利用者は)危険が認識できないので、避けて通るとか注意はできないので」

食料などの支援物資は届いていますが、断水は続いています。衛生環境の悪化も懸念されています。施設内で、新型コロナの感染も確認されました。
それでも、この施設にとどまらざるを得ない理由がありました。
障害者支援施設『石川県精育園』・田中こず恵さん:「ほかで受けてくれる施設や受け皿があればいいが、県内で120名を受け入れていただける施設があるかというと、それだけの施設はない。専門的に受け入れてくれる施設は、県内では空きもない状態」

また、一般の避難所での生活も難しいといいます。障害の特性によっては、環境や支援する人が変わることでパニックに陥ったり、症状が悪化してしまうからです。こうした災害弱者のため、国は市町村に対して、障害者などのための“福祉避難所”を指定するよう求めていて、穴水町では2カ所を開設しています。ただ、社会福祉協議会によりますと、停電や断水が続いていて、受け入れを断らざるを得ない状況だといいます。

石川県は対応を急いでいます。8日、新たに一時避難所を開設。災害弱者を優先して受け入れます。さらには、被害が少なかった地域の旅館やホテルなどを活用し、2次避難所を設置する準備を進めています。

それでも、できるだけ今の施設で支援を続けていきたいといいます。
障害者支援施設『石川県精育園』・田中こず恵さん:「五十数年もずっとここという方もいますし、もうほかで受けてくれる施設がなかったので『精育園でお願いします』と言って入ってこられた方もいます。当たり前の暮らしに戻せるように、いま、大変な状況ですけれど、いつかは、そういった生活支援が提供できるように戻していきたい。頑張っていこうと思っています」

◆石川県七尾市にいる大越健介キャスターと中継を結びます。

Q.障害のある人たちは、災害弱者ともいわれますが、今回の災害でも、さまざまな課題が浮かび上がっているようですね。

大越キャスター:被災者たちを取り巻く困難は、いろいろなケースがありますが、今回、取材した障害者支援施設は、そのなかでも最も困難なケースの一つだと言っていいと思います。この施設に入所している人の平均年齢は55歳と、高齢化が進んでいます。ここで終生を過ごしてほしいと、家族にも頼りにされているケースが少なくありません。その家族とも離れ、ようやくこの施設になじみ、毎日を暮らしてきた人たちにとって、ほかの場所で暮らすということは、実際には考えにくいのが現状です。一方で、施設は地震で大きく破壊され、これまで通りに復旧するのは難しいのもまた現実です。献身的なスタッフが、いまの危機的状況を支えていますが、県や国が一日も早く、具体的な支援や、今後の復旧スケジュールを組み立てていかないと、スタッフの使命感に頼るのも限界があるのではないかと思います。

Q.5日間にわたって被災地を取材して、どのようなことを感じましたか。

大越キャスター:取材した障害者支援施設の田中さんが「まさか、こんなことが本当にあるんだと痛感しました」と話していたのですが、それに尽きると思います。『想定外のことが自然災害では起きうる』これは2011年の東日本大震災のときもよく言われたことです。地震大国日本に住む私たちは、いま、能登で起きていることを決して他人事だと考えてはならないのだと思います。南海トラフ地震や、首都直下地震が、高い確率で起きるといわれているなか「どこまでの被害が想定されているのか」だけでなく、「想定外の被害が起きたときに、どう対応して、連携をとっていくか」ということも含めて、備えに当たることが重要だと感じました。

◆被災地では、まだ地震が続いています。地震発生から1週間を受け、気象庁は8日、会見を行いました。

地震が発生した1日午後4時以降から8日午後4時までの間に、震度1以上を観測した地震が1221回発生しています。今後も最大震度5強程度以上の地震が、1カ月に1回程度、発生する可能性があり、その確率は、平常時の100倍超としています。気象庁は、「今後の雨で地盤が緩む可能性がある。すでに倒壊している家屋が多く、弱い揺れでも危険」として、復旧作業などへの注意を呼び掛けています。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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