「安全性よりコスト重視する社風を変えないと」ダイハツ本社に立ち入り検査【報道ステーション】(2023年12月21日)
20日に明らかになったダイハツの大規模不正問題。国土交通省が21日、立ち入り検査を始めました。
ダイハツは、全車種の出荷を停止していて、その影響は、あらゆるところに及んでいます。
早速、対応に追われている全国の販売店。中には、まだダイハツ側からの説明が、一切、来ていないところが少なくありません。しびれを切らして、ダイハツに、直接、問い合わせても内容は乏しく。そのなかで、客からの電話が数十件に上り、その都度、説明を求められる。21日は、そんな一日だったといいます。
石田商会・石田圭佑代表:「いま、具体的に言えることはない。メーカー側から『これを言ってください』というのもないので、どこまでフォローしていいのか決められていない。(ダイハツに)『どうしたらいいですか』と質問もしたんですが、店に、一度、納めたものは(出荷前の)新車ではないので、『これを販売することは自由です』みたいな回答はもらったんですけど。『対応こんなふうにしてください』というのは、ほしいですよね」
大阪にあるダイハツのディーラーでは、早くもキャンセルの問い合わせが来ているといいます。
販売店店長:「『やっぱりこういうことがあったので、キャンセルしたい』という問い合わせも。この朝の時間でも入っている。(Q.報道まで販売店も知らなかった)はい、全く存じ上げておりません。こんなひどい状況だとは知らなかったので、ニュースで知って、びっくりしてるような状況」
今回、発覚した不正の影響が、どこまで広がるかは見通せませんが、1つの鍵となるのが、国交省による立ち入り検査です。データや書類などから、不正のあった車種が、国の基準に適合しているかが検証されます。国交省は、最悪の場合は、国から受けた認証がはく奪され、生産ができなくなる可能性もあるとしています。
こうしている間もダイハツ車を購入予定の人たちには動揺が広がっています。
今週末に納車予定の車。不正が行われたものとは異なる車種ですが、購入予定者は不安を口にします。
購入者予定者(埼玉県在住):「きのうの報道を受けて、かなり、家族もショックを受けていた。人の命を預かる車ですから、安全性が信頼できないと、不安のなか乗っていても、やはり楽しくないですしね。気分的には、キャンセルをする方向で考えたいんですけれども、ただ、本当に通勤で使っているので、また1からやり直しで、3カ月・4カ月、納車を待つと考えると、悩ましいところ」
難しい判断を迫られる現場もあります。
介護の現場などで使われる福祉車両専門の販売店。ダイハツの『タントスローパー』は、車内の広さと、スロープが緩やかさがウリで、販売数のかなりの割合を占めるほどです。今回、そのタントで不正が明らかになりました。悩みに悩んだ末、購入予定の客が希望するのであれば、販売することを決めたそうです。
福祉車両ヤマシタオート・山下佳敦社長:「お客さまも、この車がないと生活ができないという事情もある。お客さまに100%納得いただくのは、非常に難しいと思うが、いま、できる限りの情報を、できる限り正確にお伝えして、何かあったら連絡いただきたいとお伝えし、ご納車するかたち。お客さまが、どうしても必要だということで納めなければいけないこの現状は、やっぱり心苦しい。実際、販売して納車がまだのお客さまから『本当にダイハツの車、大丈夫なのか』という声はもらった。でも、本当に安全かどうかは、まだ発表がないと率直に伝えて、一応、納得してもらって『何かあったらすぐに連絡ください』と」
影響は、訪問診療の現場にも広がりました。
東京都内の家々を回る『ひなた在宅クリニック』。不正が明らかになったミニバン『ルーミー』の購入契約が済んでいます。ダイハツがトヨタに供給している車種の1つです。
ひなた在宅クリニック山王・田代和馬院長:「(Q.何台ほど納車予定だった)3台、納車を待っていました。私の方に連絡があったのは、きょうの正午ごろで、(販売店の)担当の営業の方から、ダイハツの不正問題、新車の供給ストップにルーミーも含まれているということで、いまの段階で白紙『納車予定が見えなくなっている』と。ルーミーって車はコンパクトで、都内の路地にも対応したサイズ感。後席の居住性が非常に高くて、後ろでカルテを書いたりとか、仕事もすごくしやすい。往診には非常に向いてる車ですし、荷室も広くて、さまざまな医療物品を積載できる。往診現場では、非常に頼りにされている車ですので、期待していただけに、戸惑いが大きいです」
ダイハツは、来週にも国内のすべての工場を停止することを決めました。ダイハツに部品などを供給する約420社に対しては、補償を検討しているといいます。
今回のダイハツによる不正は『型式指定』と呼ばれる国の認証を取得する際に行われていたものです。
型式指定とは、メーカーが国の保安基準を満たして、量産してよいという認証制度です。本来は、販売の際に1台ずつ安全基準などを満たしているか確認する必要がありますが、その代わりに、事前に提示した車と同じように作れば、そうした確認が不要になる制度です。しかし、ダイハツは、この試験の際に、偽のデータを使ったりするなどで、認証を得ていました。
ダイハツは、今年4月以降、見つかった不正行為があった車種を、自社で再試験を行い、法定基準を満たしていると確認。また、その検証のプロセスや結果の妥当性については“外部の認証機関”によるチェックを受けているとし、現在、市場に出回っている車については『大丈夫だ」といいます。ただ、その再試験の際に、2車種について、新たに基準に適合していない部分がある可能性が判明し、それらについては、原因究明と速やかな対応を実施するとしています。
自社で安全を確認したとはいえ、型式指定の検査で、そもそも不正があったわけで、認証が取り消される可能性はないのでしょうか。
自動車評論家の国沢光宏さんは「本来なら、取り消しにあたる事案だと思うが、ダイハツは下請けや関連企業も多いので、認証取り消しになれば、仕事が無くなる人が大量に出てきて経済への影響が大きい。外部の承認機関の認証を考慮して、国交省の調査の結果でも安全性に問題がないとなれば、取り消さない可能性もある」とみています。
国沢さんは、「ダイハツは、ほかのメーカーと違い、車の開発部門と認証部門が一緒だった。安全性よりコストを重視する社風そのものを変えていく必要がある」と話しています。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
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