【解説】正しい情報は?SNSを多用 ロシアとウクライナの“情報戦”

【解説】正しい情報は?SNSを多用 ロシアとウクライナの“情報戦”

【解説】正しい情報は?SNSを多用 ロシアとウクライナの“情報戦”

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻は、長期化の様相も見せ始めていますが、SNSを多用した市民らの情報発信が、今回の戦闘の1つの特徴となっています。一方、ロシア側からはこれを制限する動きも出ていて、SNSを舞台にした新たな戦争という一面もみえてきました。

■ウクライナ軍事侵攻…最新の状況

最新の戦闘状況です。ウクライナ第2の都市・ハリコフでは、街のいたるところで建物が破壊され、激しい砲撃が続いています。キエフ郊外では、変わり果てた町の中を歩く人々の姿がありました。民間の犠牲者も増え続け、ウクライナの非常事態庁は、民間人の死者が推計で2000人にのぼるとの見方を示しています(2日時点)。

攻撃を止めるための最大の焦点は、日本時間3日夜に行われる見通しの2回目の停戦に向けた協議です。ただ、お互いが求める条件をめぐって、溝はさらに深まっています。

ウクライナ側は「即時停戦」と「ウクライナ全土からのロシア軍の撤退」を求めています。ロシア側は「ウクライナの中立化と非武装化」を求めています。
これだけでも歩み寄りがかなり難しいとみられていましたが、ロシア側はさらに「クリミア半島でのロシアの主権を認める」ことも主張しています。ウクライナ南部のクリミア半島は、ロシアが2014年に併合し実効支配している場所で、主権を正式に認めるよう求めているということです。

停戦に向けた2回目の協議開催をめぐっても2日夜から情報が錯綜しました。ロシアメディアは、会談が開かれるかどうか逐一報じ続けました。

まず「ロシア代表団は本日の夜、交渉場所に向かい、ウクライナ側の交渉人を待つ」と発信。その後「ロシア代表団が会談場所へ出発した」と発信しました。さらにその後「ウクライナ代表団をあす待つ」と発信しました。会談が行われる場所で、ロシアの代表団が待っていたのに、ウクライナ側が来なかったと発信しています。

これについて軍事ジャーナリストの黒井文太郎さんは、ロシア側は「我々は交渉のテーブルについているのに、ウクライナ側が応じないから仕方なく侵攻せざるを得ない」とアピールすることで、攻撃の口実にしようとしている面があると分析しています。

■SNSなどを使った情報発信が多用

今回の戦闘の特徴の1つには、SNSなどを使った情報発信が多用されているという点が挙げられます。例えば、ウクライナのゼレンスキー大統領も自らのSNSに声明の動画を何度もアップして、国民への団結や国際社会への支援を呼びかけています。

ウクライナ・ゼレンスキー大統領(フェイスブックより ※3日公開)
「長年にわたって計画されていたロシアによる卑劣な侵略計画は、失敗に追い込まれている。ウクライナ軍は力を尽くしていて、1週間で戦死したロシア兵はほぼ9000人。ウクライナはロシア兵の死体で覆われてほしくない。ロシア兵よ、帰れ!」

ゼレンスキー大統領は、ロシア軍が士気を喪失していて、食料や安心感も得られていないと主張しています。1週間で約9000人のロシア兵が亡くなったことを動画で明かしました。一方で、ロシア国防省が発表しているこれまでのロシア軍の死者は498人です。双方の出している数字が全く食い違っていて、これも情報戦の1つとみられています。
特にウクライナ側にとって、こうしたSNSの発信は、1つの武器となっているとみられています。実際、軍事侵攻の直後にロシア側が「ゼレンスキー大統領は、すでに首都・キエフから逃げて別の場所にいる」などの情報を流すと、すかさずゼレンスキー大統領は、自らがキエフにいることを示す動画を掲載し、ロシア側の言い分をきっぱりと否定しました。SNSを有効に活用することで、国民の信頼を維持し、団結力を高めることにつながっています。
また、一般のウクライナ市民もSNSで次々と動画や情報を世界に向けて発信しています。

ウクライナの市民らがロシア軍の車列に対し、「ロシアに帰れ!」などと叫びながら、身を挺して押し戻そうしている動画や、大勢の市民が高速道路を埋め尽くし、ロシア軍の行く手を阻もうとしている動画も掲載されています。

こうした動画が発信されることで、欧米メディアだけでは伝えきれない現地の様子を知る手がかりにはなっています。

■自国に有利な情報だけが、一方的に流される恐れも

一方で、黒井さんによると、ウクライナ軍側は自分たちの軍に被害が出ている映像は、兵士や市民の士気に関わるので、情報統制して出さないようにしているということです。

ロシア側にとっては、このような動画は好ましくないので、サイバー攻撃や通信を遮断するのではないかと思われていましたが、これまでのところ、そのようなことは行っていないということです。SNSを一部制限するくらいにとどめています。

これについて黒井さんによると「ロシア側は短期決戦でウクライナを制圧できるとタカを括っていたので、準備していなかったのではないか」ということです。それだけウクライナを甘くみていた可能性があると話しています。
ただ、ロイター通信によりますと「ロシアが独立系報道機関を遮断し、ロシア人がウクライナ侵攻のニュースを知ることができないようにした」ということです。

そして、ロシアが「言論の自由と真実に対する全面戦争」を開始したとアメリカが非難したとしています。さらにロシア政府は、ツイッター、フェイスブックなどのSNSも遮断したとアメリカ国務省が発表したことも明かしました。ウクライナの状況は、ロシア国民にますます伝わりにくくなっているようです。

SNSを通じた様々な発信は、メディアが伝えきれない現地の実情を知ることができるという意味では、有用な面もありますが、一方で、政府や軍が情報を統制している場合も多く、自国に有利な情報だけが、一方的に流される恐れもあります。情報を受け取る側は、そうしたことも十分に理解した上で、情報と向き合うことが重要です。
(2022年3月3日放送「news every.」より)

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