「まずは侵攻前まで戻ろう」停戦協議の行方は・・・戦火続くウクライナ 孤立深めるロシア(2022年3月2日)
停戦協議を継続することで合意しているにもかかわらず、ロシア軍はウクライナに攻撃を続けています。
ウクライナ第2の都市ハリコフでは、大学や警察庁舎などが砲撃を受け、4人が死亡しました。
激しい爆撃を受けていた南部ヘルソンについて、ロシア国防相報道官は「完全に支配下に置いた」と発言。ウクライナ国防省は否定していますが、ヘルソンの当局者は「街はロシア軍に完全に包囲されている」としています。
首都キエフの西140キロに位置するジトーミルでは、住宅10棟などが破壊され、子どもを含む4人が犠牲になりました。
キエフ中心部にあるテレビ塔には、2発のミサイルが直撃。近くを歩いていた5人が犠牲になりました。テレビ塔の近くにあった、ナチスドイツのホロコーストの慰霊碑にも被害は及んだといいます。
ウクライナ、ゼレンスキー大統領:「歴史を知っているならば、慰霊碑がキエフとヨーロッパにとって特別な場所だと知っているはずだ。そこにミサイルを落とすなんて、人間性を疑う。私たちの歴史や国を抹消し、すべての国民を抹消しようとしている」
この攻撃の数時間前、ロシア国防省はキエフの治安当局関連施設を攻撃すると警告し、周辺住民に避難を呼び掛けていました。
いつ攻撃はやむのか。焦点となっている停戦協議について、ロシアのタス通信は、ウクライナ大統領府側近から聞いた話として「2日遅くに行われる予定だ」と報じました。
ウクライナ、ゼレンスキー大統領:「交渉開始を決めたのはロシアだ。私もそれを望んでいて、まずは話すことが大事なのでこう伝えた。『まずは戦うのを止めて、侵攻が始まる前まで戻ろうじゃないか』」
国境近くの街では今も、多連装ロケット砲を積んだ車両など、多くのロシア軍車両がウクライナ側に向かっていて、まだ臨戦態勢のようです。
ロシア、ショイグ国防相:「ロシア軍はウクライナを占領していない。民間人の生命と安全を守るために最善を尽くしている。攻撃しているのは、軍事施設のみであると協調したい。目的達成まで軍事作戦を続ける」
ただ、キエフ侵攻へ向けて進んでいた軍は最近、その歩みが鈍くなっています。作戦の見直しなどのために一時的に動きを止めている可能性も指摘されていますが、アメリカ国防総省の高官は「ウクライナ軍の抵抗や燃料不足に加え、食料不足も重なり、停滞が続いている」と指摘。さらに、ロシア兵について「戦闘に参加したことがないばかりか、戦闘に加わると知らされていない兵士もいるようだ」と述べました。
ロシアの孤立は深まるばかりです。冒頭、犠牲者に黙とうがささげられた、スイスでの軍縮会議。ロシアのラブロフ外相も、出席する予定でしたが、西側に渡航を禁じられ、ビデオメッセージを寄せていました。しかし、ビデオが流れる直前、アメリカやイギリス、日本など各国大使が次々に退席。発言を聞く大使はほぼいませんでした。
ロシア、ラブロフ外相:「ロシアは国際社会の責任ある一員として、核兵器の不拡散義務を果たしている。ウクライナが核兵器および関連技術を持つことを防ぐため、必要なあらゆる対策を講じる」
外では、ウクライナ国旗が掲げられていました。
ウクライナ、フィリペンコ、ジュネーブ国連大使:「ロシアを除く192の国連加盟国に対する攻撃だ。我々はジュネーブやニューヨーク、そして世界各地で団結し、世界もウクライナ国民を後押ししている。ウクライナ国民は抵抗を続け、勝利を収めるだろう」
市民生活に直結する部分で、制裁もさらに拡大しています。EU(ヨーロッパ連合)は、最大手は含まないものの、ロシアの7つの銀行を国際決済ネットワーク『SWIFT』から排除することで合意しました。
ディズニーは映画の公開を中止し、アップルも製品の販売中止を決めました。アップルペイのサービスも制限されています。
モスクワ市民:「戦争終結に向けて、皆が満足できる結論を模索すべきだ。関係諸国が熟慮すべき。もうすぐ終わることを期待する」
◆モスクワ支局の長谷川由宇前支局長に聞きます。
(Q.停戦交渉の最新情報を教えてください)
ロシア側もウクライナ側も、日本時間の3日未明に停戦協議が行われると発表していて、停戦協議が行われると考えています。ただ、両国の代表団の構成は前回の協議から変わっていません。今回の交渉でも大幅な進展は望めないのではないかという見方もあります。
プーチン大統領はロシアと軍事同盟を組むカザフスタンの大統領と電話で会談しました。この会談のなかで、カザフスタン側から「ウクライナとの協議では妥協点を見出すことも大事ですよ」という指摘を受けたということです。プーチン大統領がこの指摘に対してどのように答えたかは明らかにされていません。
(Q.モスクワを取材してみてどうですか)
モスクワでは日本時間の午後6時ごろから通信障害が発生しています。ロシアのサイトは問題なくみられるのですが、日本のサイトや、日本で使っていたアプリが作動しない状況が断続的に続いています。この障害について、携帯電話会社に確認をしたところ「こちらでは一切、通信に制限をかけていません」という少し不気味な回答でした。
国際ブランドのクレジットカードや電子決済については、ロシア国内では利用ができなくなるという発表がされていますが、少なくともモスクワ市内では、まだ使える店舗が多くあります。こうした状況について、あるモスクワ市民は「これこそが欧米の制裁がフェイクニュースだという証拠だ。最後までプーチン大統領についていきたい」と話していました。
プーチン大統領は欧米からの制裁に徹底的に抗戦する構えです。制裁によってダメージを受けるIT企業などを支援する大統領令に署名しました。これによって、ロシアのIT企業は3年間、法人税が免除されるといった優遇を受けられます。
市民から反戦の声も上がっていますが、ロシア側の態度が柔らかくなる兆しは現時点では全く見えていない状況です。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
コメントを書く